26 ピロートーク、いかがですか?
すみません、今回短いです。
「今でも電波って飛んで来るのかな?」
ことが終わって布団の中で2人でまったりしている時、ふと聞いてみた。
なんていうか、寿也さんと裸でくっついていると落ち着くなんて、半年前なら絶対信じなかったと思う。
胸は一向に大きくなる気配がないけど、それも今では全然気にならない。
寿也さんに対する信頼というか、この人ならありのままの僕を受け入れてくれるって安心感がある。
少し前までは、僕が男の人に抱かれる日が来るなんて、思ってもみなかった。
それもこれも、寿也さんが僕に興味を持って口説いてくれたから。
そんなことを思ったら、つい口を突いて出た言葉だった。
答えを期待してのものじゃなく、ただなんとなく聞いただけ。
でも、答えは返ってきた。
「電波は来ないかな。
今はね、心の底から明星が愛おしいと思ってるよ。
電波はさ、言ってしまえば、俺の勘なわけだよね。
最初から惹かれてたのを、そういう言い方してたわけでさ。
今はもう、明星にぞっこんなわけ。
ずっと一緒にいたいって思ってる。
勘じゃなくてね。
明星がさ、俺とのことと実家継ぐことで悩んでるのは知ってるよ。
あらかじめ言っておくけど、俺は明星と別れるなんて、これっぽっちも考えてないから。
どんな形にせよ、明星と結婚したいと思ってる」
「寿也さん…僕も、寿也さんと結婚したい」
僕は、寿也さんに抱きついた。
この嬉しさを体で表したかったんだ。
「すっごく嬉しい。
でも、もし僕が実家を継いだら、寿也さんはどうするの?
一緒に来てくれる?」
答えを聞くのが怖い問い掛け。
でも、避けては通れない問題でもある。
「そうだね。
今すぐには、何とも言えないんだ、悪いけど。
どうするのが2人にとって一番いいのか、じっくり考えよう。
少なくとも、俺は明星を手放す気はないから」
寿也さん、正直だね。
こんな時でも誤魔化さないで、真摯に答えてくれるんだ。
「うん、一緒に考えよう。
2人で幸せになれるように。
寿也さん、大好き」
寿也さんに会えて良かったよ。
答えを聞くのが怖かったこと、プロポーズめいたことを僕から言いたくなかったこと、全部含めて寿也さんが口火を切ってくれた。
これからは、2人で話し合っていける。
「結婚を前提にお付き合い」なんて、よく聞くセリフだけど、今まさに、僕達は結婚を前提に付き合ってる。
嫁に行くのか、婿を取るのか、まだわからないけど、結婚するのは決定事項だ。
「寿也さん、放してあげないからね」
「それ、どっちかってーと俺のセリフだからね?
前に星也に言ったろ? 『返せって言われても返さない』って」
「そうだね、返品不可だったね」
そういえば、付き合う前、クーリングオフ期間とか言ってたんだだよね。
僕達は、2人してクスクス笑いながら、頬ずりしてじゃれた。
キューピッドの矢とかいうものがあるのなら、寿也さんに飛んできた「その娘に全力で関われ」っていう電波がそうだったんだろう、なんて、柄にもなく乙女チックなことを考えながら、僕は寿也さんの胸に頬をうずめた。
2人にとって、結婚したいという意思表示は寿也から、という部分は譲れなかったので、こうなりました。
これが、一応のプロポーズです。
実際に結婚する際には、改めて何か言うんでしょうけど、この瞬間から、2人はどういう形で結婚するかを考えつつ交際していきます。
普通、そういうのを前提に動くのは、もう少し年齢的に追い詰められてからかなと思いますが、若い分、逆に真面目だったりします。
寿也は、別に明星が初めてだった訳じゃありませんが、相当入れ込んでいます。
なお、次回は、ここから数日経った後の話になりますので、この会話自体は、これで終わりです。




