18 バレンタイン、いかがですか?
「あのさ、灯里はバレンタインって何するの?」
例によって、僕は灯里に助言を求めた。
初めてのバレンタインだから、手作り系にしようと思ったから。
「ストレートにハート型のチョコとか、チョコケーキとか。
ケーキなら、うちのレンジで作れるんだけど」
うちの電子レンジにはグリル機能が付いていて、ケーキを焼くモードもある。
説明書にあるレシピどおりの分量なら、オートで焼けるんだ。
「ケーキに塗るにしても、チョコとして作るにしても、板チョコと生クリームを混ぜて湯煎で溶かすってのは共通。
ハートチョコにするなら、生クリームは極少量でいいわ。
どっちにしても、板チョコの甘さがそのまま生きるわけだから、材料買う時点で考えておくこと」
「なるほど。
で、灯里はどうするの?」
「あたしは、2年目だからね、自分にリボンでも巻こうかしら」
「『私を食べて』ってやつ!?
灯里はスタイルいいから、うらやましいよ。
僕みたいに起伏に乏しいと、そういうのは無理だなあ」
「ちょっと! 本気にしたんじゃないでしょうね。
そんな痴女みたいな真似するわけないでしょ!」
「え? 冗談なの?
なんだ、さすがに経験豊富だと大胆だなあって感心したのに」
「裸リボンだの裸エプロンだの、フィクションの話だと思った方がいいわよ。
実際やったら、一定数は喜ぶ人もいるだろうけど、大抵は引かれると思うわよ」
「やったことある?」
「あるわけないでしょうが!」
「そっかあ。
僕の体は貧相だから無理だけど、灯里みたいにスタイルが良ければ、そういう格好も似合うと思ったんだけど」
「あんたねぇ。
どこからそういう知識仕入れてくるのか知らないけど、あんまり鵜呑みにしちゃダメだからね。
第一、どうやって自分の体にリボンを巻くのよ?
誰かに手伝ってもらわなきゃできるわけないでしょ」
「あ、そっか。
タスキ巻くのでも結構大変だもんね。
そっか~、都市伝説だったのかあ」
そんなわけで、僕はオーソドックスにチョコケーキを作ることにした。
寿也さんの好みに合わせてセミスイートくらいの甘さにしよう。
後は、まだ僕の部屋に上がってもらったことはないから、僕の部屋でご飯食べて、泊まっていってもらおうか。
…隣に声、漏れないよね?
普段、特に隣の声とか聞こえてこないし、大丈夫だと思うんだけど。
僕は、バレンタイン当日の午後4時から翌日の午後2時まで空くようにシフトを調整して寿也さんを招くことにした。
寿也さんには、午後6時くらいに来てもらうことにして、肉じゃがとほうれん草とツナのサラダと、ワカメと豆腐の味噌汁を作る。
ケーキは、昨日のうちに焼いてある。
やってきた寿也さんは、初めて僕の部屋に入ることに大仰に喜んで、ご飯も美味しいと言ってくれた。
ご飯の後、ラッピングしたケーキを渡し、そのまま2人で4分の1ずつ食べた。
寿也さん、ご飯お代わりした後で、よく食べられるなあ。
その後、2人でお風呂に入った。
うちのバスルームは、寿也さんのとこより大分狭いけど、今日は特別。
ピンクのバスボールを使ってお湯をピンク色にして、泡をいつもより細めに着けて。
本当のリボンは無理だけど、気分だけでもと、泡のリボンにしてみた。
灯里はああいってたけど、多分、寿也さんはこういうの喜ぶから。
寿也さんは、予想どおり喜んでくれたみたいだ。
目を見ればわかる。
「今夜は、僕をプレゼント。
朝チュンになってもいいよ」
って耳元で囁いたら、すごく喜んでた。
2回シて、もう一度お風呂に入って、休憩してから、もう1回シた。
お風呂に入った時、寿也さんの背中に、僕がしがみついた時に立てた爪の跡がついてるのを見て、ちょっと恥ずかしかった。
とりあえず、今回のバレンタインは大成功ということにしておく。
でも、今後、朝チュンは時間の取れる時だけにしよう。
翌日、全身筋肉痛で、バイトが辛かった。
寿也が泡のリボンを喜んだのは、明星が自分を喜ばせようと頑張ってるのが嬉しかったのです。
決して、裸リボンが男の浪漫とか思ってません。




