第三話
(前回のあらすじ)
見つかっちゃいました。
まずい。
非常にまずい。
とにかく、何か声をかけなければ。
私が口を開こうとする前に、侍女が声を発した。
「だ…………」
「だ?」
「旦那様あああああ!お嬢様の寝室に不審者があああああ!」
「ええ!?ちょっまっまって!」
私の声は届かず、侍女さんは物凄いスピードで部屋を出ていってしまった。
ああー。なんてこったい。
侍女さんは多分父様のところに行った。
ウィルのことをお願いしに行こうとは思ってたけど、いろいろ都合が良いときに頃合いを見てお願いしようと思ってたのにー。
「父様に何て説明すれば…………。」
「まあ、何とかなるんじゃない?」
そんな他人事のように!お前当事者だぞ。
「正直に話すよ?」
「別に構わないよ。アクロイド家当主は相当な切れ者だって言われてるし、嘘でごまかして信頼を失うよりかは真実を話す方が良い。」
ゲームによれば私よりたった一つだけ年上なのに、よくそこまで頭回るな。
精神年齢はもう二十歳くらいの私でも思わず唸るほどだ。
こんなに小さいのに、いったいどれだけの修羅場を超えてきたんだろう。
「レイラ!無事か!?」
あ、父様来ちゃった。
金髪に、空色の目の美形な父様の色素は、黒髪金瞳の私には受け継がれなかったが、鋭く、見る人に冷たく映る目つきは受け継がれた。
つまり何が言いたいかというと、悪役顔は父様からの遺伝だということだ。
「あー、父様?大丈夫です。彼は敵ではありません。今日父様にご報告しようかと思っていたところでしたので、紹介します。彼はウィル。私の使用人として雇いたいのです。」
「お初にお目にかかります。ウィルと申します。」
取り合えず昨夜のことは避けて紹介する。
「ふむ、ウィルか。使用人として雇いたいというのは分かったが、なぜレイラの寝室に?」
やっぱりそこかー…………。
仕方ないと腹をくくり、昨夜の事を説明する。
…………勿論前世云々や、大切な物探しのことはなるだけふせる。
「…………なるほど、大体分かった。が、娘を手に掛けようとした物を、そう簡単に傍に置くと思うか?」
反対されるのは想定内。でもどう切り抜けようか?
「アクロイド様、私を傍に置くのには、デメリットだけではないですよ?」
すると、説明のときは口をはさめようとしなかったウィルが、声を上げた。
「ほう?というと?」
「私の雇い主ですが、恐らくアクロイド様も目をつけていないとこです。私を雇えば情報は流しますし、裏の経験も多少あるので、使い用はありますよ。」
そう言って挑戦的に笑うウィル。
その姿を見て、父様が満足げに笑った。
「これほど頭が切れるんだ。雇っておいて損はないだろう。だが一つ、言っておきたい事がある………」
父様が放つ殺気に、思わず怯む。
な、何だ?何を言うんだ?
裏切ったらただじゃすまねぇぞ的なやつか?
ごくり、と喉を鳴らし、父様の言葉を待つ。
もともと鋭い目つきなのにさらに鋭くしてるせいでめっさ怖い。
並の人間なら絶対に恐怖で震え上がるのに、特に様子が変わってないウィルはすごい。
あ、父様口開いた!
「貴様、レイラと一緒に寝ただと!?私だってここ一年ほど一緒に寝てないというのに………!許さぬ!」
シー……………ン
この時、私、ウィル、父様が連れてきた専属の執事さん、私の侍女さんの考えは一致した。
(親バカだなぁこの人!)
「と、父様?ウィルは他に寝る場所がなかったですし、私も特に反対しなかったので、お許し下さい。あと……………今度は、父様母様と一緒に眠りたいのですが、よろしいでしょうか?」
さあ、これで怒りは収まるのでしょうか?
でもなぁ………いくら愛娘といえど、この程度で収まるわけが………
「あぁ、許そう。レイラ、使用人の扱いはしっかりするんだぞ。それと今夜、私と母様の寝室に来なさい。」
あった!どんだけ親バカなんだよ!
そういえば昔から一番甘やかしてきたの父様だったなー…………
おかげでレイラはとんでもなく我が儘に育ってしますよ。半分以上父様のせいですよ。恐らく。
あ、そういえば来てくれた執事さん侍女さんほったらかしだった。
「二人とも、お騒がせしてすみません。もう大丈夫ですので、仕事に戻って下さい。父様、心配してくれたのはうれしいですけど、これから仕事があるでしょう?あまり執事さんを困らせちゃだめですよ?」
シ…………………ン
そう言った途端、部屋の空気が凍りついた。
え、私なんかまずった?
不安になって侍女さんと執事さんを見たら私まで凍りついた。
二人とも、何で泣いてんの!?
ブックマークがついている事に興奮し、すぐに書きはじめました。
ブックマークつけて下さった方、本当にありがとうございます!
正直誰も読んでくれてないだろうなーと思っていたので、めっちゃ嬉しかったです!
感想などいただいたら調子に乗ります!
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