第23話 「アニメで見たことある!」
本日より、第三章スタートです!
書き溜めした分は毎日投稿していく予定です。今のところ15話程度たまってるので、来月中くらいまでは毎日投稿できると思います。
よろしくお願いします。
花粉やばいね。
「さあ、冒険者ギルドに向かいましょ~」
リーナが軽快な足取りで先を歩き、ミレイが私たちの後ろをついてくる。小学生の頃の集団登校を思い出す。
「冒険者ってどんな人がいるの?」
エニがリーナの横に並んで尋ねた。
「強い人もいれば、そうでない人もいるわね。でも、基本的には実力主義よ」
「ふーん……」
エニは納得したような、していないような曖昧な表情で、歩きながら辺りを見回している。大きな建物や行き交う人々を興味深そうに見つめていて、やっぱりこの街の雰囲気が新鮮なんだろう。
私も改めて周囲を観察する。
首都の広い石畳の道には露店が立ち並び、新鮮な果物や香ばしい焼き菓子の匂いが漂ってくる。あちこちで商人たちが声を張り上げ、道行く人々と活発に交渉をしている。通りを走る馬車の音、遠くで響く楽器の音。どこを見ても活気がある。
(うわぁ……ほんとにアニメとかで見たことあるような光景……!)
そんなことを考えているうちに、目の前に大きな建物が現れた。
「ここよ~」
リーナが指さしたのは、堂々とした石造りの建物だった。巨大な木製の扉の上には、剣と盾が刻まれた紋章が掲げられている。その下には、『フェルゼン王国 首都レインダール 冒険者ギルド本部』と立派な文字が彫られていた。
(ギルド……! ついに来た……!)
扉を押し開けると、中はさらに活気に満ちていた。
天井は高く、壁には無数の依頼書が貼られた掲示板がずらりと並んでいる。大きなカウンターの向こうでは、数人の受付嬢が忙しそうに対応していた。周囲には、さまざまな冒険者たちの姿がある。
「……すごい」
思わず呟いてしまった。
あちこちで談笑する人、酒を片手に依頼の話をする人、装備の点検をする人……それぞれが違う目的を持ちつつも、この場所に集っている。
「なにこれ、強そうな人ばっかり……」
「ここは首都のギルドだもの。腕に自信のある冒険者はだいたいここに来るのよ」
ミレイが淡々と答える。
確かに、見るからに屈強な戦士や、魔法使いっぽいローブを羽織った人がちらほらいる。鎧をつけた大男が、片手で巨大な斧を軽々と持ち上げているのを見て、思わず「すげぇ……」と心の中でつぶやいた。
でも、ギルドにはそういう『強そうな人』だけじゃなくて、いろんなタイプの冒険者がいた。
「おいおい、ゴブリン討伐が2000円ってどういうことだよ! こんなんじゃ飯も食えねぇっての!」
「文句言うなら高難易度の依頼受ければ?」
「ああ? お前みたいなベテランと違ってな、こっちは生きるのに必死なんだよ!」
「はいはい、うるさいわよ。ほら近所で猫探しあるから行ってきな。3000円だよこれ」
受付嬢が苦笑いしながら、文句を言う冒険者たちをあしらっている。
(……こういうのも冒険者の日常ってこと?)
一方で、エニは少し緊張したように私の服の裾をぎゅっと握りしめていた。
「大丈夫だよ、エニ」
「……うん」
エニは小さく頷き、少しだけ表情を和らげた。
「あの掲示板にあるのって、全部依頼ですか?」
「そうよ~。ちょっと見てみる?」
リーナに促され、掲示板の前に行く。
そこには、さまざまな依頼がずらりと並んでいた。
『迷子の猫を探してください(報酬:3000円)』
『近郊の森でスライム討伐(報酬:1000円)』
『貴族の屋敷の警護(報酬:200万円・経験者のみ)』
『古代遺跡の調査(高難易度・推薦者限定)』
「え、こんな簡単そうなのもあるんだ」
「そうね。猫探しとかは初心者向けよ」
「でも、貴族の警護とかすごい報酬……」
私は金額の差に驚いた。
スライム討伐が1000円なのに、貴族の警護は200万円。単純に考えても2000倍の差だ。
日本と通貨一緒だから、すんなり入ってくる。
「高難易度の依頼ほど、報酬も高いのよ。貴族の警護は、ちゃんとした戦闘経験がないと引き受けられないわ」
「なるほど……」
「さて、とりあえず受付で手続きしないとね~」
リーナがカウンターに向かう。
「受付で討伐の証明を出せば報酬がもらえるの。一昨日に私たちが提出してるから、とーこちゃんとエニちゃんが報酬をもらうだけになってるわ~」
「ありがとうございます!」
「あと、冒険者の登録をするんでしょ? 旅をしていくなら登録しておいて損はないわ。依頼も受けられるし、ギルドの支援も受けられる」
私はちらっとエニを見る。
エニはとくに迷うこともなく、小さく頷いた。
カウンターに向かうと、くるんとした赤毛の受付嬢がにこやかに微笑んだ。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルド・レインダール本部へようこそ!」
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