空虚な心象についての証言者Yの証言
おい、あんた、聞いてくれぇ・・・はぁ。疲れた。やっぱぁぁ・・・。はぁ。いやぁ、(この後3分ほどしゃべらなかった)あぁ、すまん、あぁ、聞いてくれるのかい?いやぁ、しゃべるのすらぁ、はぁ、だるい。あぁ、俺がこんなになった理由を聞かせてあげよう?きいてくれるかあいいいぃぃ・・・。
あれは、そうだな、あの時俺は村に好きな人がいてな。俺ぁ冒険者で金がなかったけど、結婚のために村に帰るのを辞めて、好きな人に「理由は話さないけど三年間、絶対に一人で待っていてくれ」っていって、そいつが少し赤くなるのを見つつ、金稼ぎに三年間依頼を受けまくって節約して金を貯めてたんだ。それでどうにか、式の費用と持参金ぐらいの金は集まって、村に帰ったんだよ。久々に家、っても、安く借りた倉庫なんだが、そこから出るときに幼馴染みにあってな、そこで幼馴染み、男なんだが、言うわけよ。「もし、俺が本気に恋をしていたら、ありとあらゆる手を使ってでも、相手を落としても良いと思うか?」ってな。俺は、犯罪とかに触れなきゃ良いんじゃねえの、って言ったんだ。んで倉庫から出たら、あいつが、紹介したい人がいるとかいいだしやがって、「恋人のM」だとかいいやがった。俺ぁ心臓止まったね。また動いたけど。そうさ、そこに俺の好きな人が、赤い顔でいたんだ。俺はびっくりして、幼馴染みに問い詰めたら、もしかしたら俺が死んでるかもしれないっていって、言い寄って、最後は強引にやって、そこからは口八丁で手ごめにしたとかいいやがった。俺はぶちぎれて、そんなの強姦じゃねえか、っていったら、確かに最初は彼女も抵抗したが、最終的にこうなってくれたよ、っていいやがった!既成事実があるからなんもいえねぇ、飴と鞭使い分けて奪いやがったんだ!現にあいつは、赤い顔でまるで性格が変わっちまってる。恐らく、貞操で脅し、慰めつつ、脅しを繰り返して、「そういう状況から救った人間」という逃げ道を女に用意したんだ。もし彼女が悩んでる時に帰ってこれたら、洗脳される前になんとかできたのに!畜生!もう既成事実ができてる以上、どうしようもねぇ。俺ぁ三年間鍛えた槍でぶち殺してやろうと思ったが、あいつめ、べらべらとよく回る口で、綺麗事ばかりいいやがって、彼女も強引にあいつに合意を迫られて、やっぱり洗脳してやがった、あいつをかばったから、俺は畜生と叫びながら、また村をでたんだ。それからは稼いでた町にもどって、金を引き出して装備を整えて、怒りに燃えてやっぱりあいつだけでも殺してやると思って村に戻ったら、あいつ、逃げてやがった。むしゃくしゃして、槍をなげようかとおもったが、人に当たったら不味いからわざわざ確認してから投げたよ。でも、次第に怒りも冷めたら今度はどうしようもない空虚に気づいた。空虚。「から」に「うつろ」と書いて、空虚だ。何をやっても満ちねえ。空いた穴、いや、穴すらないそこに、何かが抜けていくんだ。涙すらでない。なにもでない。空虚。ただ空虚だ。この空虚を埋めようとして、パーティーのやつにふらふらっと抱きついたらぶん殴られた。でも抱きついても空虚がうまらねぇ。罵詈雑言を喰らってもなんも思わねえ。一日一日がなげぇ。あの日から、もう、一週間かとおもったら、三日だった。埋まらねえ。埋まらねえんだ。ないんだよ。穴があれば入れることができるが、穴すらねぇおれの心は、満ちねぇ。もうなんか色々とだるい。それでも未だ空虚だ。埋まらない。埋まらない。あぁ、そういや、こんなに話したのも久しぶりだったな。三十分くらい話したか?え?五分?はぁ。なげぇなぁ。