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狼の耳としっぽ、そして私  作者: 加加阿 葵
第2章 狼の耳としっぽ、そして道連れ
25/98

第22話 「えっ、首都の宿屋ってこんな高いの!?」

本日もよろしくお願いします。


2章ラスト!!


次話から幕間!!


「……首都の宿屋って、こんなに豪華なんだ」


 私は荷物をベッドの端に置き、部屋をぐるりと見回した。

 天井には柔らかな光を放つランプが吊るされ、壁には白と金色の美しい装飾が施されている。床にはふかふかの絨毯が敷き詰められ、どこを見ても清潔で、村の宿屋とは全く別物だった。


 値段も。エニにはまだ言ってないけど、財布がかなりピンチだ。


「とーこ、こっち……見て」


 エニが浴室からひょこっと顔を出し、指でこちらを招く。

 その耳がピココと動き、尻尾がふわりと揺れているのを見ると、彼女が何かを伝えたくて仕方がないのがわかる。


「なあに?」


 エニに促されるまま浴室へ向かうと、そこには広々とした浴槽が鎮座していた。

 壁には美しい彫刻が施され、漂う湯気すらも高級に見えた。


「……すごいね、こんなお風呂初めて見るよ」


 私が感心していると、エニは浴槽の縁に手を置きながら、ちらっとこちらを振り返った。


「……入ろ?」

「え、ちょっと待ってよ。まだ荷物も整理してないんだし」

「荷物、後でもいいでしょ。」


 エニはそう言って、私の袖を軽く引っ張る。その仕草はどこか控えめだけど、浴室に興味津々な様子が伝わってくる。


「そんなに入りたいの?」

「……だって、珍しいから」


 小さく呟く彼女の声には、期待と恥じらいが混ざっている。


「じゃあ、一緒にはいろ」


 私が笑いながら答えると、エニは少し満足そうに頷き、浴槽の横にちょこんと座り込んだ。尻尾もふわりと揺れ、どこかほっとしたような雰囲気を纏っている。




ーーーー


 首都『レインダール』に着いたのは、闇がすっかり街を覆い尽くした頃だった。

 街灯の光が石畳を照らし、店先からこぼれる明かりが温かく揺れる。夜市が開かれているのか、あちこちから賑やかな声が聞こえてきた。


「……すごい」


 エニがぽつりと呟いた。その目は輝きを増し、尻尾が小さく揺れている。村とは比べ物にならないほどの活気に、私も圧倒されそうだった。


「ようこそ首都レインダールへ!」


 リーナが振り返り、誇らしげな笑みを浮かべて私たちに手を広げた。その声はこの場所の持つ賑やかさと相まって、胸を高鳴らせる。


「ここが……首都」


 エニは目を見開き、視線をあちこちに巡らせている。

 彼女にとって、こんな大きな街を訪れるのは初めてのことだ。もちろん私にとっても。


 城門の前には数名の衛兵が立っていたが、リーナとミレイがギルドの証を見せると、軽く頷いて通してくれた。

 

「私たちは冒険者だからね。首都への出入りは自由なんだ~。ほんとはお金がかかるけど、今回は特別!」


 リーナが振り返りながら、私たちにウインクをした。


 門を抜けた先は、夜の光に照らされた別世界が広がっていた。

 石畳の大通りには夜市の屋台が並び、果物や焼きたてのパン、串焼きの肉、スパイスの香りが混ざり合っていた。行き交う人々の笑い声が心地よく響く。


「さて、とりあえず……その鱗、討伐証明として一枚だけもらえる?」


 ミレイが軽く振り返り、私たちに声をかけた。


「討伐証明?」


 私が首をかしげると、ミレイが落ち着いた声で説明を始める。


「魔物を討伐した証拠を冒険者ギルドに提出するの。報酬を受け取るためにも必要なものよ」

「ああ、なるほど」


 私はエニに頷きかけてから、袋に入れていた鱗を取り出し、その中から一枚をミレイに手渡した。


「ありがとう。 でも、報酬はあなた達が受け取るべきよ。実際に戦ったのはあなた達でしょ?」


 リーナが軽やかに言うと、私は少し驚いた顔をしてしまった。


「えっ、いいの?」

「もちろん。私たちは証明さえあれば十分だし、報酬を渡すのはギルドからだから、明日には受け取れると思うわ」

「それなら助かるけど……本当にありがとう」


 エニも隣で小さく頭を下げて「ありがと」と呟いた。

 どれくらい首都に滞在するかわからないからお金はいくらあってもいい。


「今日はもう遅いから、宿屋に案内するね~」


 リーナが先頭に立ち、私たちを大通りの奥へと案内してくれる。


「宿屋はちょっと賑やかな場所だけど、料理が美味しくて評判のいいところよ」

「美味しい料理……楽しみ」


 エニがふわりと笑いながらリーナを見上げる。彼女のその仕草に、リーナも自然と笑顔を返していた。


「疲れてるだろうから明日はゆっくり休んで。明後日、首都を案内してあげる」


 リーナが柔らかな声で続ける。


「……案内?」


 私が尋ねると、ミレイは頷いた。


「そう。冒険者ギルドも含めて、首都を一通り案内するつもりだから。その間に君たちが知りたいことや、やりたいことがあれば教えて」

「なにからなにまで本当にありがとう」

「いいのよ。冒険者として、困っている人を助けるのは当然だから」


 宿屋に着くと、中は温かな光と香ばしい匂いに包まれていた。受付で手続きを済ませると、宿の主人が笑顔で迎えてくれた。


「旅をしている獣人さんなんて珍しいね。大歓迎だよ。ゆっくり休んでいってちょうだい」


 その言葉に、エニは少し驚いた表情を見せたが、やがて安心したように微笑んだ。


 宿の部屋で、私はエニと顔を見合わせる。


「お疲れ様、エニ」

「……うん。とーこも」


 

ーーーー


 風呂を済ませた後、ベッドに横になる。もちろんエニは私の隣に。窓の外では、まだ街の灯りが揺れている。騒がしさは少し落ち着いてきたけれど、遠くからは楽しげな音楽がかすかに聞こえていた。

 この街で、どんなことが待っているのだろう。でも、それは明日考えればいい。


「ゆっくり休もう、エニ」

「……うん」


 彼女の手をぎゅっと握り、私はそっと目を閉じた。

 

 

エニは自分が風呂に入りたいんじゃなくて、とーこに早く休んで欲しかったって感じ。エニはそんなに風呂好きじゃない。


時系列終わってるけど、エニの可愛いシーンを頭に持ってきたかった


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
とにかくエニが可愛い トーコは魔法についてもっと頭を柔らかくすべきかな
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