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31 問題児矯正計画、いかがですか?

 「じゃあ、表のゴミ箱の袋、入れ替えてくれる?」


 「はい」


 寿也さんのアレで元気が出たから、水谷君相手にも頑張れる。


 とりあえずは様子見で、普通に頼んでみた。

 もちろん、どう動くか注視するわけだけど。

 見ていると、やはりというか、全くやる気配がない。

 といって、レジの仕事はきちんとこなしてるみたい。

 レジは今、2面で動いてるわけだから、外してもらって全然構わないんだけど、レジの方を優先にしてるって感じだろうか。

 お客さんの方は、ちらほらってとこだから、ゴミ袋の方を優先してほしいとこなんだけどなあ。

 …さて、15分経ったな。


 「水谷君、ちょっと」


 僕は、バックヤードに水谷君を呼び出した。


 「さっき、外のゴミ箱の袋入れ替えてって頼んだよね」


 「いえ、頼まれてませんけど」


 「覚えてないの?」


 「覚えてないんじゃなくて、頼まれてません」


 なんか、憮然としてる。

 なるほど、これが「言われたことを忘れる」なわけね。


 「言った言わないの話になると不毛だから、じゃあ、これから外のゴミ箱の袋、入れ替えてください」


 「…わかりました」


 さすがに、今度はちゃんと動くんだろうなあ。

 防犯カメラで確認することにしよう。

 …って、あれ? レジに入っちゃったぞ!?

 確かにお客はいるけど、ヘルプが必要なほどじゃないよね? なんでレジに入るかな?


 しばらく見ていてもレジを離れる素振りがなかったので、もう一度水谷君をバックヤードに呼び出した。


 「ついさっき、ここでゴミ袋を替えるよう頼んだはずなんだけど、替えてくれたかな?」


 「いえ」


 「頼まれたのは、覚えてるよね?」


 「はい、それは」


 「じゃあ、なんで替えてないのかな」


 「あの、レジ待ちのお客さんがいたので、レジに入った方がいいかと思いまして」


 なるほど。

 一応、自分なりの判断でよかれと思ったってことかな。

 なら、頭ごなしに責めるのはよくないね。


 「OK、わかった。

  まあ、あのくらいの人数なら、ヘルプに入る必要はさほどないから、今後はああいう場合、ゴミ袋の方を優先してくれると助かる。

  じゃあ、今度はゴミ袋をよろしくね」


 「わかりました」


 防犯カメラで見ていると、今度こそゴミ袋を替えてくれた。

 今のパターンなら、問題児じゃなくて、単なる新人っていうレベルだよね。

 このレベルなら、慣れてくれたら使い物になりそうな感じなんだけどなあ。




 翌日。


 「水谷君、今のうちに床清掃よろしく」


 「はい」


 今日は、僕はレジに立って、水谷君の様子を窺っている。

 ちゃんとポリッシャーを取りに行ったみたいだな。

 …って、あれ? なんでバックヤードに行ったんだろ?

 あれ? 焼き菓子持って帰ってきたぞ。

 なんで、商品陳列してるんだろう。

 あ、戻ってきた。


 「黒沢さん、焼き菓子減ってたんで、並べときました。

  レジ代わります」


 「水谷君、掃除は?」


 「え?」


 「え、じゃないって。

  さっき、私は、君に掃除してって頼んだでしょ。

  なんで突然、お菓子並べてるの?

  そりゃ、減ってたのはわかるけどさ、他の用事キャンセルして陳列しなきゃならないほど減ってはいなかったはずだよ。

  何個足した?」


 「3個です」


 「3個くらいの隙間なら、足すのは後でもいいから、混んでくる前に掃除お願いね。

  それとも、掃除頼んだの、覚えてないかな」


 「え? え? あの、いえ、忘れてました」


 「なんで忘れちゃったかな?」


 「通りがけに見たら、棚の焼き菓子が減っていたので、足さなきゃ、と思いまして。

  それで、掃除は後でいいかと」


 「なんで、掃除の方を忘れるかなあ」


 「すみません」


 「とりあえずさ、指示されて動いてる時は、他のことしないようにしてみようか。

  まず、掃除しちゃって」


 「はい」


 「今度は、道草なしで頼むよ」


 「はい」


 さすがに、今回は大丈夫だったか。




 さらに翌日。


 「じゃあ、水谷君、もうすぐ昼だし、弁当の棚に品出しして。

  他のことしちゃだめだよ」


 「はい」


 お~、ちゃんとできるじゃない。


 「OK、OK、今後もその調子で頼むよ」




 「てな感じでね、意外と簡単に改善の兆しが見えたんだよ。

  まあ、すぐに安心するわけにはいかないんだけどさ」


 僕が寿也さんの流れを報告してたら、寿也さんは


 「そんなにあっさり改善したの? すごいじゃないか」


 「う~ん。確かにこれで解決なら、すごいんだけどさ。

  そんなにすんなりいくんなら、最初から問題児扱いされないと思うんだよね。

  仕事の優先順わからないくらい、新人なら当たり前だし。

  問題児扱いされた理由が何かあるはずなんだけどなあ」


 「明星、それ、フラグ立ててない?」


 フラグだったかどうかはともかく、水谷君の件は、やぱり解決なんかしていなかった。

 それを知って僕が愕然としたのは、バイトの休み明けのことだった。

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