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16.一番やばいのは人間サイズ

 俺とおっさん、高木の三人は青いフィグメント三体と対峙していた。今までと違って連中の背丈は俺と同じくらいで、形は人間とほぼ同じだ。しかし、その力は今までの比じゃない。


 連中は俺達を値踏みしているのか、ゆっくりと左右に動いていて距離は詰めてこない。


「こいつら、俺達だけが狙いなのか」

「そのようだな! だが都合が良いではないか!」

「そうかな?」


 高木は銃を構えながらフィグメント達との距離を保っている。確かに、あいつらの力はかなり強力だから、一対一で戦ってどうにかできるかはわからない。


「三対一でいきたいけど、そうもいかないよな」

「とりあえず死なないようにしろ」

「何か策があるのだな!?」

「まずは見極めてからだ。二体は抑えておけ」

「良かろう! 行くぞ駿ノ助殿!」


 こうなったらやるしかない。


「うおおおおおおおおおおお!」


 まずおっさんがフィグメントに突進して吹っ飛ばした。俺もそれに続いてその反対側の奴に組み付く。こうやって力の勝負にすれば負けないはずだ。俺は力を込めてフィグメントを跪かせようとした。だが、それはできなかった。


「こいつ!?」


 むしろ押し返してくる! 押して駄目なら!


「こいつでどうだ!」


 俺はわざと力を抜いて相手に押し込まれてから、体を入れかえた。狙い通りにフィグメントの背後をとれたので、全力でその背中にのしかかる。これなら押さえこめるぞ!


 そして顔を上げてみると、そこでは対峙していた高木とフィグメントが動き出していた。


 まずフィグメントが高木に向かって踏み出したが、その頭部に銃弾が直撃する。だが、貫通はしなかったようで、フィグメントはのけぞるだけだった。


 高木はそれを予想していたのか、すでにその側面に回り込んでいた。そして今度はフィグメントの側頭部にゼロ距離で銃弾を撃ち込む。


 今度こそ! と思ったけど、そうはいかなかったようで、フィグメントは衝撃で転がったが致命傷は与えられなかったようだった。高木はすぐにバックステップして距離を取ると、拳銃をホルスターに収めてナイフを逆手に構えた。


 転がっていたフィグメントは四つん這いになると、地面を蹴って高木に飛びかかる。とんでもない速度だったが、金属音が響き上空に弾き飛ばされていた。あれをナイフ一本で弾いたのかよ!?


「うおっ!」


 そこで下からの衝撃と同時に全身が浮かび上がった。押さえてたはずなのに!


「高木!」


 俺はとっさに警告の叫びを上げた。高木は一瞬こちらを一瞥すると、体の向きを反転させた。地面に叩きつけられてそこから先は見えなかったが、金属音だけは聞こえた。


 俺はすぐに起き上がろうとしたが、それよりも早く背中に衝撃を受けて転がされた。どうにかその勢いのまま転がりながらも体勢を立て直して顔を上げた。


 そこではどうしたわけか高木の近くにおっさんが吹き飛ばされてきていた。三体のフィグメントはその二人を取り囲む位置に立っている。まずい!


 だが、高木は慌てる様子もなくナイフを手放すと、右手を脇腹に当てた。


「始動」


 小さな声のはずだったがなぜか俺の耳にまで響いてきた。次の瞬間フィグメントは一斉に高木に飛びかかる。


「は?」


 高木の姿が消えていた。フィグメント三体はそれを見失い動きを止める。次の瞬間、その周囲を影が円を描くように動き、フィグメントが固まった。


 そして、高木の姿が現れると同時に三体のフィグメントはその場に倒れた。一体何が起こったんだ?


 俺が混乱している間に、高木はナイフでフィグメントの頭部と胴体をナイフで貫いていた。おっさんは立ち上がってからその様子を見て、だいぶ驚いているようだった。


 しかし、高木は止めを刺し終えると、全身から大量の湯気を出してその場に跪いた。


「大丈夫か!?」

「それより、他は」


 確認してみたが、他には何も見当たらないし気配もない。


「問題なさそうだ」

「そうか、少し休む」


 そう言うと高木は姿勢を変えずにうつむいて動かなくなった。


「うーむ、ひどい目にあったぞ!」


 おっさんが頭を振りながら起き上がっていた。


「おっさんがやられるなんて何があったんだよ?」

「奴は爆発したのだ! だが、すぐに復活したようだがな!」

「爆発してすぐに再生したっていうのかよ、とんでもないな」


 でもまあ、一番びっくりしたのはそれをあっという間に倒した高木だ。


「とにかく、今は高木を休ませて体勢を立て直さないといけなよな。また同じのが来たら俺とおっさんじゃどうにかなるかわからない」

「うむ、ここは一時撤退だ!」


 そう言っておっさんは高木を担ぎ上げようとしたが、俺はそれを止めた。


「高木はこのままにしておこう。俺が見ておくからおっさんはあっちのナイスミドル達を頼む」

「む! 確かにそうであるな!」


 おっさんが走り去ってから、俺は空の緑の月を見上げる。変わった様子はなく、やはり能力も弾かれてしまった。


「なあ、お前はあれ知ってるのか?」


 高木に話しかけてみると、数秒経ってから顔だけ上げた。


「残念だが、初めてだ」

「つまり、次に何が来るかもわからないわけか」


 だが次の瞬間、強烈な悪寒を感じた。


「ここでいいのかな?」


 いつの間にか前方十歩ほどの距離に高校生みたいな服装の女が立っていた。これは明らかに普通の人間じゃないし、能力を発動しようとしてもなぜかこいつを対象として認識できない。


「お前はなんだ」


 俺の問いにそいつは軽く首をかしげて見せた。


「…斎藤、京子?」


 明らかに普通の人間じゃないのが再認識できた。そこで高木がゆっくりと立ち上がる。


「貴様、何をしにきた」

「何を? ただ力を追ってきただけ?」


 敵対する意思はないのか? いや、そもそもこいつはそういう尺度が通用する相手なのか?

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