18.略奪者
なぜか、闇の中にいた。俺はあの銀色に突っ込んでいったはずなのに、今は体の感覚もなく、ただ意識だけが漂っているような感覚だった。
「お前の言葉で言えばゲームオーバーだ」
そこにカラスの声が響いてきた。
「つまり、俺は死んだのか? 何があったんだ」
「正確に言えば殺したのだ。この私がな」
「……どうしてだ?」
「お前は中々いい能力を得たからな。タイミングも良かった」
つまり、俺は利用されてたってわけか。
「ずいぶん回りくどいやり方をするんだな」
「我らは自らの願いをかなえる力はないのだ。だかこれでようやくこの世界を消せるであろう」
「ずいぶんと大きくでたな。なんでこの世界を消す必要があるんだ?」
「失敗作を残しておく理由があるのか?」
こいつら、とんでもない連中だったんだな。でも、これ以上俺にできることもないのか。
「見つけた」
そこについ最近聞いた声が聞こえてきた。これは斎藤だったか。それから何かにつかまれたような感覚を覚えた。
「あなたの力と肉体は奪われた。それでもまだ残されたものがある」
「他に何があるっていうんだ?」
「歪められた魂。だけどそれが武器になる」
魂か。それだけが俺に残されたものなんだろうな。
「武器っていうのは、なんなんだ?」
「この世界を支配している存在と戦うためのもの。それは、あなたというピースで完成する」
「それが完成すれば、皆が助かるのか?」
「助かるかはわからない。でも、そうすればまともに戦える」
「で、お前は何者なんだ?」
「ただの残骸。だけどそれも終わる」
そうか、こいつはずっとここにいたんだな。それでずっと俺みたいな奴を待ってたんだろう。
「わかった。俺の魂を託すよ」
「ありがとう」
ファンは自分が見ているものが信じられなかった。駿ノ助の体が何かに貫かれたと思ったら、その数秒後には銀色と一緒にその姿が光に包まれて消えてしまっていたのだ。
「おかしい」
強烈な違和感を感じたファンはすぐさま足を踏み出した。
「おじさん! 一体何があったの!?」
たろうはファンの問いに困惑した表情を浮かべて首を横に振る。
「わからぬ。駿ノ助殿が一体どこに消えてしまったのか」
「そんな」
ファンはすぐに高木を目を向けるが、そこでも首を横に振られただけだった。だが、そこでファンは強烈な悪寒を覚えた。
「誰だ!」
考えるより体が動き、声が出ていた。そうして振り返った先には一見したところ何も変わりはない駿ノ助の姿があった。
「おお、駿ノ助殿! 無事であったか!」
たろうが両手を広げて駿ノ助に近づいていく。ファンはそれを止めようとしたが、それよりも早く駿ノ助が動き、たろうの懐にまで入っていた。轟音が響き、その体が空中に打ち上げられる。
高木はすぐに銃口を向けようとしたが、それよりも早く駿ノ助は上空に跳び、右手で空中のたろうの頭をつかむと、その体を盾のようにして高木に向けて急降下してきた。
「っ!」
轟音と同時に土煙が舞い上がる。高木はなんとか逃れていたが、たろうの体は地面にめり込み、ぴくりとも動かなかった。そして、駿ノ助はたろうの頭から手を放すと、両腕を勢いよくそこに振り下ろす。
「なぜだ?」
銀色の鎧をまとったものが、背後から駿ノ助の腕を掴んで攻撃を止めていた。それは問いには応えず、駿ノ助の体を天高く投げ飛ばした。
「ファン! こっちに!」
その呼びかけにファンは不思議と親しみを感じて駆け寄る。銀色はそれに手を差し伸べ、ファンはその手を両手で握った。
「ありがとう」
それから、銀色とファンは光に包まれ、それが治まってからファンが目を開けると、そこは駿ノ助が岸見に見せられた巨大なパワードスーツのある場所だった。
「なにこれ?」
ファンの疑問に銀色はパワードスーツに近づくと、コンソールを操作してそれに膝をつかせた。
「これは人が戦うための道具。あなたが使うべきもの。さあ、手を触れて」
導かれるようにファンは自らの右手をパワードスーツの正面に置く。
「認証開始します」
音声と同時にファンの手が置かれた場所が一瞬光った。
「対象者を搭乗資格者と判断します。登録、完了しました。」
パワードスーツの背面が大きく開き、内部のコックピットが露出した。そこは人間一人が余裕で入れるだけのスペースと、モニター類が並んでいた。
ファンがそこに足を踏み入れると、まずはその足が柔らかく包み込まれる感触があり、残りの手足は何もしなくても勝手にスーツの方から装着された。背後のハッチが閉じ、一瞬暗闇となるが、すぐに青い光が満たされる。
「第十三試験機、起動完了しました」
外の情景は違和感なく見え、視線の少し下には機体の情報が表示されているモニターがあった。そこに銀色の姿が映し出された。
「後はあなたに力を託す」
そう言って銀色が姿を消すと同時に、天井を突き破って駿ノ助の姿をしたものが現れる。それと同時にモニターに駿ノ助の顔が表示された。
「ファン、とりあえず俺の指示を聞いてくれ」
「駿ノ助!?」
「詳しい話をしている時間はない。とにかく今はこいつを動かすことに集中してくれ」
「わかった。でも動かすだけならできそう」
ファンは不思議と第十三試験機が自分の手足として自由に動かせるように感じていた。試しに手を動かしてみると、機体の腕も遅延なく動いた。
「いけそう」




