表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/240

Magic85 いろいろあった日の終わりに

「本当にアンジェ様は熱心に本を読んでいらっしゃいますね」


 寝る前の世話をしながら、ラジニエが話し掛けてきた。

 どうやら毎日毎日禁書区域に向かって行っている私について思うところがあるようだった。


「ええ、本はいいですよ。私には魔法の才能というより、源となる魔力がありませんから、知識で対抗するしかないんですよ。本というのはその知識を得るためには重要な手段ですからね」


 にっこりと微笑みながら、ラジニエにそのように答えを返しておく。

 今回の禁書区域での読書の目的は、王妃様の呪いを解く手掛かりをつかむこと。

 だけど、その過程で手に入る知識というのもなかなかにバカにできないものだった。

 その文章中にはさりげなく別の意味を持つ文章も張り巡らしていたりと、なかなかに頭を使うところがある。

 ひねくれた性格をしていたという禁書の著者たちであるものの、発想力にはなかなかに驚かされるというものだわね。


「それに、本を読んでいる間は、世間からの私への視線や評価を忘れることができますからね。いろんな意味で、私は本が好きなんですよ」


「そうなのですね。魔力がないという状態がよく分からないので、私にはそのお気持ちを察することはできないですね」


 ラジニエは時々失礼なことを言うものの、すべて正直に喋ってくれるのでかなり気持ちが楽である。

 人との会話がこれだけ楽しいというのも、学園で友人となったベリル様に次いで二人目かもしれないわね。

 アリエル様?

 彼女は仲良くして来ようとしているけれど、警戒は一切解いていないわよ。こないだの一件からさらに警戒をしているわ。

 禁書が持ち込まれていたスペースに唯一近付けていた方ですからね、それだけで十分怪しいというものだわ。

 ラジニエと少し話をした私は、もう寝るからといってラジニエを下がらせる。

 彼女が出ていったのを確認すると、私は早速紙とペンを取り出す。

 せっかく大量にベルフェルが読み漁ってくれたのに、その行動を無駄にするわけにはいかないもの。

 さすが私自身が読むよりもしっかりと情報を記憶している。

 その中から必要そうな情報をさらさらと紙に書き出していく。

 普通は何かしら問題が起きそうな行為ではあるが、魔力のないアンジェであればいたって問題のないことだった。

 黙々と紙に情報を書き出していく私。ベルフェルもその間はじっと黙っている。


「ざっとこんな感じかしらね」


『おう、ご苦労さん。あれだけいろいろあったのに、よく覚えているもんだな』


「記憶力は自慢だからね。次はここから有用そうな情報を引き抜いていくだけだけど……、ふわあ……」


 うん、さすがに夜が遅いからか、私は恥ずかしながらにあくびをしてしまった。

 ここで終わるのも中途半端だけど、明日からはまた学園が始まるから、寝ないわけにはいかない。さすがに遅刻だけは避けたい。


『アンジェ、さすがに寝ておけ。今日もいろいろあって疲れてるんだ。無理して倒れちゃ、それこそ意味がない。あんたは死なないだけでただの普通の小娘なんだからよ』


 ベルフェルにまで本気で心配されちゃってるわね。これだけ大きなあくびが出ているから、ここはおとなしく従っておくべきかしらね。


「ふう、分かったわよ。また明日帰ってきてからじっくり見ることにしましょうか」


『ああ、それがいい。急かしているのはおいらだが、やっぱり無茶はよくないぜ』


 もう一度大きなあくびをしている私を見て、ベルフェルも反省をしているようだった。

 いい加減眠くて倒れそうな感じだけど、さすがに今書き出した内容をこのまま見えるところに置いておくわけにもいかない。なにせ内容が内容だもの。禁書の内容なんて危なっかしくて大っぴらに置いておくなんてできないわ。

 なにぶん、禁書の内容って魔力と反応して何が起きるか分かったものじゃない。すくなくともラジニエが出入りする現状では、避けるべきことだわ。


「机の奥にでもしまっておきましょうか。箱か何かに入れて封をしておけばいいかしらね」


『ああ、それでまったく構わないぜ。鍵をかけて絶対触れないようにしておけばなおよしって感じだな』


「了解」


 眠い目をこすりながら、私は一番大きな引き出しに禁書の写しを箱に入れてしまっておく。箱の上から別のものを乗せて、とにかく外から見えないようにしておいた。眠い頭じゃこれで精一杯だわ。


「ふわぁ~……。もういい加減に寝ましょう。意識がもたないわ」


『おう、ご苦労さん。また明日頼むぜ、相棒』


「ふふっ、相棒っていう響きは悪くないわね。それじゃお休み、ベルフェル」


『おう、ゆっくり休んで明日に備えな』


 私はベッドに入って横になる。すると、もうさすがに限界だったらしくて一瞬で意識がなくなってしまった。


 とにかく明日は禁書の内容を解き明かしていかなきゃ。

 一刻でも早く王妃様の意識を取り戻して、今の生活から早く解放されたいからね。

 安全とはいえど、心が休まらない。

 この生活を脱出できるのは、一体いつになるのやら……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