番外編 元暗殺者は退屈が嫌いなようで
ウィル視点です。
読み飛ばしても問題ないと思います。
物心ついた頃から、僕は孤児院で暮らしていた。
特に楽しい訳でも、辛い訳でもない、退屈な日々を送った。
あるとき、一人の男が来た。
その人は、自分のことは父親だと思えと言った。
その時から、僕は退屈ではなくなった。
父親は暗殺者だった。暗殺の技術を教えられる日々は、大変だったけれど、充実していたと思う。その時は、退屈だなんて思わなかったから。
でも、そんな日々はすぐに終わった。僕の父親は結構有名な暗殺者で、狙われる事が多かったのだが、その時は僕が狙われた。
何が起きたのか、わからなかった。目の前には既に虫の息の父親と、父親が倒した人。
父親は、幸せになれよ、と言って、深い眠りについた。結局、僕が父親を父さんと呼ぶことはなかった。
その日から、僕はまた退屈になった。
勝手に入ってくる仕事をこなしていった。淡々と、淡々と。
そして、一年が過ぎた頃。
冬を超え、花が咲き誇っている日に、ある仕事が入った。
アクロイド家当主が可愛がっているという、娘を殺すという内容だった。
当主は相当な切れ者だから、まず娘を殺し動揺を誘い、そこを一気に叩く、らしい。
その日の夜、早速屋敷に侵入した。
暗殺対象が起きているのを見て、面倒だと思った。
僕を見ると、恐怖におちいるか、煩く喚くくらいしかしなかったから。
でも、その子供だけは違った。冷静に状況を分析し、カマをかけてきた。
今まで見てきた、どんな人間とも違うと思った。
そして、会話をしていくうちに気がついた。
僕は、父さんの事が大切だったんだって。
そして、思った。
黒くてふわふわした長い髪に、釣り目がちな密色の目の、猫みたいな女の子。
ああ、この子傍にいれば、きっと、最高に面白いって。
そして、確信した。
大切な物を見つけるという宿題は、もう終わったって。
だって……………
「………ル?ウィル?。」
「っああ、ごめん。何?」
「明日から、貴族としての常識と人としての常識を勉強するから、貴女も一緒にどうかなって。」
「貴族としての常識は勉強しようかな。人としての常識は………少なくともレイラよりはあると思うから、大丈夫。」
「ねぇ、今聞き捨てならないこと聞いたんだけど。ねぇ。」
だって僕の大切な物は、もう隣にあるから。
できることをしよう。今度は、失わないですむように。
もう、退屈は嫌だから。
いかがでしたか?
感想お待ちしています。




