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12 イブの夜、いかがですか?

 イブの夜のあれそれです。

 このくらいなら大丈夫だろうと、R15指定はしていません。

 問題があるようなら、指定いたします。

 「見ればわかると思うけど、僕、胸小っちゃいからね。

  そこは期待しないでよね」


 今、僕等は、レストランのあったビルに入ってるホテルの一室にいる。

 とても恥ずかしい話だけど、どうやら僕は全身から誘ってオーラを出していたらしい。

 食事の後、予想どおり部屋を取っていた寿也さんに


  「部屋取ってあるけど、来る?」


と聞かれて、「うん」と頷いて、部屋にやってきた。


 さすがにドキドキが止まらないけど、嫌な感じはしない。

 僕は、部屋に入るとすぐに寿也さんに抱きしめられた。

 僕の中の何かが、幸せで満たされていくのを感じる。

 気付けば、僕は力一杯寿也さんを抱きしめて舌を絡めていた。


 暫くそうした後、ようやく体を離した僕たちは、ソファに隣り合って座った。


 「あの、さ、僕、中学でふられて以来、男の人と付き合ったことなくてさ、こういう時、どうすればいいかわからないから、その、任せるから。


  あ、あの、汗かいちゃったし、シャワー浴びよ?

  あの、先、浴びてきて?」


 寿也さんは、「わかった」って言って、バスルームに消えた。

 僕は、その間に、メイクを落としながら考えていた。

 僕は、別に男嫌いってわけじゃない。

 壁を作ってたところはあるけど、経験がないのは、そういう気持ちになる相手がいなかっただけの話だ。

 寿也さんに求められたいって思ってるのは確かなんだから、今のこの不安な気持ちは、初めてだから恐いのと、僕のこの貧弱な体を見て寿也さんに幻滅されないかっていう不安なんだ。

 この胸。

 中学の時みたいに真っ平らじゃないけど、それでもAカップの小っちゃな胸。

 一般的には、男の人って揉み応えのある胸の方が好きらしいからなあ。

 まあ、僕の胸が小さいのなんか、服の上からでもわかるだろうし、胸で好きになってくれたわけじゃないんだから、気にしてもしょうがないよね。

 ウダウダ考えているうちに、寿也さんが出てきたので、入れ替わりにバスルームに向かう。


 意外と広いんだ。

 ホテルのお風呂って、ユニットバスだと思ってたけど、うちのアパートのお風呂よりちゃんとしたバスルームだ。

 さすがに実家のお風呂ほど広くないけど。

 実家のお風呂って、たしか市販のバスルームの中で一番広いのにしたって言ってたもんな。

 こんだけ広いんなら、2人で一緒に入ったりもできそうだね。

 …明るいところで裸見られるのは、ちょっと抵抗あるなあ。


 えっと、バスタオル巻いただけじゃ、色々見えちゃいそうだし、寿也さん、さっきガウン着てたよね。

 あ、あった。


 「お待たせ…」


 あ…今まで、自分が見られることしか考えてなかったけど、僕、男の人の裸なんて、子供の頃に父さんと兄貴の見たくらいしかないじゃん!

 どうしよう、恥ずかしくて、寿也さんを見られないよ。


 「と、寿也さん、僕、こんな風に男の人と2人きりになるの初めてで、その、は、恥ずかしいんだけど…」


 「そんなに緊張しなくていいから」


 挙動不審になってる僕に、寿也さんは余裕で接してくる。

 まあ、普通なら、経験があって当たり前だし、それは構わないけど、僕が一方的に余裕がないのは悔しい。


 「ずるい。

  僕はこんなにドキドキしてるのに、寿也さんは余裕たっぷりで。

  寿也さんから口説いてきたくせに、僕の方が夢中になってるなんて納得できない」


 我ながら、言い掛かりつけてるみたい。

 子供か。

 でも、そんな僕の隣に移ってきた寿也さんは、優しく僕を抱き寄せてこう言った。


 「俺もドキドキしてるの、わかる?

