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狼の耳としっぽ、そして私  作者: 加加阿 葵
第3章 狼の耳としっぽ、そして首都
29/98

第23話 「アニメで見たことある!」

本日より、第三章スタートです!


書き溜めした分は毎日投稿していく予定です。今のところ15話程度たまってるので、来月中くらいまでは毎日投稿できると思います。


よろしくお願いします。


花粉やばいね。

「さあ、冒険者ギルドに向かいましょ~」


 リーナが軽快な足取りで先を歩き、ミレイが私たちの後ろをついてくる。小学生の頃の集団登校を思い出す。


「冒険者ってどんな人がいるの?」


 エニがリーナの横に並んで尋ねた。

 

「強い人もいれば、そうでない人もいるわね。でも、基本的には実力主義よ」

「ふーん……」


 エニは納得したような、していないような曖昧な表情で、歩きながら辺りを見回している。大きな建物や行き交う人々を興味深そうに見つめていて、やっぱりこの街の雰囲気が新鮮なんだろう。


 私も改めて周囲を観察する。

 首都の広い石畳の道には露店が立ち並び、新鮮な果物や香ばしい焼き菓子の匂いが漂ってくる。あちこちで商人たちが声を張り上げ、道行く人々と活発に交渉をしている。通りを走る馬車の音、遠くで響く楽器の音。どこを見ても活気がある。


(うわぁ……ほんとにアニメとかで見たことあるような光景……!)


 そんなことを考えているうちに、目の前に大きな建物が現れた。

 

「ここよ~」


 リーナが指さしたのは、堂々とした石造りの建物だった。巨大な木製の扉の上には、剣と盾が刻まれた紋章が掲げられている。その下には、『フェルゼン王国 首都レインダール 冒険者ギルド本部』と立派な文字が彫られていた。


(ギルド……! ついに来た……!)


 扉を押し開けると、中はさらに活気に満ちていた。

 天井は高く、壁には無数の依頼書が貼られた掲示板がずらりと並んでいる。大きなカウンターの向こうでは、数人の受付嬢が忙しそうに対応していた。周囲には、さまざまな冒険者たちの姿がある。


「……すごい」


 思わず呟いてしまった。

 あちこちで談笑する人、酒を片手に依頼の話をする人、装備の点検をする人……それぞれが違う目的を持ちつつも、この場所に集っている。


「なにこれ、強そうな人ばっかり……」

「ここは首都のギルドだもの。腕に自信のある冒険者はだいたいここに来るのよ」


 ミレイが淡々と答える。

 

 確かに、見るからに屈強な戦士や、魔法使いっぽいローブを羽織った人がちらほらいる。鎧をつけた大男が、片手で巨大な斧を軽々と持ち上げているのを見て、思わず「すげぇ……」と心の中でつぶやいた。

 でも、ギルドにはそういう『強そうな人』だけじゃなくて、いろんなタイプの冒険者がいた。


「おいおい、ゴブリン討伐が2000円ってどういうことだよ! こんなんじゃ飯も食えねぇっての!」

「文句言うなら高難易度の依頼受ければ?」

「ああ? お前みたいなベテランと違ってな、こっちは生きるのに必死なんだよ!」

「はいはい、うるさいわよ。ほら近所で猫探しあるから行ってきな。3000円だよこれ」


 受付嬢が苦笑いしながら、文句を言う冒険者たちをあしらっている。


(……こういうのも冒険者の日常ってこと?)


 一方で、エニは少し緊張したように私の服の裾をぎゅっと握りしめていた。


「大丈夫だよ、エニ」

「……うん」


 エニは小さく頷き、少しだけ表情を和らげた。


「あの掲示板にあるのって、全部依頼ですか?」

「そうよ~。ちょっと見てみる?」


 リーナに促され、掲示板の前に行く。

 そこには、さまざまな依頼がずらりと並んでいた。


『迷子の猫を探してください(報酬:3000円)』

『近郊の森でスライム討伐(報酬:1000円)』

『貴族の屋敷の警護(報酬:200万円・経験者のみ)』

『古代遺跡の調査(高難易度・推薦者限定)』


「え、こんな簡単そうなのもあるんだ」

「そうね。猫探しとかは初心者向けよ」

「でも、貴族の警護とかすごい報酬……」


 私は金額の差に驚いた。

 スライム討伐が1000円なのに、貴族の警護は200万円。単純に考えても2000倍の差だ。

 日本と通貨一緒だから、すんなり入ってくる。


「高難易度の依頼ほど、報酬も高いのよ。貴族の警護は、ちゃんとした戦闘経験がないと引き受けられないわ」

「なるほど……」

「さて、とりあえず受付で手続きしないとね~」


 リーナがカウンターに向かう。


「受付で討伐の証明を出せば報酬がもらえるの。一昨日に私たちが提出してるから、とーこちゃんとエニちゃんが報酬をもらうだけになってるわ~」

「ありがとうございます!」

「あと、冒険者の登録をするんでしょ? 旅をしていくなら登録しておいて損はないわ。依頼も受けられるし、ギルドの支援も受けられる」


 私はちらっとエニを見る。

 エニはとくに迷うこともなく、小さく頷いた。


 カウンターに向かうと、くるんとした赤毛の受付嬢がにこやかに微笑んだ。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルド・レインダール本部へようこそ!」

 読んでくださりありがとうございます。


 ブクマ、評価、感想、よろしくお願いします。

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