第一話
処女作です。
文章力ゴミクズレベルですが、どうぞ見てやって下さい。
皆さん、一度は見たことがあるのではないだろうか。
転生したのは前世でプレイしたゲームの世界!記憶を頼りに、フラグをへし折ろう!
といった感じの物語を。
私はある。結構好きだった。同じ体験したい!とも考えていた。
そして偶然にも、私は前世の記憶を取り戻し、この世界が以前プレイした乙女ゲームの世界だと知ったのだ。
中世ヨーロッパのような舞台では、魔法、精霊、魔族、神などのファンタジーな要素が沢山あった。
王道ファンタジーが大好きだった私の好みにドンピシャな乙女ゲームは、一番のお気に入りだった。
そこへ転生できるというのは実に嬉しいこと、何だけど。
私が悪役ポジションというのは勘弁してほしかったなぁ………。
記憶が流れ込んできて真夜中にも関わらず目を覚ましたのが二分前。
現状を理解し、何で悪役!?と憤慨したのが一分前。
転生しちゃったものは仕方がないし、どうにか頑張ってはみよう、と自分を納得させてはみたが、まだイライラしてたのが数十秒前。
ヒロインなんてものじゃなくてもいいけどせめてモブにして欲しかったと考え始めたのが十数秒前。
暗殺者に襲われて、もう悪役でも何でもいいから命だけは………!と思ったのがおよそ三秒前。
そう、私は今暗殺者に絶賛襲われ中。
ついでに現実逃避中。
「君は、レイラ・アクロイドで間違いない?」
暗殺者がベッドの上で横たわる私の首筋に刃物を当てながら問うてくる。
その感触で意識を現実に戻したが後悔した。
私は紛れもなくレイラ・アクロイドです。
でもこれ是と答えた瞬間、問答無用で切られるタイプですねわかります。
「貴女に教える義理はありませんことよ?」
嘲笑とともに言ってやったら、
「答えないなら答えないで殺すけど」
と言われてしまった。
くっそ逃げ場がねぇ!
「あら、いいんですの?貴女の一存でそんなことしてしまって」
黙る暗殺者。
「もし私がレイラ・アクロイドでなかったら?全く別の人間だったら?本物を仕留めるためのリスクが高まって、貴女が苦労することになるのでは?。別の暗殺者を雇われるにしても、せっかくの美味しい仕事がなくなるわよ?」
恐怖で凍りつきそうな思考をどうにかうごかしてカマをかけた。
もし、目の前の人物が相当の実力を持っていたり、ただ殺すことに喜びを感じているような人だったらカマかけは失敗と言えるだろう。即刻処分コース行きだ。
現在レイラ・アクロイドは五歳。ゲームが始まるのはヒロインが十六歳のとき。ヒロインと同い年のはずなので、それまでは生きているんだと思う。というか思いたい。
……そういえば冷静になってみると、暗殺者さんはかなり小さい事が分かる。同い年ぐらいか?
「………ふーん。五歳児にしてはまあまあ頭良いみたいだね。気に入ったよ。」
「…………ソレハドーモ。」
まずい。多分カマかけたのばれてる。
落ち着け、自分。相手は今油断してる。切り抜けるなら今だ。
カウントダウン、スタート!
3
「まさか貴族の箱入り娘、しかもこんなに小さいのにカマのかけかたを知っているってのは予想外だったな。」
2
「お褒めにあずかり光栄ですわ。」
1
「あとこんなに生意気って……!?」
まず刃物を奪う。
相手が怯んだ隙をつき、ベッドに身体を押さえ付け刃物を当てる。
私は子供だが、こいつも子供。体重のかけかたに気をつければ自由は奪える。
「………………………………やられた。完全に油断した。凄いね、君。」
顔はフードでみえないが、多分始めて笑ったと思う。
だから私も笑った。ニヤリ、と。
「ありがと。」
「………そっちが素か。」
まぁ素というか、前世の人格が混ざった結果なんだけど。
暗殺者はしばらく、私の隙をつこうとしていたようだが、気を緩める様子がないことを確かめると、諦めたように力を抜いた。
「はぁ、降参する。どうぞ、僕のことは好きにして。護衛に引き渡すなり、ここで殺すなり。」
なかなか潔いな。もしかしたら、そこまで自分のことに執着していないのか?
