第十二話
さあ、ただ今我が家の訓練場。
刀の訓練を祖父様にしてもらうよ!
といっても、今私は素人なので、基礎トレーニングが主だけど。
でも待ちに待った訓練!私の命のため、頑張ります!
「まずは体力をつける事じゃな。レイラは今まで引きこもっていたから、通常の子供より劣っている。体力をつけないと、武器は持たせんぞ。」
「はい!」
「じゃあ手始めに敷地周辺十周!」
「じゅ……!?」
うちの敷地学校のグラウンドより広いのに!?
手始めじゃないよ………。祖父様スパルタ………。
でも、今まで引きこもりだった私にはキツイが命に比べれば安い!
「やらせていただきます!」
「よし!それでこそわしの孫!」
やってやるー!
「ゼー、ハー、ゼー。」
き、キツイ………!
予想はしてたけど、本当につらい。
やっぱ前世の体力までは引き継がれないよね。
「ゆっくりでも良いから絶対に止まるな!」
「はい………!」
ただ今五周目。ようやく半分まで来た。
止まらないってのも結構大事なこと。精神を鍛えるのに必要だと前世に教えて貰った。
だから絶対に止まらない!
「や、やってやるー!」
「お、終わったー!」
十周完了!
長かった。本当に長かった。
こんなにつらいのは二度目の人生初だよー!
「まだ終わっとらんぞ。」
おぉ………?
「え………」
「次は筋肉。スピード重視ならそこまでつけなくても良いが、少しはつけた方が良いぞ。レイラはなよなよしとるから調度良い。」
「え?」
「腕立て、腹筋共に五十回。頑張るんじゃぞ。」
「え!?」
まだあるの!?
もうへとへとなのにー!
祖父様スパルタ!
ぐっ、しかし、やらねば強くならない………。
「ああもう!やってやろうじゃないですか!祖父様、ちゃんとカウントして下さいね!」
その後練習メニューを全てやりきった私は屍のようになった。
「よく頑張ったなレイラ。このわしの訓練についてくるとは、なかなかの根性じゃ。お前は見込みがあるぞ。明日から毎日同じ事をするぞう。」
「イエッサー………。」
まあ数をこなしたらなれると思うしね………。
「お疲れさま。」
「ん………?ウィル?」
「こんなところで寝転がったら駄目だよ。ほら、手。」
「ありがとう………。」
ウィルに手を借りて立ち上がった。
いつの間に来たんだろう。暗殺者とかしてたし、気配消すのは得意なのかな?
ウィルは私を立たせた後、祖父様に向き直った。
「お初にお目にかかります。レイラ様の執事のウィルと申します。未熟者ですがよろしくお願いします。」
おお、凄い。完璧じゃんウィル。
祖父様も完璧な振る舞いに感心したような声を上げる。
「わしはアクロイド家先代当主のブレントンじゃ。こんなに小さいのに執事とは、有能なんじゃな。」
「いえいえ。私はまだまだです。」
あ、ウィルと祖父様初対面だったんだ。
まあ屋敷は広いし、会ってなくても変では無いけどね。本当に屋敷広いもん。未だに行ってないところとかあるもん。
………ん?何か大事なこと聞き逃したような。
…………………………はっ。
「ウィルが執事!?」
「うん。さっき出世した。」
さっき!?
さっきって私がセシルの家に行ってた時だよね?
「何でそんな大事なことさらっと言っちゃうのさ!」
「別に特には意識してなかったけど。」
「心の準備とか無いの!?」
「そんなの無いよ。」
……あ、そうなんですか。
………うん。何か、ウィルの無表情を見てると騒いでるこっちがいたたまれない気持ちになってくるね。
「ま、まあとにかく、出世おめでとう。ウィル。これからもよろしく。」
「フフ。うん。よろしく。夕食出来たから、来いだって。」
「!わかった。祖父様、行きましょう。」
「ああ。」
ご飯という単語に元気が出る私。
さっきまでへばってたのが嘘のようだ。
ウィルが呆れたような視線を向けてくるが、あえて無視しよう。
物事には見ないほうが良いものだってあるんだ。
それから目を背けるのは人間の悪いところだけど、時には必要だよね。
………リタ、どうなったんだろ。そういえば。
「どうかした?」
「いや…………。何も。」
その後、ご飯を食べてお風呂に入り(侍女さんが手伝おうとするのは記憶が戻ったあと全力で断ったから一人で入る)部屋に戻って一息ついていたらリタがひっそりと部屋の奥にいたので軽くひびった。
………リタのこと、克服しなきゃなぁ。
今回は祖父様スパルタ訓練とウィルの出世でした。
執事になるのって、出世ですよね………?
次回で五歳編が終わる予定です。番外編を入れるつもりなので、リクエスト等ありましたら、ご意見お待ちしています。