「私たち、ちゃんと幸せだよ」
本日もよろしくお願いします。
R15ギリギリを攻めた性描写あります。
苦手な方は注意。
こうしてリーナと一緒に夜を迎えるのは、何度目になるんだろう。
宿の一室。窓からは涼しい夜風が入り、薄手のカーテンが静かに揺れている。
耳を澄ませば、隣室の物音がわずかに聞こえる。
あの子たちが寝静まるのは、まだまだ先になりそう。
私たちの関係は、隠していたつもりはないけれど、大っぴらにもしていなかった。
この国は、そこそこ自由な国だ。
誰と恋をしても、誰を好きでもいい。
……建前では、そうなっている。
でも実際には、まだ少数派。
冒険者の世界でも、恋人同士であることを隠す人たちは少なくない。
それが同性同士なら、なおさらだ。
昔よりずっとマシ。
それでも、“普通じゃない”と感じさせる空気は、まだどこかに残っている。
私はどこかで、まだ怖がっている。
誰かに何かを言われることを。
誰かの視線に、自分の気持ちが否定されることを。
「……ミレイ」
肩に、温もりが触れた。
振り向けば、リーナがすぐそばにいて、私の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの?」
その目は、まっすぐだった。
私は、ふと目を逸らして、でもすぐにそっと口を開く。
「……とーこに付き合ってることがバレた時、驚いたの……ふつうに、話してくれたことに」
「ふつうに?」
「うん。引かれた様子もなくて、なんなら、恋バナ聞かせてくれだなんて……」
リーナが、ほんの少しだけ微笑む。
「……とーこちゃん、偏見とかないんだね~」
「そうみたいね」
ちょっと、安心した。すごく、嬉しかった。
私たちの関係を、特別扱いもせず、変だとも思わず、自然に受け止めてくれた。
リーナが「隠さない」って選んでくれたことも、今なら少しだけわかる気がする。
私はベッドに背を預けて、ふわっと息を吐いた。
「ねえ、リーナ」
「なに〜?」
「もっと……誰にも気を遣わずに、あなたのこと好きって言いたい」
リーナの目が、すこしだけ見開かれる。
言ってから、顔が熱くなった。
自分で言っておいて、恥ずかしくて、胸の奥がきゅうってなった。
でも、気配で分かった。
リーナのスイッチが入ってしまったこと。
次の瞬間には、彼女の手が私の腰に触れていた。
「……ねぇ、ミレイ。今のもう1回言って?」
耳元で、低く甘い声が囁いてくる。
「……いや」
私は布団に潜り込もうとしたけど、すぐに引き戻されて、背中からぴったりと抱きしめられた。
「ダメ。逃がさない。……そんな可愛いこと言われて、我慢できるわけないでしょ?」
「……ちょっ、リーナ……」
抗議の声すら、彼女の唇に塞がれてしまう。
柔らかく触れたキスは、すぐにもう一度。今度は、少しだけ深く。
私は唇を奪われるたびに、言葉を失っていく。
「……ミレイ、かわいい。ほんと、かわいすぎる」
その声の熱に、胸がきゅうってなる。
首筋。顎の下。頬。まぶた。
リーナの唇は、私の顔中に小さなキスを落としていく。
逃げ場なんて、どこにもなかった。
「……リーナ……!」
私の唇に、何度も、何度も、リーナがキスを重ねる。
最初はふんわり優しくて、だんだん深く、舌が触れて、舌先が絡まって――
「っ……ん、ぁ……」
息を吸うのも忘れるくらい、ずっと繋がっていた。
指一本触れられていないのに、身体がもう熱くなっていく。
このまま、何もかもとろけそうだった。
――そうして、彼女の手が、腰に触れた。
「ねぇ、ミレイ。……ちょっとだけ、お尻、浮かせて?」
わかってる。
この声、このタイミング、この目。
抗えるわけがない。
私は黙って、ベッドの上で静かに腰を浮かせる。
リーナの指がナイトウェアの裾に触れると、すべり落ちるように太もも、膝、足首へと抜けていく。
肌が露わになるたびに、夜の空気がぴりぴりと感じ取れるほど敏感になっていく。
「……次は、腕も。あげて?」
くすぐったいほど優しい声。
けれど、命令にも似たその響きに、私は素直に従う。
