6 プレゼント選び、いかがですか?
「男の人って、何をプレゼントしたら喜ぶのかな?」
「え? それって、彼氏にクリスマスプレゼントってこと?」
「うん」
「あんたねえ…。
なんで今頃そんなことを…この前、服買いに行った時、一緒に見繕えばよかったでしょうが」
「あ、そっか。
ごめん、あの時は、何着ていこうかしか考えられなかったんだ」
「ホントに普段が嘘みたいなポンコツぶりね。
あのね明星、あたしはあんたの彼氏なんて、この前初めて存在を知ったのよ?
何をプレゼントすればいいかなんて、想像できるわけないでしょう」
「あー、うん、そうだね。
えっと、写真とか持ってないんだよね。
うちの工学部の3年でね、身長は175くらいで、割と細め」
「スペック聞いたってわかんないわよ。
どんなのが好きかとか、何に興味があるかとか、そういうの、話してないの?」
「えっと…、あれ? そういえば、趣味の話とかしたことないなあ」
「普段、どんなデートしてんの?」
「1回目はドライブ、2回目は映画、3回目は、時間取れなかったからご飯食べただけ」
「映画って、あんたのことだからアクション系?」
「うん」
「向こうも楽しんでたの?」
「感想語り合えたくらいだから、そこそこには」
「ふう。付き合いだして1か月だっけ?」
「うん。
なんかね、不思議なんだけど、惹かれるんだ。
手を繋いだだけで、すごいドキドキした」
「まさか、あんたから惚気られる日が来るとは思わなかったわ。
どうでもいいけど、舞い上がりすぎて安売りすんじゃないわよ」
「安売り? って、あの、まだ手を繋いだだけだよ?」
「最近のあんた見てると、少し心配になるのよ。
大体、工学部の人とどうやって知り合ったの? あんた合コンとか行ってないわよね」
「オルマで」
「工学部の3年が、よくコンビニでバイトする時間、取れたわね」
「バイトじゃなくて客」
「バイト先で客に口説かれたの!?」
「兄貴の友達でね、似てるからって声を掛けられたのが最初。
兄貴には弟って紹介されたんだけどね、寿也さん、僕が女の子だって見抜いたんだ」
「お兄さん絡みかあ…。
お兄さんから、アイツには気をつけろとか、近くに行くなとかは言われてないのね? じゃあ、ちゃんとした人だわね」
「兄貴が僕に注意しろとか言うわけないじゃん」
「ホントにこじれてるわよね、あんた達。
まあいいわ、そういう人なら、初心なあんたを弄んでるってセンはないでしょ。
どっちにしても、プレゼントに関しては助けてあげられないわよ。
いっそのこと、デートの途中で一緒に選んでみたら?
服とか小物とか、そういうのを一緒に買うのもいいわよ。
サプライズの楽しみはないけど、ハズレの心配もないし」
「そっか、そういう手もあるね。
服とかの好み知らないから、一緒に見てみるのもいいかも。
ありがと、灯里。
お礼に、ここは僕が持つね」
「あ~、あんた、そういうの、彼氏相手の時は気をつけなさいよ」
「そういうのって?」
「ワリカンに拘ったり、貸し借りにシビアなとこよ。
男には、面子とか色々あるんだから、ちゃんとご馳走してもらったりとか、相手を立てることも大事だからね」
「え…奢ってもらわなきゃダメなの?」
「やっぱり。
いつもとは言わないけど、相手が奢るって言った時は、素直に厚意を受けることも必要よ」
「そう、なんだ。
あ、この前、イブのディナーくらいは奢らせろって言ってたの、そういう系?」
「そんなこと言われたわけ?」
「うん。
わかったって答えておいたけど」
「まあ、上出来ね。
いつもいつも奢らせる金の掛かる女ってのも困るけど、かたくなに奢らせない女も可愛くないわよ。
ちゃんとその時々の空気を読んで、上手くやんなさい」
「可愛くない、か」
「ちょっと、そこだけ切り取らないでよ。
ホントにあんたって恋愛下手よね。
その辺は、結構、女の本能みたいなとこあるのに。
あ、言っとくけど、媚びる必要はないからね。
と言うより、あんたは媚びようとか思っちゃダメよ。
ちゃんとあんたの本質を好きになった人なら、素のままのあんたを見せた方がいいから。
大体、あんたとお兄さん両方を知ってて、それでもあんたを口説いたってんなら、あんたのガサツなとこなんか織り込み済みのはずなんだから」
「僕はいつものままでいいってこと?」
「無理に女っぽく振る舞う必要はないってことよ。
さすがに、服にはもう少し気を遣った方がいいとは思うけど。
まあ、普段のあんたを知ってるあたしとしては、そんな初心全開のあんたを見たら、ギャップ萌えしちゃいそうだけど」
「ギャップ萌え? ってなに?」
「いいのよ、知らなくて。
ま、プレゼント探し、楽しんでらっしゃい」
「うん、ありがとう灯里」
そっか。
一緒に品物選んでプレゼントすればいいんだね。
僕のセンスで選ぶよりも、一緒に選んでもらった方が確実だ。
さすが灯里、頼りになる。
それじゃあ、クリスマスを休むために、バイト頑張ろう!