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狼の耳としっぽ、そして私  作者: 加加阿 葵
第3章 狼の耳としっぽ、そして首都
34/97

第28話 「ガラケーで遊ぼう!」

本日もよろしくお願いします。


この話、作者お気に入りです。エニが可愛いのなんのって。

 食べ過ぎたのか、エニはお腹をさすりながら私の隣を歩いている。

 満足そうにしっぽをふりふりと揺らしている。


「お腹いっぱい」

「そりゃあれだけ食べればね」

「まんぞく」

「誕生日じゃなくたって、いつでもたくさん食べていいからね」


 なにせ、私たちには200万円あるからね!

 その言葉を聞いてエニはぱあっと顔を輝かせる。

 ほんと、エニの反応は分かりやすくて可愛い。


 部屋に戻ると、私はカバンの中から小箱を取り出した。

 エニの誕生日プレゼントとして、リーナとミレイがくれたものだ。


「とーこ、それ!」


 エニが興味津々な顔でベッドに飛び乗ってくる。

 私の隣にちょこんと座り、きらきらした目でガラケーを見つめる。


「これ、昨日もらったやつ?」

「そうそう。リーナたちが言ってたでしょ? これがあれば離れてても話せるって」

「……へえぇ」


 エニが興味深そうにガラケーをじっと見つめている。

 耳がぴくぴくとせわしなく動いている。


「じゃあ、ちょっと遊んでみようか」


 私はもうひとつのガラケーを取り出し、それをエニに渡す。

 初めて手にする魔道具に、エニは慎重に指を這わせるように触れてみる。


「ふむふむ……」

「ふむふむって」

「こういうの、初めて見る……」

「……そっか」


 私は中に入ってた説明書を取り出した。

 前世のように電気で充電とかではなく、体内の魔力を消費して使うことができるらしい。自分の魔力がなくならない限り、充電切れの心配はなさそうだ。便利!


「ちょっと離れるね」

 

 私は部屋の隅へ行くと、エニのガラケーの番号を入力して、発信ボタンを押す。

 すると、エニの持っているガラケーがぷるるるると鳴った。


「わ! 鳴った!」


 エニがびくっと体を震わせた。しっぽが驚きで一瞬ピンと立つ。


「え、えっとどうすればいいの?」

「えっと、まず開いて、緑に光ってるボタンを押して、私の真似してみて」


 私は耳にガラケーを当てて見せた。

 エニは言われたとおりに、ガラケーを開いて、私の真似をする。


「聞こえる? エニ?」

「……」


(あれ? なんか、違和感……)


 エニは神妙な顔をしている。こちらの声が聞こえた様子がない。

 私は片方の手で口元を覆いながら、何回かエニのことを呼んでみたが、聞こえていないのだろう。すんごい顔して首をかしげている。


「……これ、壊れてる」


 エニが困惑した顔でガラケーを差し出してくる。


「……いや、さすがに新品だし壊れてないと思うよ?」

「でも、声が聞こえない……」


 ――あ。


 エニの耳は頭の上にある。

 つまり、普通の人間の耳の位置ではない。私の真似をして、人間の耳がある場所にガラケーを当てているから聞こえてなかったんだ。

 

 私は堪えきれずにぷるぷると震えながら、こっそり笑みをかみ殺した。

 私はゆっくりと言葉を選びながら、エニの手からガラケーを受け取る。


「ごめん、エニ。ここスピーカー部分を耳に当てないとだから、エニの耳は頭の上だったね。そっちに当ててみて」

「……おう」

「おう?」

 

 いつものエニらしくない返事に思わず笑みがこぼれる。どういうテンションなんだろう?


 多分、初めてのことだらけで動揺してるんだな。

 そして、もう一度距離を取り、エニは頭のてっぺんの耳にあてた。


「……エニ」


 エニの神妙な顔がぱぁっと明るくなった。尻尾がぶんぶんと揺れている。

 

「聞こえた!」

「こういうので話すときはもしもしって言うんだよ」

「……もしもし」

「もしもーし、とーこだけど」

「……知ってる」


 頭の耳にガラケーを当ててるエニが可愛すぎる。口の位置が少し遠いから、声は少し小さいけど、問題なく会話ができる。

 私たちはそのまま同じ部屋にいるのにガラケーで会話を続けた。


「ねえ、エニ」

「なに?」

「せっかく冒険者登録もしたし、明日は何か仕事してみようか?」

「……仕事?」

「うん。依頼みたいなのがギルドにあったじゃん? 簡単なやつやってみない?」

「いいよ」

「じゃあ、明日は朝からギルド行って、依頼受けてみよ」

「……お金?」

「まあ、それもあるけど」


 私は少しだけ考えてから、ガラケーの通話を切りエニの方を近づいてエニの頭を撫でた。


「エニと一緒に、何かできたらいいなって思って」

「……」


 エニはしばらく黙って、それから、ふわりと微笑んだ。


「うん。いいね、それ」


 エニのしっぽが小さく揺れその瞳には期待の光が宿っていた。

 こうして、エニの誕生日は、穏やかに過ぎていった。

 明日からは、また新しい冒険が始まる――。

 読んでくださりありがとうございます。


 ブクマ、評価、感想、よろしくお願いします。


 エニを獣人って設定で書こうって決めたときから、この話は書きたかったんだよね。

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