両腕を上げると、リーナの手がゆっくりと服をめくり上げていく。
脇をかすめる布の感触だけで、腰が小さく跳ねた。
――そして、私の背中にまわされた手が、ホックを、外す。
かち、と小さく音がして、ふわりと布が緩む。
その瞬間、すべてを見られている気がして、呼吸が浅くなる。
「……ミレイ。やっぱり、ちょっと大きくなったよね」
「リーナが……よく触るからでしょ……っ」
拗ねるように顔を背けたけど、顔が熱い。
そんな私の身体に、リーナの指が這い始める。
鎖骨をなぞって、谷間をなぞって、指先がふくらみに触れた瞬間――
「っ……!」
声を堪えて、唇を噛む。
なのに、リーナはぐっと顔を近づけて、舌先で私の膨らみを舐め上げる。
「ん、ぅ……リーナ、だめ……」
ダメって言ってるのに、リーナの舌は先端を柔らかく巻き込んで、甘く、執拗に吸い上げる。
頭が真っ白になる。
「すごく、反応してる……ミレイ、やっぱり敏感だね」
そんなこと、知ってるくせに。
「リーナ……」
「しーっ、静かにね。隣の部屋、とーこちゃんたちまだ起きてるかも」
そう言われると余計に、気持ちが高ぶってしまう。
シーツを握った手に力が入る。
でも、リーナの手が下腹に降りていくのを、もう止められなかった。
ショーツの上から、熱を感じ取られる。
「ミレイ……見て。こんなに……なってる」
「っ……! あんまり見ないで」
指が、布越しに優しく撫でてくる。
逃げられない。くすぐったい。気持ちいい。
布越しの刺激だけでもう限界なのに、指がショーツの中に入ってきた瞬間、息が止まりそうになる。
「っ、リーナ……!」
「ちゃんと感じてる……かわいい……っ」
指先がゆっくりと入ってきて、撫でるように動いて、すぐにまた抜いて――
そして、また入ってくる。
繰り返されるその動きに、腰が浮いて、喉から声が漏れてしまう。
「ん、くっ……や、だ……!」
「大丈夫。……ミレイは、声が我慢できる子だよね?」
その声が、甘い毒みたいだった。
キスで唇を塞がれる。もう限界だった。
指が、深く、優しく、けれど確実に私を掻き回して――
崩れる。
声も息も、快感も全部まとめて、枕に沈めて、私はリーナの腕の中で震え続けた。
胸も、お腹も、全部を愛でるように撫でられて、私はもう、何も考えられなかった。
――そんな私の上で、ふいにリーナの動きが止まる。
彼女は少しだけ顔を上げて、じっと私を見下ろした。
その目が、いつになく熱を孕んでいて、呼吸もほんの少しだけ乱れている。
言葉を切って、リーナは自分の胸元に手をやった。
焦るように、けれど丁寧にボタンを外していく。
ひとつ、またひとつ――ナイトウェアが緩んでいき、布の隙間から、白い肌が覗いた。
月明かりの中、さらされたのは、私より少し控えめな胸。けれど、その形はまるで彫刻のように美しく、白い肌にうっすら立った先端が、恥ずかしいくらいくっきりしていた。綺麗すぎて、目を逸らしたくなる。なのに、ずっと見ていたくなるほど、愛おしかった。
それでもリーナは、照れ隠しもせず、まっすぐ私を見て、そっと笑った。
そして、私と同じく何も纏わない姿になった彼女は、そのまま私に覆いかぶさる。
もう何回目かわからないくらい、私はリーナに溶かされていた。
ベッドの軋む音。肌と肌が重なる音。情けない水音が恥ずかしいくらい部屋に響いて――
それでもリーナは、止まってくれなかった。
「リーナ、も……だめ、ぅ……っ」
「まだ、いけるよね?」
意地悪な声。
耳元でささやかれて、喉の奥がぎゅっと詰まった。
応えたら、もっと深く溺れるってわかってるのに。
「声……出したら、とーこちゃんに聞こえちゃうよ?」
そう囁いたリーナの唇が、私の胸元をなぞる。
もう、からだの奥まで蕩けそう。
「リーナぁ……ほんと、ばか……」
あまりにも、気持ちよすぎて――私はリーナの背に手を回して、指を立てた。
ぎゅっと爪を食い込ませる。これくらい、やり返さないと気が済まない。
「……ミレイ、可愛すぎ」
唇が重なる。
