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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic62 初めてじゃない初めてのお城

 結局、学園の図書館に置かれていた呪いについての本は、お城の禁書区域で厳重に保管されることとなった。

 そもそもなぜ学園に置かれていたのかは現時点ではわからず、学園の司書へと聞き取りを行うことになった。司書であるならば、蔵書の管理くらいはしているはずだからだ。

 結局、私がその呪いの本をすべて抱えてお城へと向かうことになった。

 何気に、ティアローズとしては初めてお城に入ることになったのだ。

 アンジェとしては二度踏み入れたお城。違う姿だと、また違った緊張感に襲われる。

 ちなみにだけど、呪いの本の魔力に乗っ取られそうになった魔法使いたちは、私たちとは別の馬車で、しかもかなり距離を取って戻ってきた。

 私が本の魔力を抑えているとはいっても、危うく乗っ取られかけたのだから距離を取るのは当然よね。

 ミケル殿下の指名した魔法使いでもこうなってしまう。まったく、呪いというのはなんて恐ろしいものなのか。

 ……こうはいっていても、私の魔力なしのことといい、ベルフェルと引き合わされたことといい、呪いの恐ろしさは私自身も体験をしていたのだった。

 私とミケル殿下、それと私に化けたベルフェルは、揃って城の禁書区域に向かう。

 呪いの本の話は国王に話をしており、事前に許可はもらっている。ミケル殿下は迷うことなく、その禁書区域に向かって進んでいる。


「ずいぶんと、お城の中でも雰囲気が違う場所ですね」


 私のふりをするベルフェルが、ミゲル殿下に質問をしている。


「ここには、王国建国以来の様々なものが厳重に封印されている。それこそ、その本のように恐ろしい魔力を持つものだってあるんだ」


「そうなのですね」


 ミケル殿下の声が、今までに聞いたがないくらいに重く感じる。

 やはり、ここはそれだけ王家にとって特別な場所ということなのだろう。

 途中から黙り込んだまま歩いていると、ミケル殿下の足が止まる。

 急に足が止まったものだから、私たちは思わずミケル殿下にぶつかってしまいそうになる。どうにか回避はしたのだけれど、一体どうしたのだろうか。


「ミケル殿下、もしかして目的地に到着されましたか?」


 ベルフェル、それ私の口調じゃないから。

 まったく、予想以上にお嬢様然として振る舞ってるわね。とはいえ、王族相手ならこれくらいでもまだ足りないのかしらね。

 どこか心が痛くなる気が……って、なによそれ。

 妙な感覚を覚えて、非常に嫌な感じがする。


「はっ!」


 視線に気が付いて顔を向けると、ベルフェルがにやりと笑っていた。

 やめて、私の姿でそんな顔をしないで。

 後ろではこんなやり取りがされていたのだけど、ミケル殿下は正面を見たままなので気が付いていなかった。はあ、よかったわ。


「少し騒がしかった気がするが、大丈夫かな?」


「はい、特に問題ございません」


 ベルフェルがご丁寧に返事をする。その時にミケル殿下の表情が少し曇った気がした。まさか気付かれたのかしらね。

 いろいろと思うところはあるけれども、今はこの呪いの書を禁書区域に保管することが優先だった。


「これでよし。これで王家以外では見ることはできないだろう。側室もここなら手出しはできないからな。ただ……」


「ただ?」


「いや、ラファルならここに入ることはできるんだ。私の弟だからね。母親は側室だが、私と同じで父上の血を引いているのだからね」


 なるほどと納得のいく私だった。

 側室は正式な王家ではないので、この区域には入れない。でも、その子どもであれば王族の血が入っているので、その資格があるというわけか。


「とはいえ、ラファルを使って手に入れようとはするまい。ここの出し入れは、すべて魔力でもって管理されているからな。持ち出せば、その人物の魔力が記録される」


「へえ、それはとても便利……ですね?」


「どうしたのかな、ティアローズ」


「あ、いえ。なんでもないです」


 ふと何かが頭をよぎったけれど、ここで話す内容ではないので、ごまかしておく。家に帰ってからの方がいいわね、うん。

 ミケル殿下が気になって私の方を見てくるけれど、あまりじろじろ見ないで下さらないかしら。仮面を着けているとはいえ、私の顔立ちは自分と共通している。素顔を見られたら完全にばれてしまうだろう。

 そうなれば、一族郎党全員が死ぬことになる。それだけは絶対に避けなければならないのだから。


「そうだ、ティアローズ。ちょっといいだろうか」


「はい、なんでしょうか殿下」


 急に声を掛けられて、私はびっくりしている。一体どうしたというのだろうか。


「呪いの本の力を抑え込めるということは、浄化の力を持っているということで間違いないか?」


「え、ええ。多分……」


 ミケル殿下の真面目な態度に、私はものすごく戸惑いを感じている。

 学園で見ている限りは、殿下の印象はただのきざな男性としか見えていなかったもの。

 それがどうだろうか。今の殿下は何か悩みを抱えた、年相応の少年のように見えてくる。

 ミケル殿下の様子に、どう反応していいのか困っていると、急に殿下が頭を下げてきた。


「み、ミケル殿下?!」


 思わず叫んでしまう。本当に、どう反応したらいいのか分からない。

 これだけでも混乱しているというのに、更なる爆弾発言が飛び出してくる。


「ティアローズ、頼む。母上を、セラフィス王妃の呪いを解いてくれ」


 切実な様子で、ミケル殿下は私に頼みごとをしてきたのだった。

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