  経験があろうとなかろうと、その人と初めてこういうことをする時は、不安とか緊張とかあるもんなの。

  俺だって、明星とキスしたのはさっきが初めてだし、こうやって触れるのも初めてだからさ」

 「僕は、キス以外、誰ともしたことないよ」

 「明星が、俺とそういうことしてもいいって思ってくれたってことが大事なの。

  俺のこと、それくらい好きになってくれたってことが嬉しいんだよ」


 「うん、大好き。

  さっきから、心臓がどうにかなっちゃいそうだよ。

  もっとギュッとして」


 それから、僕たちはベッドに移動した。

 ベッドに並んで座った後、寿也さんは、ガウンを脱いで僕を抱き寄せながらキスする。

 ベッドに横たえられた僕は、ガウンをはだけられながら、寿也さんて細身で筋肉もそれほどついてないのに逞しいんだな、なんて考えていた。




 翌朝、寿也さんより早く目が覚めた僕は、汗やら何やらでベトベトの体を洗うため、ベッドからそっと抜け出そうとして、痛みに悲鳴を上げそうになった。

 体を捻ると痛みが走る。

 まだ何か挟まっているみたいな違和感があるし、あちこち筋肉痛になってる。

 僕は、浴槽にぬるめのお湯を溜めながら、シャワーを浴びた。

 太股の辺りに、乾いた血がへばりついているのを見て、嬉しいような恥ずかしいような、言いようのない思いが湧いてきた。

 備え付けのバスバブルがあったので、浴槽に放り込んでみた。

 普段、こんなもの使わないしね。

 シャワーを浴び終わった頃には、お湯が半分ちょっと溜まっていたので、浴槽に浸かることにした。

 お湯の中で、筋肉痛の手足を伸ばしていると、寿也さんがバスルームに入ってきた。

 明るいところで寿也さんが裸で立っているので、目のやり場に困る。


 「おはよう。

  起きてたのか」


 「お、おはよう。

  あの、もう少ししたら、僕、上がるから」


 「折角だから、一緒に入らない?

  こんなこと、そうそうできないし」


 「そりゃそうだけど、こんな明るいところでなんて、恥ずかしいってば」


 「大丈夫、大丈夫。

  そんだけ泡がありゃ、見えないから」


 「そりゃ、お湯の中にいればそうだろうけど、現在進行形で思いっきり見えてるんだけど!」


 「え、俺?」


 「僕は、男の人の裸なんて見たことないんだよ!

  …見られたこともなかったけど」


 言ってるうちに、寿也さんも体を流し終わった。


 仕方ないので、浴槽の片方に寄って、寿也さんの入るスペースを空ける。

 2人分の体積で、お湯が溢れる。

 お湯だけならいいけど、泡もこぼれ落ちるのですくい取ってみると、手の上に泡がこんもりと乗った。

 すごい、こんなにしっかりとした泡なんだ。

 ふと思いついて、泡で体を覆い隠しながら立ち上がってみた。

 泡とはいえ、熱さが10cmほどもあると、しっかり肌を隠してくれる。

 ついでに体型も。


 「ほら、寿也さん、見てみて、泡の水着」


 「おー、すごいすごい、全然見えないよ」


 「でしょでしょ、面白いこと思いついちゃったよね」


 「うんうん、せっかくだから、腕にも盛ってみようか」


 そう言うと、寿也さんは僕の腕を泡で包み始めた。

 そしてできあがったのは、超ミニスカの泡のドレス状態の僕。


 「泡のドレス?」


 「うんうん、いいねぇ。

  記念写真でも撮りたいくらいだ」


 「写真なんか撮ろうとしたら、浴槽(そこ)に沈めてやる」


 「大丈夫、撮らないって。

  何かで流出したら恐いからね。

  明星の裸を見ていいのは、俺だけだから」


 「だから、どうしてそういうセリフがぽんぽん出てくるのさ。

  …にしても、この泡、強いね。

  まだビクともしないよ」


 すると、寿也さんがシャワーヘッドを引っ張り出してお湯を掛けてきた。


 「えい!」


 さすがにお湯を掛けられたら、泡は流されてしまう。

 あっという間に僕は裸にされてしまった。


 「ちょっと、寿也さん、恥ずかしいってば」


 「いいから、いいから。

  俺だけなら、見てもいいだろ?」


 だから、そういうこと言うの、ずるいってば。

 結局、そのまま抱きしめられたりキスされたりしてるうちに盛り上がっちゃって、ベッドに戻って2回戦になった。

 まだ痛かった。


 その後、2人で普通にお風呂に入って一休みした後、モーニングを食べてチェックアウト。


 「大晦日は一緒に過ごせそう?」


 「ごめん、イブ休んだ分、年末年始は休めない。

  2日なら、日中に時間取れるけど」


 「じゃ、そこで初詣行こうか」


 「そうだね」


 そんなことを話ながら、寿也さんのアパートに連れて行ってもらった。

 次からは、直接寿也さんの部屋を訪ねることができる。

 合い鍵も渡されそうになったけど、さすがにまだ早いと断った。

 先の楽しみに取っておこう。


 寿也さんの部屋で、買ってきたペアマグでコーヒーを飲んで、まったり過ごした後、帰った。

 いいって言ったのに、寿也さんはわざわざ僕の部屋まで送ってくれてさよならのキスまでして帰って行った。

 部屋に上がっていく? って聞いたんだけど、帰りたくなくなるとまずいから、と固辞された。

 今度は、時間のある時に、ご飯とか用意して誘ってみよう。

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