最初はそっと。次第に、何度も、何度も。
舌先が触れあい、絡まり、口の中が熱くなっていく。
肌と肌がすれる音が、夜の静寂に混じって、はっきりと聞こえる。
息を殺すたび、唇が離れる湿った音が、耳に残る。
声が出せない分、音だけがふたりを支配していた。
そして――
キスが、ひときわ深くなった瞬間。
リーナの身体がぴくりと震えた。
「っ……ん、んんっ……!」
息を飲み込むような声。
唇を塞いだまま、喉の奥がふるえる。
それは――
キスだけで、リーナが甘く達した証だった。
「……え、リーナ……」
顔を離した彼女の目が、涙で少し潤んでいた。
その顔が、どうしようもなく綺麗で、ずるくて、愛しかった。
「……ミレイが、可愛すぎるから……っ」
リーナが満足げに笑って、私の太ももをぐっと開かせる。
次の瞬間――唇が、敏感なそこへ。
思わず、シーツをぎゅっと握りしめる。
「やっ……そこ、だめ……っ!」
舌が、ねっとりと這う。
震えるくらい柔らかくて、でも逃がしてくれない。
ゆっくり、何度も何度も、舌先が敏感な部分を撫で上げる。吸いついて、飲まれてしまいそうになる。
「んんっ……リーナぁ……っ!」
声が漏れるたびに、リーナの動きは深くなっていく。
腰が浮いて、何もかも投げ出してしまいたくなる。けれど、隣の部屋のことが頭の隅をかすめて、声を殺すしかない。
そのもどかしさすら、リーナは愉しんでいるようだった。
「声、抑えて。隣、聞こえちゃうよ?」
ぬらぬらと舌が這う音に混じって、くすぐったい声が降ってくる。
わかってる。わかってるのに。
「ミレイ……かわいいよ……」
その声で、完全にとどめを刺された。
頭が真っ白になる。
シーツをきつく握った手が痺れてるのに、リーナの唇は、耳元に残った吐息は、優しくて優しくて、涙がにじみそうだった。
もう、よくわからない。
どこが私で、どこがリーナなのか、ただ、ひたすらに溶け合っていた。
汗も涙も、それ以上のものも混ざって、シーツはぐっしょり濡れていた。
髪も肌も、すべてが火照って、まとわりつく感覚さえ愛おしい。
「……ミレイ」
リーナが私の名前を呼んだとき、その声があまりにも優しくて、胸の奥がきゅうってなった。
「……なに」
かすれた声で応えると、リーナが私の頬に、濡れた指で触れてきた。
「……今日、すごくかわいかった」
「……いっつも、それ言う」
「でも、ほんとに……」
「今日のリーナは意地悪だった」
私は、リーナの腕をぎゅっと抱きしめる。
その胸に顔を埋めると、しっとりとした香りがして、汗の匂いさえ、私だけのものみたいで、嬉しかった。
隣では、リーナがまだ眠っていた。
無防備に寝息を立てるその横顔が、どこまでも綺麗で、優しかった。
私は、ただ静かに、それを見ていた。
今、この世界では、きっとまだ“普通”じゃない。
街を歩くとき、手を繋ぐだけで、視線を感じることもある。
言葉にはされなくても、“おかしい”と笑う人だって、いないわけじゃない。
でも――
私たちを、「間違ってる」って誰かに言われても、もう、私は迷わない。
だって、私は知ってる。
リーナといると、呼吸が楽になること。
肌を重ねたとき、安心して眠れること。
そして、どんなに壊れそうな夜でも、彼女が名前を呼んでくれるだけで、また立ち上がれるってこと。
それは誇るべき愛の形だ。
――私たちは、ちゃんと“幸せ”なんだ。
胸の中で、そっと呟いた。
少数派でもいい。
変だの、異端だのなんとでも呼べばいい。
私はリーナと生きる。
それが私の選んだ“普通”だから。
私は彼女の腕に、そっともぐりこむ。
これからの未来を信じるように。
今日も明日もきっと、怖いことはある。
でも、こうして眠れる夜がある限り、私はきっと大丈夫だ。
遠くで鳥が鳴いた。
新しい朝が、また始まる。
私はその予感を、リーナの胸の中で聞いた。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想、よろしくお願いします。
作者本気出しました