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23 元カレ、いかがですか?

 今回の話の中で、女性蔑視と取られかねない発言等がありますが、キャラクター個人の主張です。

 作者としては、決してそういった主義を持っているわけではありません。

 「僕に彼氏がいるのが、そんなに意外?」


 成人式の後、一旦みんな着替えに戻って、夜にクラス会でまた集まることになった。

 僕も、母さんに迎えに来てもらって家に帰り、着替えてシャワーを浴びて、いつもの格好で会場に向かった。

 寿也さんは、あの後、母さんに駅まで送ってもらって、予定どおりそのまま帰ったそうだ。

 さすがに初対面の母さんに送ってもらうのは申し訳ないと言っていたけど、どうやら母さんは寿也さんに好感を持ったらしい。

 まあ、寿也さんは物怖じしないタイプだし、行動も礼儀と常識をわきまえているからね。

 母さんは何も言わないけど、僕が寿也さんと結婚したいと言ったらあっさり賛成するに違いないって雰囲気だった。

 僕がいなくて2人だけの時間も結構あったわけだから、色々と話をしたんだろう。


 いつものデニムでクラス会に行くと、みんなあからさまにホッとしたような顔で僕を見てくる。

 要するに、男っぽい格好をしてないと、僕らしくないということらしい。

 特に、成人式で僕がウイッグを着けてたことを知らなかった連中は、2年の間に僕が髪を伸ばしたんだと思ってたそうで、「それでこそ明星だ」的な、よくわからない褒め方をされた。

 クラス会は、地元に残っていた子が幹事になって、小洒落たイタリアンレストランを借り切っていた。

 高校までしかいなかった町に行きつけの店なんかあるわけもなく、僕も初めて入る店だったけど、料理は美味しくてお酒が進む。

 昔話や近況報告に花が咲く中で、みんなが僕から聞きたがるのが、寿也さんの話だ。

 隠すつもりもないし、アルコールで口が滑らかになっていることもあって、スマホに入ってる写真を見せながら話をした。


 「これが彼氏」

 「お~、男同士のツーショットにしか見えない」


 「これがクリスマスの時の写真」

 「黒沢さんが女装してる~、何これ、すっごく可愛い!」

 「女装じゃないから! 僕は女の子だから!

  この服ね、灯里に選んでもらったんだ」

 「お~、さすが正妻!」


 「名前はねえ、(つくも)寿也。

  1コ上」

 「つくもって、九十九?」

 「じゃなくて、白。

  百から一とって白で、つくもって読むらしいよ」

 「白黒コンビだ~~~

  結婚したら、白黒明星になるの?」

 「なるか! なんだよ、白黒って!」




 酔っぱらいの変なテンションとかもあって、なんだか随分囃し立てられた気がするけど、僕に彼氏がいるってことは、受け入れられたみたいだ。

 それにしても、僕と灯里がカップルみたいに見られてたなんて、驚きだ。

 多分、高校時代に知っていたら、人間不信になったんじゃないかってくらいに。

 寿也さんと一緒の時、もっと女の子っぽい服装した方がいいのかな。

 喋り方は今更どうしようもないけど、服装くらいは変えられるよね。

 寿也さんの本音としては、どうなんだろう?

 ことあるごとにボーイッシュなままでいいって言ってくれるけど、本当にそう思ってるのかな。

 将来のことを考える上でも、もう少し寿也さんのことを深く理解しなきゃ。


 クラス会は大いに盛り上がり、予定を超えて9時過ぎにようやくお開きになった。

 一次会で3時間も騒いだから、二次会に行くようなこともなく、解散になった。

 僕は、灯里と2人で帰ることにした。

 灯里は可愛くてやたらとナンパされるので、あまり夜道を1人で歩かせたくなくて、高校時代から何かというと僕が家まで送っていた。

 …だから、カップル扱いされるんだろうか。

 灯里の家は住宅街にあるので、夜は人通りが少ない。

 一緒に歩いて、飲食店街を出る辺りで、予想どおりというか、酔っぱらいにナンパされた。


 「へぇ、随分綺麗なお姉ちゃん連れて歩いてるじゃないか。

  譲ってくれない?」


 「悪いけど、酔っぱらいの相手するほど暇じゃないんだ。

  どいてくれないかな」


 「は、ナイト気取りか?

