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13.狩人と助言

 高木という男はとんでもない男だった。パワードスーツ連中の銃でも倒せない人形を拳銃の一撃であっさりと倒していく。それなのに感じられる力はそこまででもないし、ものすごい動きをしているというわけでもない。


「よし四体目!」


 俺はファンが動きを鈍くした人形の背後に回ってホールドする。だが、そこで人形の腰から上が回転して両腕を振り下ろしてきた。耐えようと歯を食いしばったが、その前に銃声が響いて人形の両腕が砕け、続いて頭部が砕け散った。


「無事か」


 俺が人形を横に投げ捨てると、高木はマガジンを交換しながら声だけかけてきた。両腕を撃ったのは俺を助けてくれたわけか。


「ああ、この調子なら問題なくいけそうだな」

「油断はするな」


 まあ確かにさっきの奴は違う動きをしてきたな。まあでもなんとかなるだろ。こいつは強いし。


「まずいぞ」


 そう思っていたら高木が声の調子を変えずにつぶやいたのが聞こえた。その数秒後、パワードスーツ連中が戦っている六体の人形が一斉に大きく跳ねた。そしてそいつらは俺達に向かって落ちてくる。


「ちょっと待てよ!」


 俺はとっさに姿勢を低くしようとしたが、それよりも早く頭上に光の壁が出現して人形達を受け止めていた。


「避けて!」


 ファンか! 俺は高木より遅れて横に飛び、その直後に光の壁は消えて人形達が俺達のいた場所に激突していた。


 直後、高木がその中心に駆け込み、四発の銃声が響いた。土煙で何をやってるのかはさっぱりわからないうちに、高木が土煙の中から出てきて俺の横で止まった。


「残り四体だ」

「どうやったんだよ?」

「気にするな。来るぞ」


 俺はとりあえず前に出て意識を集中しようとした。だが、それよりも早く強烈な衝撃が襲ってくる。


「この!」


 こいつら四体同時で来やがった! 俺の能力は三割増しでしかないので当然押し込まれる。


「いいぞ」


 高木の声と同時に、肩に重みを感じた。こいつ、俺を踏み台にして人形の上を取りやがった。次の瞬間、三発の銃声が響いて人形の頭部が砕け散っていた。これなら押さえこめる。


「お前で最後だ!」


 俺は人形の腰をホールドして、勢いよくその場に両膝を突く。高木は銃をその場に落とすと同時に、太腿のホルスターからナイフを抜き、人形の頭部、背中、腰と連続で突き刺していた。それで人形からは力が失われ、俺は腕を放して後ろに下がった。その場を見回してみると、すでに人形はどれも動いていなかった。


「はあ、これで終わりか」


 高木は黙って銃とヘルメットを拾いに行ってるから、問題はないんだろ。ファンはだいぶ疲れたようで座り込んでいたので、俺もその隣に行って座った。


「お疲れさん。助かったよ」

「大変だったけどね」

「そういえば、顔色が良くないな。大丈夫なのか?」

「ちょっと魔法を使いすぎただけ。休めば良くなるから」

「そうか。ならいいけど」


 そうしてしばらく座っていると、ナイスミドルが一人で歩いてきた。


「ご苦労。あの男が何者かわかっているのか?」


 ナイスミドルは高木に視線を向けるが、その高木は大して気にしていない様子だった。


「本人に聞いてみろよ。でも、あいつがいなかったらこんなに早く片づかなったぞ」

「ほう。話をする、ついてこい」

「ああ、わかったよ」


 変に揉められても面倒だし、俺が仲介したほうがいいよな。そういうわけで、俺は高木に声をかけた。


「ちょっといいか、こっちのおっさんがお前と話がしたいそうだけど」


 高木はナイスミドルに視線を向けると、うなずいてからヘルメットを脇に抱えたまま一歩踏み出した。


「高木だ。あんたがここの代表か」

「うむ、岸見だ。協力に感謝しよう。望みの褒美はあるか?」

「補給ができればそれでいい。だが、しばらくは世話になりそうだ」

「ふむ、この状況で戦力が増えるのは助かる。補給に関しては担当者と話せ」

「わかった」


 そう言ってから高木は俺に顔を向けた。


「ところで、武器はないのか」

「ああ、特に持ってない」

「そうか。考えておくべきだな」


 それから高木はまだ赤く染まっている空を見上げる。


「少しは時間がある」


 そういうわけで、俺達はショッピングモールの中に戻り、ナイスミドルが手配していた部屋でファンと一緒に休んでいた。しかし武器か、もらった力だけでなんとかなると思ってたけど、高木がいなかったらあの人形を倒すのはもっと時間がかかっただろうし。


 でもまあ、俺はそんな経験もないし、どんな武器を使ったらいいかなんてわからない。


「なあ、何か武器のアイデアはないか?」


 ソファーで寝ているファンに声をかけたが、すぐには返事がなかった。しばらくしてから、ため息

に続いてファンが顔を上げる。


「駿ノ助なら頑丈な棒とかがいいんじゃないの」

「棒か。確かにそういうシンプルなのがいいな。でもやっぱり秘密兵器みたいなのがあればいいんだけども」

「それだと遺物を探さないと」

「遺物か」


 ナイスミドルと交渉する必要があるかもな。


「ちょっと出てくる」

「いってらっしゃい」


 それからモールの入口に行ってみると、そこには高木が一人で立っていた。


「あんたは休まないでいいのか?」

「休めてる」


 中々愛想のない奴だ。


「ところで、あんたは一人で旅をしてるのか?」

「そうだ」

「フィグメントを狩るためだけに?」

「ああ」

「理由を話す気は、なさそうだな」


 どうやら図星だったようで、高木は特に何も言わなかった。しばらくの間気まずい感じの沈黙があったがそこにナイスミドルがやってくる。


「ここにいたか。お前達に見せたいものがある。ついてこい」


 それだけ言うとナイスミドルは俺達の横を通っていった。

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