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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic81 巻き込まれる少女

 城に軟禁されてから何日か経過した時だった。


『むっ、何か感じるな』


「えっ、まさか事件だっていうの?」


 禁書を読み漁っていた私は、思わず身構えてしまう。


『正解だぜ。久々のティアローズの正式出動だな』


「げげぇ……」


『おっ、いいねえ。令嬢らしからぬ表情と言葉、たまらないぜ』


「ぐぬぬぬぬ……」


 げらげらと笑っている。

 正直言って殴ってあげたいけれど、そのベルフェルは私の左腕の見えないバングルなのよ。

 うん、殴ったら自分が痛いだけだし、ティアローズに変身した時は私自身の姿になる。

 どっちにしても殴ることは不可能だわね。


「とりあえず、問題の場所はどこなのかしら」


『王都の中だな。対象は、先日の嬢ちゃんだな。また危険にさらされるとか、あの子も十分不幸属性を持ってんな』


 不謹慎にも笑うベルフェルだ。本当にこいつ殴りたい。


「とりあえず、ガブリエラ様なのね。すぐに助けに行くわ」


 私は集中してティアローズに変身する。

 この変身はベルフェルの力を借りて行うんだけど、本当に毎回不思議な感覚になる。

 元は私の魔力だっていうから、そのせいなのかもしれないわね。


「ああ、さっさと行ってくるんだな。こっちのことはおいらに任せておいてくれ」


「分かったわよ」


 私は返事をすると、ベルフェルを禁書区域に残して瞬間移動魔法で外へと一気に跳んだ。


 やって来たのは王都の平民街のようだ。

 伯爵令嬢だというのに、結構気軽にこういうところにやって来るのね、あの子は。

 先日もそうだったけれど、一人で動くことが多いみたい。おそらくあの人さらいの一件も、そうやって一人で出歩いているところをかっさらわれたといった感じだと思われる。

 まったく、近くに跳んできたと思ったんだけど、どうやらいないようね。


「しょうがない。魔法で探しますか」


 ティアローズに変身したせいか、私は気軽に魔法を使うようになっている。

 最初から魔法を持っていたら、こんな感覚だったのかしらね。それとも、普段使えないから反動なのかしら。

 どちらにしても、ティアローズの状態だと気軽に魔法を使うようになってしまっている。これは気を付けなきゃいけないわね。

 気を取り直して探知魔法を使おうとした瞬間だった。


「キャーッ!!」


 叫び声が聞こえてきた。しかも、すごく聞き覚えのある声で。

 どうやら声の主は目的の人物のようだ。

 街が騒然とする中、私は颯爽と声のした方向へと走っていく。


 声が聞こえてきた場所にたどり着くと、そこには悪漢に腕をつかまれている少女の姿があった。

 間違いなく、先日会った少女ガブリエラだった。


「汚い手を離しなさい。そこの悪党!」


 ガブリエラの手をつかんだまま、悪漢は私の方を見てくる。

 私はその目に恐怖を感じた。


「なんだ、すげえ格好をした嬢ちゃんよ」


 恐怖とはいっても、何もこの悪漢が怖いわけじゃない。その視線がいやらしくて怖いのよ。

 そうだったわ。今の私の格好はベルフェルが言うところでは「魔法少女」とかいうスカートの短い服装だったわ。

 しかも飾りの多い服装で、私の趣味からかけ離れた服だった。


「へへへっ、俺はついてるな。こんな上玉を二人も手に入れられるんだからよ!」


 悪漢が叫ぶと、その手にはお守り付きのロープが握られていた。

 何もないところから出てきたので、この悪漢の魔法ってわけかしらね。


「いやあ、誰か助けて!」


 ガブリエラが叫んでいる。


「うるせえガキだな。黙ってろ!」


「きゃっ!」


 悪漢はガブリエラを突き飛ばすと、足にお守りのついたロープを巻き付けている。


「危ない!」


 私が叫んだ次の瞬間、どこからとも大きな袋が出現してガブリエラを飲み込んでしまった。足に絡みついたロープがそのまま袋を閉じてしまう。


「はっはっはっ、うるさくするからそうなるのだよ。その中じゃいくら泣き喚いたところで外には何も聞こえないからな」


 宙に浮いた袋の中でバタバタと暴れているのが見える。

 なんてやつ。魔法の力をこんなことに使うなんて。


「さて、せっかくだ。お前も手に入れていかなきゃな。見られたからには、無事で帰すわけにはいかねえんでな」


「くっ!」


 悪漢が私を見て舌を出しながら笑っている。まったくもって気持ち悪いわね。


「さっきの叫び声のせいで騒ぎも起きてるみたいだしな。できるだけ早く決着をつけようじゃねえか」


 腰に挿していたナイフを抜き、悪漢は私を見ながらナイフをなめている。

 見るからに気持ち悪い。

 でも、このまま逃がしてしまえば、ガブリエラのみが確実に危ない。私はどうにか男を倒そうと必死に考える。

 その瞬間、頭に何か妙なイメージが流れてきた。

 次の瞬間。


「えっ?!」


「うおっ!」


 私の体が急激に光り始めた。一体何が起きているというの。

 しばらくすると、私の服装は先程のイメージに出てきた妙な格好になっていた。


「ぐへへへへ……。これはまた素晴らしい格好だな」


 うげっ、悪漢がさらに気持ち悪くなったわ。

 どうやら私は、魔法少女の服装よりもさらに恥ずかしい姿で悪漢と戦わなければいけないようだった。

 もう、なんだってこんな目に遭わなきゃいけないのよ!

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