25 GWの予定、いかがですか?
「ゴールデンウイークは、バイト三昧の予定だよ」
4月も半ば過ぎ頃、寿也さんにゴールデンウイークの予定を聞かれた。
まあ、クリスマスで連休取ったし、3月末にも丸二日休み入れたしで、ゴールデンはちょっと休みにくいんだよなあ。
そんなことを寿也さんに言ってみたけど、さほど落ち込まなかったみたいだ。
多分、どこかに遊びに行こうとか考えて予定を確認してきたんだと思うけど、あまり残念そうでもないのは不思議だ。
最初から期待してなかったってとこかな?
「いやね、休みが取れるようなら、どこかに遊びに行こうかと思ったんだけどね、明星のことだから休みなんて取れても1日がいいとこだろうなとは思ってたから」
「よくわかってるじゃない。
そうなんだよね。
何しろ稼ぎ時だからさ」
「丸一日の休みはないと思った方がいい?」
「そうだね。
24時間って括りでなら空くところはあるけど、1日ということなら、ない」
「そっか。
じゃあ、その24時間でデートして、どっちかの部屋に泊まるってのは、体力的にできそう?」
「そうだなあ…あんまり遠出しない程度なら、出掛けられると思うけど。
なんなら、ご飯作りに行ってもいいよ」
「それじゃあ、どこか行って、俺んとこに泊まるかなぁ」
「いいよ、それで。
朝ご飯でも作ろうか?
ある程度作ったのを持って行っておけば楽だし。
んとね、3日の午後7時から4日の午後7時までなら24時間空いてるね。
正月の時みたいに、一旦部屋に戻って着替えとかしてから行く感じかな。
朝ご飯を食べて出掛けて、どっかでお昼食べて…4時半くらいには、部屋に戻って準備したいかな」
「じゃ、そういうことで。
どこか行きたいとこある? なければ、こっちで考えとくけど」
「特に思いつかないから、任せるよ。
あ、他に空いてる時間はね…」
結局、出掛けられるのは、5月4日だけしかないけど、空いてる夜に寿也さんが僕の部屋に来るって流れはいつもどおり。
付き合ってもうすぐ半年になるけど、僕達の関係は落ち着いてるというか、あまり抑揚がない。
なにしろ2人とも忙しいから、部屋に一緒にいても、話をしたりご飯を食べたり、えっちしたりくらいで、あまり変わり映えのない展開だ。
もっとも、波瀾万丈な人生を求めてるわけでもないので、僕は今の状況に満足してる。
先月、実家に帰ったときに考えた寿也さんとの今後についても、時々考えているけど、まだ答えは出てない。
1つ言えるのは、僕は寿也さんと別れる気はないってこと。
多分、今の状況は、寿也さんと会おうと思えば会えるってことで不満を感じていないんだと思う。
逆に言えば、会おうと思ってもなかなか会えない状況になったら、かなり辛いってことだ。
声だけ聞ければいいってことなら、遠距離恋愛もできるだろうけど、僕は多分、寿也さんの体温を感じられない状況には満足できないだろうし。
今のところ、会うことが割と簡単にできているけど、来年寿也さんが社会人になったら、今ほど簡単に会えるかどうか。
そう考えると、同棲してれば毎日必ず顔を合わせるくらいできるだろうから、メリットがないわけじゃない。
けど、2年後には僕も卒業することになる。
今すぐ同棲を始めたとしても、2年弱で状況が変わるのは確定だ。
だったら、今のままいってもいいような気がする。
僕が卒業後どうしたいかで、その後の流れが変わってくることになる。
まあ、どうしたいかなんて言っても
1 実家に戻る
2 こっちで就職する
3 卒業後、こっちで結婚する
の三択にしかならない。
実家を継ぎたいっていう僕の夢を最優先にするなら、寿也さんと遠距離恋愛するか、寿也さんをあっちに連れてってちゃうかの二択だ。
別れる選択肢は、ない。
でも、寿也さんがこっちにいたいって言ったら、或いは婿養子は嫌だって言ったら、どうすればいいだろう。
無理矢理連れ帰るわけにはいかない。
一応、寿也さんは次男だって話は聞いたけど、それと婿養子になるかは別問題だし。
でもなあ。
「婿養子に来てくれる?」なんて聞けないよなあ。
それって逆プロポーズ以外の何者でもないし。
僕だって女の子だから、プロポーズはロマンチックなのを期待したい。
間違っても「婿養子に来てくれる?」なんて僕から聞くプロポーズなんて願い下げだ。
タイムリミットまではまだ2年近くあるんだから、焦らずにちゃんと考えよう。
焦ったら、見るべきものが見えなくなって、まともな判断もできなくなってしまうから。




