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短編集

田舎の私と都会の彼女

作者: うぃんてる

童話パロ企画参加作品。

私には都会の大学に進学した親友がいる。しばらくはお互いに新しい生活に慣れるのに精一杯で会うことはなかったけれども定期的にメールのやり取りはしていた。


地元の大学に進学した私は幼なじみの彼と同じ大学、同じ学部でお互いの両親の許可も貰いささやかながらも同棲生活を始めていた。都会の彼女も彼氏が出来たようで、お互いに幸せいっぱいなメールを送りあっていた。


お互いに二年生に無事進級し生活も勉強も落ち着いた頃に彼女から電話が来て、久しぶりに流行りの店で美味しい食事でもしながら二人だけで会わないか、と上京のお誘いがやってきた。散々メールで都会のきらびやかな生活を教えられていて少し羨ましかったので、心配する彼を説得して日帰りだからと安心させて次の日曜日に遊びに行く事にした。


『久しぶり、元気してた?』

「元気、元気。……ちょっと太っちゃったけど」

『あはは……。私はバイトと勉強で忙しいから太る余裕もお金もないよ』

「同棲してるんだっけ?あいつと。昔から仲良かったもんね、あんたたち。お熱いことで」


駅前で無事合流して道すがらウィンドウショッピングしながらお喋りしているとチャラチャラした軽薄そうな自意識過剰気味の二人組にナンパされてしまった。

しつこく言い寄って来るばかりか勝手に手を握るわ肩を抱こうとするわでかなり嫌な気分にさせられたけれども、幸いにして通りがかった巡回中のお巡りさんに助けを求めて難を逃れる事ができた。


「ごめんね、大丈夫?」

『う、うん。大丈夫……。こっちはあんなにしつこいの?』

「あそこまで酷くはないけど、しょっちゅうかな……ひとりだと」

『そっかー。あんた、綺麗だもんね。ちゃんと彼氏に守ってもらいなよ?』

「うん、そうしてる。さ、混み始める前に行こっか?」

『うん、行こ行こ!』


気を取り直して私たちはお目当ての美味しいと評判なレストランに向かうと既にそれなりに並んではいたけれど、あまり待たずに席に着く事ができた。


『うわー、パスタの種類が豊富だねー?』

「うんうん。ここのパスタは本当に美味しいの。……だから少し太っちゃったんだよね」

『え?』

「私の彼氏、ここでバイトしてるのよ」

「やぁ、いらっしゃい。彼女が例の?」

「うん、高校の親友だよ」

『初めまして』

「初めまして。今日はゆっくり楽しんでね」


そういって彼女の彼氏は仕事に戻って行った。


『成る程ね。幸せ太りってやつかー』

「えへへ……♪」


それからは注文して運ばれてきた料理に舌鼓をうちながら近況やお互いの彼氏の惚気話、勉強やサークルなどの話に花を咲かせ、彼女の彼氏が奢ってくれたデザートを食べていると招かれざる客がやってきた。


「あっれー?さっきの彼女たちじゃーん!」

「やー、偶然だねー。やっぱり俺たちと縁があるんじゃない?これからどこ行くの?」

「何々、この子たち?お前ら振られたのって。可愛いじゃん。よーし、カラオケ行こうぜ、カラオケ」


さっきのチャラチャラした軽薄二人組に追加がされて私たちの席に集まられてしまい、店内は騒然としたばかりか、一気に注目されてしまった。


「お客様?他のお客様の迷惑になっていますので申し訳ございませんが……退店していただけませんか?」

「ンダコラ。俺たちは客だぜ?すっこんでろ、優男」

「……退店していただけませんか?」


騒ぎに気が付いた彼女の彼氏がお店の他の店員さんを引き連れて私たちとの間に割り込んでくれて、男たちを追い出しにかかりやがて興醒めしたのか捨て台詞を吐いて退店して行く男たちを見ながら私はホッと溜め息をつく。


「なんか、今日はホントごめんね」

『ううん、あなたのせいじゃないもの。謝る必要はないわ』

「そうかもしれないけれど……。でも、気持ち良く帰って欲しかったのに」

『やっぱり私にはこっちの生活は無理だね。地元の落ち着いた生活が似合ってるもん』

「……そうかも、ね。私も彼がいなかったら潰れていたかも。楽しいばかりじゃないから」

『今度は彼氏さんと地元に息抜きにおいでよ。歓迎するから、さ』

「うん、ありがとう。……帰りは駅まで彼と送るよ」

『……ありがとう』


都会の生活は憧れていたけれどわたしには向かないみたい。彼女は支えてくれる彼氏がいるからなんとかやっていけるみたいだけれども。

……そう、私は愛しの彼が待つ地元へ帰る電車に揺られて思い耽っていたのだった。

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