プロローグ
そこはまるで地獄だった。
辺りには煙が上がり、地面にはクレーターが何か所も出来ており、魔物の死体が何十、何百万と溢れていたが、奇妙な事にそのどれもが首から上がきれいに切られていた。
戦場の中心には魔物を率いていた魔王と呼ばれる男と全身返り血まみれのとある男が向かい合って互いの心臓を貫いていた。
「ぐふぅ何故だ!?何故それほどの力を持ちながら貴様は人の味方をするのだ。勇者でもないのに貴様には全くと言っていいほど関係ないだろう!!!!!」
魔王は苦悶の表情を浮かべ、血を吐きながらも男に問いかける。
男は自身の心臓が貫かれている事などお構いなしに笑って答える
「かっかっか、ゲホゲッホ、確かに俺は勇者でもなんでも無いただの剣闘士だ。」
「ならば何故だ!?奴隷よりも惨い扱いを受けて来た貴様が人の味方に成るなど・・・理解できぬ」
「答えは至って単純だぜ。それはな魔王お前が強いのがいけないんだ。つえーやつを見たらついつい挑んじまう性格なんだわ俺は、あと誤解しているようだが俺は誰の味方にもなりゃしねーぜ。あえて言うなら強者の敵だ。」
「そ、そんな理由で!?認めん、認めんぞ!!生まれ変わったら必ず貴様の魂を見つけ出して打ち砕いてくれるわ」
「ほぉ~来世でも俺と遊んでくれるのかい?こいつぁ楽しみだねぇ~期待しないで待ってるぜ。」
魔王は男にそれだけ言うと地面に仰向けに倒れた。
支えを失った男もそのまま地面に仰向けに倒れて空を見る。
「かっかっか魔王が死んだからお天道様がすぐに顔を出しやがったぜ。」
その言葉を最後に男は息を引き取った。
そのあととある王国の軍団が戦場にやって来たが、戦いは終結していた。
何か無いかと部下に辺りを捜索するよう指示をだし、しばらくすると、魔王と男の死体を見つけたと部下から報告があり、軍団の将はある事を思いついた。
そうだ目撃者は居ないのだならば証拠を消しさえすればこの功績はすべて我らの物になる
そこからの行動は速かった。
将は部下に男の遺体を消すように命令し、この事に関しては他言しないことを言明した。
これが後の歴史に語られたラギア平原の聖戦
歴史の闇に消された男を人々知らない