気になったので、ちょっと質問。
「君、何でもいいから、大切なもの、ある?」
私がそう聞くと、しばらく黙り、やがてぽつりと口にした。
「…………あったけど、今はもうない。」
「じゃあ、今は無いものと考えていいんだね?」
「…………………………。」
無言は肯定としよう。
「じゃあ探してこい。」
「………………は?。」
満面の笑みで言ったであろう私にむかって、「は?」にこいつ何言ってんだ?的なニュアンスをつけて言う暗殺者。
「私と同じくらいの年の君が大切なものがないなんてこと言うなんぞ十年早いね。」
すると、暗殺者は不満そうに言った。
「じゃあ、君は大切なものあるの?」
愚問だね。
私は自信満々に頷く。
「へー。じゃ、何?」
どうせろくなもんじゃないよな、と副音声が聞こるのは気のせいだろうか。
「それは」
一拍おく。
「自分だ!」
シーンと静まり返る。なんかおかしなこといったか?
たのむから何か言ってくれ。精神へのダメージがじわじわくる。
「ぷっ」
ふと、声が聞こえた。
「は、ははは、あはははははははは!」
笑い出す暗殺者。思わず引く私。
何なんだ、急に。てか笑いすぎて息できてないぞこいつ。
そして笑い続けること数分。
「はー、はー、ははっ。」
ようやく笑いが収まってきたようだ。
「面白い。本当面白い。」
ウケを狙っていたわけでもないので嬉しくもなんともないんですけど。
「こんなに堂々と自分が大切って言った人初めて見た。」
結構いそうだけどなぁ。
「そうだ。君、大切な物見つけろって言ったでしょ?」
「…………まぁ、言ったけど?」
顔は見えないが、こいつ今笑っている。
だって、声が笑ってるもん。怖い。今ろくでもないこと考えてるぞこいつ。
「だったらさ、一つお願いを聞いて欲しいんだけど。」
お願いが命令に聞こえる。
聞いたら後悔するぞ!!やめろ!と本能が叫んでいる。けど、
………一応聞こう。
「僕を君の使用人にしてよ。」
後悔した。聞いたら後悔した。
「大切な物見つけるのとどう関係あるの?」
逃げ道を探る。なぜならこいつを近くに置いたらどんどん精神を削られてゆく気がするから。たぶん毒舌だし。言葉のナイフで傷つけられる。
「君といると見つけられる気がするから。大切な物。何でもするよ?武術も魔術もそこら辺の人間には負けない自信はあるし、護衛とか。暗殺の依頼も受ける。」
………………………そこまで言われると断れないのが私。
多分敵意はないし、大丈夫か……………?
「…………………分かった。父様に頼んでみる。」
でもこのままじゃこいつに負けた気がするので、条件をつける。
「ただし、十年後の今日、大切な物は何か聞かせてもらうからね。適当じゃ許さん。」
「うん。いいよ。」
あっさり頷かれた。
いいのかよ。好きな人とかばれるぞ?
「それで君の傍にいられるなら安いもんだよ。」
……なんだろ。この敗北感。
多分勝ち負け気にしてる時点でこちらの負けだとは思うけど。
「そういえば自己紹介がまだだったね。」
そーいえば。
「私、君の性別すら知らないよ。」
君で統一してたし。
「え、そうなの?男なんだけどわかんない?」
「子供の区別なんて着てる服くらいだもんね。」
それもそうか、とつぶやく彼。
「これから長い付き合いになるんだし、初めはきちんとしないとね。」
君、出会ってすぐにわたしに襲い掛かったこともう忘れたのか?初めは印象最悪だったよ。すでに失敗している。
「じゃあ、僕から」
と、彼はフードを取った。
月明かりに照らされた髪は白に近い銀色
瞳は深海の色
整った顔立ちは将来とんでもない美形になりそうだ。
「僕はウィル。孤児院出身だから苗字はないよ。好きなものはこれから探していく予定。よろしく、ご主人様。」
容姿、名前、出身。
それらから、衝撃的事実が判明してしまった。
こいつ攻略対象じゃん!
嗚呼、平穏が遠ざかっている。
アドバイス等は、できるだけオブラートに包んで………いや、
正直に、包み隠さず、お伝えください!
………でもちょこっとだけ、包んでもらえるとありがたいです。