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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic79 禁書に夢中

 チュンチュン、チチチチチチ……。


 んあっ、もう朝になっていたようだ。

 固く閉ざされた窓の外から、鳥のさえずりが聞こえてくる。

 どうやら私は、禁書区域で読書中に眠ってしまったらしい。禁書によだれは垂れてないわよね?

 私は、机の上を確認する。

 どうやらちゃんと本を退避させてから寝落ちしていたらしい。うん、昔家で勉強していた時の反省が活きてるわね。

 私は眠い目をこすって体を起こし、大きく背伸びをする。

 こんなところで眠ってしまっていたとは、なんともやらかしてしまった感じがあるわね。


「今日は学園休みの日でよかったわ」


 つくづくそう思った。


 腕輪が光ったので、私は急いで部屋に戻る。

 結局夜に読んでいた本の内容はほとんどが吹き飛んでしまった。

 仕方ないので、もう一度本を読みに行くしかないでしょうね。

 まったく、夜中の行動が無駄になってしまったことで、私は最悪の一日を迎えてしまったようだった。


「まったく、朝やって来てみたらいらっしゃらないのでびっくりしましたよ」


「ごめんなさい。書庫で眠ってしまったようでしてね。結局内容を覚えていないんじゃ、何をしに行ったのか分からないというものです」


 ラジニエにお小言を言われながら、私は朝食を食べ終える。ラジニエは空になった器をワゴンに移していく。


「それでは、次はお昼でございますね。今度は部屋に戻ってらして下さいよ」


「はい、反省してます」


 ガラガラとワゴンを押してラジニエは部屋を出ていった。

 実は、私が戻ってきた時にはすでにラジニエは部屋の中で食事の支度を済ませていた。いつでも食べられるようにと、テーブルの上一杯に並べられていた食事に驚いたものだ。

 ちなみにだけど、食事を知らせる魔道具は、ラジニエが厨房へ出向いて支度を始める前に一度合図が送られてくる。そして、厨房を出てくる際にもう一度、合図が送られる。

 私が今日目を覚ました時の合図は、実はこの厨房を出た時の二回目の合図。

 私の部屋は実は厨房から近いので、私が禁書区域から部屋に戻ってくるよりも前に、ラジニエが部屋の中にいたというわけだった。

 使用人は待つことも仕事ではあるものの、温かい食事を持ってきてくれたし、なにより家柄はラジニエの方が上だもの。ラジニエが遠慮しなければ、私は土下座でもしていたと思うわ。まったく恥ずかしい。


「とにかく、あまり気を抜かないで下さいませ。私が見ている限り、城の中には怪しい動きがあるようですからね」


「へっ?」


 ラジニエの突然の説明に、私は困惑を隠しきれなかった。


「私はミケル殿下よりいろいろ任務を承っているんです。アンジェ様の専属メイドの件もそうでございます」


「は、初耳だわ……」


 ラジニエから聞かされたあれこれに、驚きを隠しきれない。


「嘘はいいませんが、黙っているのは自由ですからね。私とて、すべてをやすやすとアンジェ様にはお話しませんよ?」


 唇に人差し指を当てて、にやりと笑いながら話す。

 なるほど、ミケル殿下がわざわざ指名した理由がなんとなく分かった気がした。

 必要なことは黙り込んでいて、関係のないことはぺらぺらと喋る。こうした使い分けができるのが、ラジニエの強みなのだろうと。


「では、調べ物をなさるのでしたらさっさと行って下さいませ。午前中はお部屋の掃除をさせていただきます。触ってはいけないところがございましたら、なんらかの目印をつけるかテーブルにメモを残しておいて下さいませ」


「ええ、分かりました。では、支度させてもらいます」


 今日の朝の予定を確認し合うと、ラジニエはワゴンで食器を下げていった。

 まったく、なんというかやりにくい相手だわね。

 一応名目上は私が主なはずなんだけど、完全に主導権を握られている気がするわ。

 そんなこんなでもやもやした気持ちを感じながらも、私は改めて禁書区域へと向かっていった。


『くけけけ。いいようにやられてんな、アンジェ』


「うるさいわね、ベルフェル」


 朝までいた部屋に再び戻ってきた私は、学園に置かれていた本を改めて手に取る。

 ベルフェルのからかいを聞いている暇なんてないわ。せっかく昨夜本を読んでいたのに、全部吹き飛んじゃったなんてこの上ない失態だもの。すぐに取り戻さなくっちゃ。


『けけけっ、頑張りな。おいらはじっとあんたの無駄なあがきを見せさせてもらってるからよ』


 いちいち頭にくるような言い方をしないでちょうだい、この意地悪魔導書め。

 ベルフェルにいちいち苛立たされながらも、私は一冊一冊丁寧に目を通していく。

 禁書を書くような人物は、どこか捻くれている。

 ベルフェルの教えてくれた情報を元に、それこそ丁寧に一言一句一文字に至るまで丁寧によ。

 やがて、左手の腕輪が一度光る。どうやらもうお昼の時間を迎えてしまったらしい。

 だけど、私はその時何かが引っ掛かってしまい、禁書から目が離せなくなっていた。

 どうしよう、このままじゃお昼を食べそこねてしまうわ。


『おいらが代わりにお昼を食べておこうか。変身を解けば、食事もしたことのなるからよ』


「ベルフェル、ナイス。それじゃ代わりにお昼を食べてきて。さすがに二食連続だと怒られちゃうわ」


『あいよ。頼まれたぜ』


 私はティアローズに変身して、禁書とのにらめっこを継続したのだった。

 こんなことで気軽に変身していいんだっけという疑問は、この時ばかりはまったく起きなかったのだった。

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