  相変わらず女が好きなんだな、男女(おとこおんな)


 え? 男女(おとこおんな)? まさか…


 「陽介? もしかして、僕だとわかってて絡んできたのか?」


 「ああ、そうだよ。

  『僕』、ねぇ?

  昼間は女っぽいカッコしてっからちっとは女の自覚が出たのかと思ったが、夜は男に戻って美人と一杯か。

  ホントに女好きだな。

  いっそ男に生まれた方が良かったんじゃないか?

  そっちの姉ちゃんも、そいつが男装してんのわかってんのか? それともタカラヅカが好きかい?

  そりゃ、お似合いのカップルだなあ」


 「陽介、僕に文句があるなら好きに言えばいい。

  でも、僕の親友を侮辱するなら、許さないぞ」


 僕は、灯里の前に立って陽介を睨みつけた。

 陽介は、完全に目が据わっている感じだし、相当酔っぱらってるようだから、ケンカになっても十分勝てる。

 もちろん、こっちから手を出す気はない。

 でも、灯里には、指一本触れさせない。

 ナイトとか、そんなんじゃない。

 陽介が絡んできてるのは、僕がいるせいだから、僕がけじめつけなきゃいけないってだけだ。

 無茶苦茶腹が立ってるのに、どこか冷静な自分がいるのがわかる。


 「陽介、僕が男っぽいのが気に入らないってんなら、わざわざ僕に近付かなければいい。

  どうせ、明日には帰るし、お望みどおり視界に入らないよ。

  僕だって、せっかく綺麗に着飾ったりクラス会で友達に会えたりして楽しかった1日をこんなことで台無しにしたくはないんだ。

  つまんない言い掛かりつけてないで、家に帰れ」


 「つまんない言い掛かりだと!?」


 「そのとおりじゃないか。

  今日、僕が君に何か迷惑を掛けたか?

  中学の時のことにしたって、フッたのは君の方だろ?

  今更難癖つけられる謂われはないね。

  普通、恨み言を言うのは、フラれた側だろうさ。

  まあ、僕から君に言いたいことは、『そこをどいてくれ』くらいだけどね」


 僕は、言うだけ言って、灯里の手を引いて陽介の脇を通り抜けた。

 一応、殴りかかられてもいいように警戒はしたけど、陽介は拳を握りしめてプルプル震えているだけで、何もしてこなかった。


 暫く歩いて、陽介から十分離れたところで、僕は灯里に謝った。


 「嫌な思いをさせてごめん。

  あれが、前に話した元カレなんだ」


 「酔っぱらいだからしょうがないかもしれないけど、支離滅裂だったわね」


 「うん。

  付き合ってた頃は、あんなじゃなかったんだけどね」


 「ま、別れて正解だったわよ、あんな奴。

  今カレの方も初めて会ったけど、あっちはちゃんとした人だったから」


 「そうだね。

  寿也さんに会えてよかったと思うよ」


 「あら、ごちそうさま。

  ここで惚気られるとは思わなかったわ」


 僕は、灯里を送ってから家に帰った。

 青海に帰る前に、母さんに寿也さんと何を話したのか聞いてみたけど、はぐらかされてしまった。



 後日、寿也さんに会った時にも、母さんとどんな話をしたか聞いてみたけど、付き合った経緯と世間話くらいだって言ってた。

 それと、避妊だけはちゃんとするようにとも言われたそうだ…。


 スタジオで母さんにとってもらった振袖姿の僕と寿也さんのツーショットは、寿也さんのスマホの待ち受けになっている。

 他人に見せるわけじゃないから構わないけど、寿也さんは兄貴に見せびらかしたらしい。

 寿也さんは、兄貴が悔しがってたって言ってたけど、それはないと思う。

 次回は、21日日曜日午後10時頃更新予定です。

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