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15.災厄の星から生まれたもの

 始まりは例によって突然だった。最初と同じように赤い光が今度は二十個落ちてきた。倍とか勘弁してもらいたいな。


「ファン、俺を飛ばすとかはできないのか?」

「やろうと思えばできるけど、やめといたほうがいいよ。着地させられないから」

「そうか、いざという時のために聞いてみたんだ」

「ふうん。それより、あれだけ多いと前回みたいには動きを止められないと思う」

「それは厳しいな」

「大丈夫、今度は違う魔法を使うから。相手の力を弱める効果があるやつ」

「それ良さそうだな」

「まあね、けっこう疲れるからあんまり使いたくないんだけど」

「でもここが使いどころだろ?」

「うん」


 まあ、やってみないとわからないか。で、ナイスミドルは、パワードスーツ部隊に声を張り上げていた。


「全員落ち着け! 三人一組を崩さずに対処しろ!」


 一人では火力が足りてなかったしな。しかし、改めて考えると高木の銃の威力はおかしいレベルだよな。ナイスミドルもそれはわかっているだろうが、高木の機嫌を損ねたくないから何も言わないんだろう。


 そんなことを考えている間に赤い光が一気に拡散し、俺達を包囲するような軌道になる。衝撃に備えて姿勢を低くして待つこと数十秒後、前回ほどの衝撃はなかったが、連中が着地したのはわかった。


「よし」


 素早く立ち上がったファンが光を灯らせた両手で空中に何かの模様を描いていく。そのまま体を回転させながら自分の周囲に光の模様を展開した。


「第一陣!」


 ファンはまずその模様の正面の一カ所に両手を置く。すると光の模様全体の輝きが増した。


「第二陣!」


 次にファンは模様の左側に手を置いた。


「第三陣!」


 そのまま右手を伸ばし、両手を模様に置く形になると、その輝きが青くなる。そしてファンが両手を掲げると、青く輝く模様が頭上に円の形状となって広がった。


「青光縛炎陣!」


 ファンが両手を振り下ろすと同時に、そこから青い炎が発生する。俺は思わず身構えたが、その炎は一瞬で通り過ぎたが、別に何の感覚もなかった。


「駿ノ助、これからこの陣の維持に集中するけど、こっちの心配はいらないから」

「ああ」


 俺がうなずくと、ファンはその場にあぐらをかいて座り、両眼を閉じた。すると、地面の模様から青い光が立ち上がり、ファンを守る壁のようになった。なるほど、これでファンは自分のことは守れるわけか。これなら俺も遠慮なく戦える。


 そこに戦闘前とは思えない落ち着きで高木が近づいてくる。


「準備は出来たか」

「大丈夫だ」


 俺はハンマーを肩に担ぎ、うなずいた。


「奴らは学習する。用心するんだな」


 高木はそれだけ言うと、離れていった。一応俺達のことを気にかけてるのかね。まあ、そういうことはこれが終わってから考えればいいか。


「よし! ファン、危なくなったら逃げろよ!」


 俺はそう言って迎撃に向かおうとしたが、その時、上から強烈な力を感じた。思わず空を見上げるとそこには亀裂が出来ていた。それはあっという間に広がり、そこから緑の月、のようなものが現れる。


 あれはどう考えてもやばいやつだよな。試しに能力を使ってみたが、何か弾かれるような感覚を感じて何も起こらない。冗談だろ?


 そして次の瞬間、その月が輝きを強めると、緑の光が降り注いできた。


「うわっ!?」


 ファンの焦った声がしたので振り返ると、青い光は消え、ファンは地面に倒れていた。駆け寄って助け起こそうとしたが、それよりも早くファンは起き上がっていた。


「結界が消された! 何あれ!?」

「さあな、恐ろしく危険なものだってことしかわからない。こいつは逃げる準備をしたほうがいいかもしれないぞ」

「ここで逃げるなんて出来ない!」


 まあ、ここでナイスミドル達を見捨てるのは寝覚めが悪いし、せっかくの拠点を無駄にしたくない。


「そうだな。やるしかないか」


 と思ったわけだけど、その数十秒後にはその判断を後悔しそうになった。なにしろ、四方に高さ十メートルはある青い巨人が現れたからだ。


「いやいや、それはないだろ。あんなのはちょっと」


 思わず声が出てしまう。どう考えてもあのサイズは無理だろ。だが、そこで俺達の前に光の柱が現れ、そこから勇者のおっさんが現れた。


「むう! なんだこれは!」


 現れるなりそう叫んでから俺達の存在に気がついたようで、体ごとこちらに向き直った。


「二人とも無事なようだな!」

「ああ、おっさんこそどうしてというか、どうやってここに?」

「父の魔法だ! 大きな危険が迫っているということでな!」


 なるほど。なんだかわからないが勇者のおっさんが来てくれたのは心強い。


「おじさん、向こうは大丈夫なの?」

「心配無用! ここを片づけてすぐに帰るからだ!」


 そう言うとおっさんは両手を空に向かって突き上げた。


「勇者奥義その七!」


 おっさんの体が真っ赤に輝きだす。


「行くぞおおおお!」


 雄叫びと同時におっさんは勢いよく飛び出した。まるで弾丸だよ。そのまま青い巨人に突っ込むと、強烈な爆発が起こった。


 思わず伏せたが、顔だけあげてみるとおっさんが突っ込んだ巨人の上半身は消し飛んでいた。勇者パワーすごいな! 残り三体はどうやらおっさんを脅威と認識したのか、そっちに向き直る。


「おじさんを援護しなきゃ!」

「ああ!」


 俺はすぐに巨人に対して能力を発動してみる。今度は弾かれずに今までにない段違いの強力な力が全身に漲った。おっさんはこんなのを一撃で吹っ飛ばしたのか、勇者強いな。


「さて、効果があるかはわからないけど」


 とにかく全力でハンマーを青い巨人の一体に向けて投げた。しかし、それよりも早く巨人達の姿が縮み始め、ハンマーは空に消えていった。


 次に、自分の中の力が増大し始めたのを感じる。これはあれか、力を凝縮してるから体が縮んでるってやつなのか?


「ファン、たぶんだけど、ものすごいのが来るぞ」


 そこにおっさんが空から降ってきた。


「二人とも逃げる準備をするのだ!」

「逃げるって、どういうことおじさん!?」

「あれらは危険だ! すぐに岸見にも逃げろと伝えるのだ! 反論は聞かん!」

「それは聞けないな」


 いつの間にか高木が俺の隣に来ていた。


「お前一人であれを止めることは無理だろう」

「む! お主は!」

「高木だ。それより、あそこの連中を逃がしたいのなら、お前一人では無理だ。そこの駿ノ助も合わせて三人いればどうにかできるかもしれないがな」

「むむむ!」


 おっさんはうなってから、俺と高木を交互に見て、それから巨人達が存在していたところを見回し、力強くうなずいた。


「わかった! 高木といったな! お前の力を信じよう!」


 俺はいいのか。まあ力比べをした仲だが。


「ファンよ! 岸見にはよく言い聞かせておいてくれ!」

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