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7.権力者との因縁とか

 俺とおっさんが街に戻ってくると、どうも雰囲気が騒がしいというか、何かあったような雰囲気だった。


「嫌な予感がするな!」


 そう言うとおっさんは走り出した。俺もそれを追っていって街の入口付近まで到達すると、見覚えのあるパワードスーツ達の姿が目に入った。


「おっさん、あれは」

「岸見の手のものであろう!」

「一体何しに来たんだろうな!」

「わからんが! 良い話ではなさそうだ!」


 そう言っておっさんは地面を蹴ると、一気にパワードスーツの前に出た。


「岸見家の者が何用だ!」


 おっさんが叫ぶと、パワードスーツ達が左右に割れ、一人のナイスミドル風でいい服を着た中年の男が姿を現した。


「相変わらず、蛮人は礼儀をわきまえないものだな」

「岸見四世!」

「勇者たろうか、暑苦しい」


 吐き捨てるようにそう言うと、岸見四世らしいナイスミドルは俺を見た。鋭い視線で緊張する。


「お前が報告にあった男か。見た目は大したことがないな」


 失礼なナイスミドルはそれから首を横に振った。


「まあ、それはいい。ここに来たのは新種のフィグメントらしき生物についてだ」

「なに!?」

「ほう、その表情だとすでに知っているようだな。それならば話が早い、力を貸せ。そうすればここは今まで通り見逃しておいてやろう」

「言ってくれるな! それだけの兵を連れてきての脅迫であろう!」

「貴様がどう受け取ろうと構わん。お前達に知性というものがあるなら、断る理由はあるまい?」


 なんというか、傲慢というか頑固そうなナイスミドルだな。なんとなくそのうちデレそうな気がする。それはそうとおっさんは歯を食いしばり、ナイスミドルを睨みつけた。


「わかった。協力しようではないか」

「良かろう」


 おっさんとナイスミドルはどちらも表情を変えずにうなずくと、同時に近づいて行って軽く握手をした。見てる方が胃が痛くなる感じだわ。だが、そこでナイスミドルが俺に視線を向けてきた。


「ふむ、中々興味深いな。行くぞ、ここでは我々もこの連中も安心できない」


 気になることを言ってから、ナイスミドルは自分の兵隊を率いてこの場から離れて行った。


「おっさん、あいつらはどこに?」

「外であろうな! あの連中は地下が嫌いなのだ!」

「なるほどな。おっさんはあいつらとは知り合いみたいだったけど」

「まあ、岸見とは個人的に色々あったのだ」


 おっさんにしては珍しく静かな一言だった。何か因縁があるんだろう。


「さて、駿ノ助殿! 早いところ我らの仕事を済ますとしようではないか!」


 それから俺達は急いで資材と人を集めると、再びダンジョンに潜っていった。そしてファンと爺さんのいる場所まで戻ってくると、そこでは触手の塊がどういう仕組みなのか空中に固定されていた。


「ふむ、戻ったか」


 爺さんは振り返り、おっさんに近づいて話を始める。一方ファンは両手を妙な感じで動かしながら空中の触手の塊に鋭い視線を向けていた。俺はそこに近寄って声をかけてみる。


「ファン、何やってるんだ?」

「こいつの体の構造を調べてるの」

「それで分かるのか」

「まあ、時間はかかるけどね。こういうの得意だから」


 そういえばフィグメントとかいうのも一撃で仕留めてたな。とりあえず邪魔をしないほうが良さそうなので、俺はおっさん達と一緒に檻やらなんやらの準備をすることにした。


 それから結構時間が経ち、一応の格好がついた頃にはファンや爺さんの仕事も終わっていたようだった。


「皆ありがとう! とりあえず今日のところは戻ってくれ!」


 おっさんが人を帰し、その場には俺の他には爺さんとおっさん、ファンだけになった。


「それで、その謎生物の調査はいつ終わるんだ?」


 相変わらず触手の塊をいじくりまわしている爺さんとファンに声をかけると、二人は難しい顔をしていた。


「こいつ、よくわからない」

「うむ、わかるのは普通の生物ではないということくらいだ」


 二人の言葉に、おっさんも腕を組んでうなった。


「二人にわからないのでは打つ手がないではないか!」

「慌てるな、たろうよ。これは謎の生物だが、今のところそこまでの脅威ではない」

「しかし父上! あまり数が多ければ対応しきれません!」

「岸見が来たのなら何かあっても手は足りるだろう。あの男はある意味で信頼できる男だ。お前ならよくわかっているであろう」


 何だか気になるよなあ。というわけで、俺はファンに話を聞いてみることにした。


「なあ、岸見っておっさんとあの二人は色々あるみたいだけど、どういうことなんだ? お前が前に言ったようにただ横暴なだけの人間にも見えないし」


 俺がそう言うと、ファンは首を横に振ってため息をついた。


「別に仲が良かったっていう話も聞かないけど」

「そうなのか。まあきっと敵対してても通じ合うなにかってのがあったんだろうな。よくわからんけど」

「ほんと、よくわからない」


 ファンはそれ以上何も言おうとはしなかった。このあたり、当事者から話は聞けそうにないし、噂でもなんでも仕入れたほうが良さそうだな。


 そんなこんなで、おっさんが見張りになって俺達は休むことになった。豪華にも一人ずつにテントが用意されていたので、それなりにちゃんと眠れた。


「駿ノ助殿!」


 そしておっさんに起こされた。俺がテントを出ると、すでにおっさん以外の二人も起きていて、さらにナイスミドル岸見も自分の兵隊を引き連れて姿を現していた。


「ほう、これが新種か。悪趣味な見た目だ」


 そう言うと、ファンのことを鋭く一瞥した。ファンはそれに目をそらさずに睨み返した。


「困った娘だな」


 ナイスミドルはなにか言いたげな表情でおっさんと爺さんを見るが、爺さんは特に何も言わず、おっさんはそれに気づいてなかった。


「まあ良い。それを一匹こちらに渡してもらおう」

「良かろう、違う視点も必要だ。自由に選ぶといい」


 爺さんがそう言うと、ナイスミドルは部下に指示を出して触手の塊を一匹確保させた。これで事態の解明が早くなったりするのかね。

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