第九話
(前回のあらすじ)
ちょっと、セシルん家いってくるね!
さあ、あっという間に次の日です!
腹黒セシルの家にお邪魔します!!
と、その前にウィルにご報告。
「ウィルウィルー!」
「レイラ、朝っぱらから騒がしいね。」
ああ!セシルの嫌みを聞いた後にウィルの嫌みを聞くとありがたみを感じる!
ウィルのはまだ優しさがある。セシルは優しさ皆無。
それよりそれよりっ
「私も訓練できる事になったよ!」
「へえ、頑張ったんだね。」
「祖父様が援護してくれたおかげでね。」
祖父様ありがとー。
「祖父様って、昨日から滞在してるっていう先代のこと?」
「そうそう。今日の用事片付けてから訓練してくれるんだって。木剣も今日届くから。」
「そっか。ところで、用事って?」
そう。こっちも報告しようと思っていたところだったのだ。
「今日の昼から商会会長のご子息に会いに行くの。だから、お昼はいらないって伝えておいて……ってどうしたの?」
ウィルが固まっていた。
どうしたんだろ。
「………ご子息?」
「うん。昨日武器見てたときに運悪く出くわしちゃって、是非姉に会っていけと。私の滑稽な姿で姉はさぞ笑い転げるだろうからってさ。本当最悪な奴だった。」
思い出して腹が立ってきた。
「わざわざ行く必要あるの?」
ウィルは不機嫌そうだ。ほんとどうしたんだ?
「うん。ちょっと気になる事があってさ。多分短時間で済むよ。それよりウィル、どうかした?」
「………ううん。何でもない。」
「…?そう?それなら良いけど。あ、そろそろ行かなくちゃ。じゃあね、ウィル」
「うん。いってらっしゃい。」
微笑んで見送ってくれたウィルに背を向け、走った。
「………馬鹿だなぁ、僕。他の男のことよりも、僕のこと優先して心配してくれただけで、こんなに揺さぶられるだなんて。………何時から、こんなになってたんだろ………?」
その呟きは、誰かに届く事はなく、風にさらわれ消えていった。
☆ ★ ☆ ★
さあ、今私は馬車の中でございます!
セシルの家に着くまで、もう少しです。
同行してくれるのは、リタです。ええ。お気づきかもしれませんが、私の悪癖が暴露されたあの一件の侍女です。最早あの事件は黒歴史ですよ。
「レイラ様、今日もお美しいですわ………。」
「……ありがとうございます。リタのコーディネートは何時も完璧ですしね。」
「いいえ。お美しいのはレイラ様です。私はただ、レイラ様の美しさを引き立てるに相応しいものを選んだだけですわ。嗚呼、レイラ様を前にすると、どんな美しい宝石もくすんでしまいます………。」
………そんなことはないと思うが。
最近の悩みは、彼女が新たな扉を開こうとしている事だったりする。
………止めなければ。前世の二の舞になる。
もう遅いだなんて、思っていない。思ってはいけない。
「到着致しました。」
「あ、ありがとうございます………!」
た、助かったぁ!
運転手さんありがとう……!
「ようこそ、レイラ。歓迎するよ。」
セシルが出迎えしてくれた。
リタから逃げられた事と、セシルを見た事で私の気分はプラマイゼロだ。
「さあ、どうぞ。」
さりげなくエスコートするセシル。
「へぇ、様になってる。」
思わずそう言うと、セシルはニヤリと笑った。
「お褒めに預かり光栄です。僕なんだから当然でしょ?」
そして指先に口づける。
「………お前、私をからかおうとしても無駄だぞ。」
「ハハッ。まあそうだろうと思ったよ。………って、どうしたの?顔色悪いけど。」
「い、いや、別に。」
視界の端で歯ぎしりしていたリタなんて見ていない。見ていない。見てはいけない。
「ちょっとこの部屋で待ってて。姉さん連れて来るから。」
「ま、待って………!」
リタと二人っきりにしないで………!
もう涙目ですよ。私本気ですよ。
「………本当どうしたの?今日は。」
セシルは苦笑して頭を軽く撫でてくれた。ありがとう。今は君の優しさが身に染みる。
「ねぇ、姉さん呼んできてくれない?」
しかも従者の人に頼んでもらった。
君も姉さんを呼びたかっただろうに。ごめんよ。
「本当、ごめん………。」
「気にしてないよ。友人のためなら、これくらいどうってことないさ。」
「ありがとう…。」
友人って、今友人って。やった!初友達ゲット!
「………っ!」
「?どうした?」
鬼の形相で拳を握っていたリタなんて見ていない見ていない見てはいけない。
「セシル様、お連れ致しました。」
「うん。ありがとう。姉さん、僕の友人、レイラ・アクロイドだよ。」
さあ、どんな人だ………?
「レイラ・アクロイドです。弟さんとは、親しくさせていただいております。」
「まあ、随分と可愛らしいお方ね。」
現れたのは、赤髪に空色の瞳の美少女。
確か、姉といっても数ヶ月くらいしか違わないから私やセシルと同い年だったはず。
セシルとよく似た瞳の、優しそうな人に見える。
こんな人が、セシルをイジメていたなんて到底信じられない。
「カミラ・オールストンです。弟がお世話になっています。是非、私とも仲良くしてくださると嬉しいですわ。」
さて、私は彼女にある疑惑を抱いているのだが、どう確かめよう。
まさか、馬鹿正直に聞く訳にもいかないよね。
貴方は、転生者ですか、なんて。
実はこれから更新ペースが遅くなるかもしれないというのに、新しい連載小説を書きはじめてしまいました、すみません!
よろしければ、新しく始めた「転生したら隣人が魔王でした」も読んでくだされば嬉しいです。
また転生ものかよ、と思った方ごめんなさい。私の個人的趣味です。
とにかく、どちらもまだまだ続けるので、よろしくお願いします!