姫と騎士
昔昔、小さな王国があった。その王国は、平和であった。
王族には、王が一人、妃が一人、息子娘の王子姫が一人ずついた。そう巷ではいわれていた。
しかし、あと二人ほど、その血族がいた。妾とその娘である。彼女等のことは隠された。
妾の娘の姫は、肩身が狭かった。王城では敵視され、危険もあった。姫はよく外の花畑で遊んだ。しかし姫は一人ではなかった。その騎士がいた。青年である。姫が小さい頃から、騎士は姫を守ってくれた。騎士は「姫様はとても可憐な子です。姫様に罪はありません。私が姫様を御守りしましょう。」といい、姫は「ええ、あなたが私を守ってくれる。だってあなたは私の騎士だもの。」といった。騎士は、「ええ、ずっと御側で御守りします。」といい、姫は「約束よ。」といった。
姫は騎士とよく遊んだ。花畑を一緒に走り回り、怪我をしても騎士が手当てをしてくれた。姫が騎士におんぶをせがり、騎士がおぶり散歩したこともあった。なにかあれば騎士が姫を守った。姫は「だってあなたは、私の騎士だもの。ずっと一緒にいてね。」といい、騎士は「ええ、ずっと姫様を御守りしましょう。」といった。
そんな日々が続いた。
あるとき、大国が海を渡り王国を侵略してきた。既に王城は堕ち、火の手が上がっている。花畑は、燃え盛っていた。その中を、姫と騎士が逃げていた。彼等は、追われていた。十数名だ。逃げるしかなかった。花畑だった中を、逃げる。しかし、姫様はまだ十と少しであり、追い付かれそうであった。騎士は「姫様、御先にお逃げ下さい。私が足止めをします。」といい、姫は「いや。」といった。騎士は「必ず後でお会いします。私は騎士ですから。」といい、姫は、「そうね、あなたはずっと私を守ってくれるもの。」そういい、駆け出した。騎士は、剣を抜き、構えた。
姫は逃げた。しかし、少しいくと追ってが回りこんでいた。慌てて騎士の方に振り返ると、騎士は劣勢であった。近くに駆けたとき、騎士は一本の槍に貫かれ、続いて幾つもの槍が突き刺さった。姫は「嘘・・・・。死なないで。あなたは私をずっと守ってくれるって、いったじゃない。あなたは私の騎士なんでしょう。待って、独りに、しないで、私を守って、一緒にいて」といい、騎士は、「申し訳ありません、姫様。どうか、姫様だけでもお逃げ下さい。」とどうにかいった。姫は「待って、独りにしないで。あなたは、あなただけは、私をずっと守ってくれるのでしょう。ねえ?」
騎士は、もう何もいわなかった。
姫は、独り泣き叫び、その身体を槍が貫いた。




