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17.反撃の作戦

「力っていうのは何なんだよ」


 俺の問いかけに、斎藤京子と名乗ったものは反応しなかった。その視線は俺と高木ではなく、それより遠くを見つめているように見える。


「見つけた」


 斎藤がつぶやくと、一瞬にしてその足元の地面が砕け、土煙が巻き起こった。それから数秒後、土煙が薄れると岩の塊が空中に浮かんでいた。


「使え」


 高木が足元に拳銃を投げてきた。俺はそれを拾って岩の塊に銃口を向ける。だが、次の瞬間、俺の横に勇者のおっさんが飛んできて構えを取った。


「おっさん!?」

「嫌な気配がしたのでな!」

「それは言えてる」

「むう!」


 叫んだおっさんが俺の前に出ようとしたが、それよりも早く、俺は強烈な光と同時に全身に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされていた。


 なんとか立ち上がって目を開けると、岩の塊があった場所には銀色に輝く鎧のようなものを身にまとったものが立っていた。体は一回り大きくなった程度だが、迫力は数倍増しで、能力が働かなくてもかなりやばい奴なのはわかった。


 とりあえず辺りを見回してみると、おっさんと高木も吹き飛ばされていて、俺達はばらばらにされているようだった。


 そして、銀色は俺の目の前に現れた。俺はすぐにおっさんを対象に能力を使って身構える。しかし、次の瞬間強烈な衝撃で吹き飛ばされた。


 衝撃を受けてからどれくらい経ったのかわからなかったが、全身の激痛を感じながら目を開くと、おっさんと銀色が激しく殴り合っているのが目に入ってきた。まずい、明らかにおっさんが劣勢だ。


 俺はすぐに立ち上がろうとしたが、全身の痛みでどうにも力が入らない。ついでにおっさんと銀色が殴り合う音で頭痛もする。


 頭を振ると近くに高木の拳銃が転がってるのが見えた。今はあれしかない。俺はなんとか拳銃までたどり着いてそれを手に取って構えた。


「おっさん!」


 俺の声に反応しておっさんが身をかがめた。そして俺は銀色に向けて引金を引く。重い金属音が響いて銀色がわずかにのけぞり、おっさんは隙を逃さずにその顔面に拳を叩き込んだ。


 銀色はその腕をつかむが、その背後にいつの間にか高木が現れ、足に蹴りを入れて姿勢を崩させていた。


 おっさんは腕をつかまれたままだったが、むしろそれを生かして銀色を逆に引き込むと、顔面に膝蹴りを叩き込んだ。さすがに二人の連携攻撃は強力で、銀色はおっさんの腕を放して後方に吹き飛んでいく。


「ここは私が引き受ける! 体勢を立て直すのだ!」

「任せる」


 高木は即答して俺の側にきた。


「いくぞ」

「ああ」


 まだ頭痛はするが、俺は何とか立ち上がって高木の後を追って走った。後方からの轟音に追われながらのせいか、距離感がよくわからなかったがファンとだけ合流できた。


「岸見はどうした?」

「策がなんとかって全員で中に戻っていった。それよりおじさんは!?」


 策って、今の状況をどうにかできる手段があるのか?


「今は足止めをしてくれてる。策があるなら俺達も岸見と合流したほうがいいかな」

「それは駄目だよ! あいつはきっとおじさんを見殺しにする!」

「それなら、あれだけの人間を失うわけにはいかない。策というのはお前達が確認してくれ」


 高木は俺に向かってそう言ってから背を向けた。


「二人なら死なずに足止めはできるだろう」


 それから高木は走り去ってしまった。


「ファン、高木が行けば大丈夫だ。今は策っていうのを確認してみよう」

「その必要はない」


 そこにナイスミドルの声が上から響いてきた。これは拡声器か、声のしてきた方を見上げると、モールの屋上に設置された巨大なライフルのようなものが目に入ってきた。


「敵の動きを止めろ。ここから撃つ」


 なるほど、狙撃は悪い手段じゃないような気がする。あんなでかぶつなら威力も期待できそうだ。


「わかった! 俺達を撃つなよ!」

「当たり前の事を言うな。自分のやることに集中しろ」


 偉そうだが正論だ。


「ファンはここにいてくれ」

「うん、あいつが変なことをしないように見張ってる」

「待て、状況が悪い」


 そこでいつの間にか双眼鏡を使っていたナイスミドルからの制止が入った。


「危険だがここに引きつけるべきだな。あれはリスクを取らなければならない相手だ。わかったな」


 これは俺に言ってるよな、まあ、あれを倒せってよりはましだ。とりあえずハンマーを二本拾っておっさん達のところに向かうことにする。到着してみると、どう見てもおっさんと高木は劣勢だった。


「二人ともここは一度退くんだ!」


 大声を出してみたけど、それで撤退できるような感じでもない。それでも高木は俺の横まで下がってきた。


「狙撃をするつもりらしい。あいつを岸見のところまで引きつける必要がある」

「難しい注文だが、悪くはないな。ここを少し頼む」


 そう言うと高木は走り去ってしまった。何か準備ができるまで頑張れってことか。今はおっさんと一緒に時間稼ぎだ。


「駿ノ助殿、援護を!」

「わかってる!」


 俺はおっさんの後方に回り込んでから、その背中に向かって突進する。


「おっさん伏せろ!」


 そう叫んでから、俺は全力で右手のハンマーを投げた。おっさんは見事に伏せてハンマーは銀色を直撃した。


「おおお!」


 次の瞬間にはおっさんがものすごいバネで銀色に強烈な低空タックルをきめていた。そのまま銀色を持ち上げると地面に叩きつける。


「くらえ!」


 俺は左手のハンマーを両手で握り、全力で地面を蹴って銀色の頭部目がけて体ごと突っ込んだ

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