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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic5 王子との邂逅

「危ない!」


 私は馬車に近付く刺客に対して体当たりをかます。


「かはっ!」


 私が構えた盾によって、大きく弾き飛ばされる刺客。大きく飛ばされて地面に叩きつけられた刺客は、全身をけいれんさせて動かなくなってしまった。

 一方の私はちゃんと着地をして、剣と盾を構える。

 そう、私が変身した姿は重騎士だった。盾に鎧を装備して動きは悪いかもしれない。しかし、多少の攻撃ははねのけることができる。


「この馬車が誰のものか分かっての狼藉かしら」


「誰だ、てめえは!」


 私に邪魔された刺客が名前を聞いてくる。

 だけど、困った。私は正体を知られてはいけないので、本名を名乗るわけにはいかないのだ。

 しかし、その間も刺客は馬車に襲い掛かってくる。馬を放棄した護衛の騎士たちの態勢もまだ整っていない。となると、私のやることはひとつしかなかった。


「あなたたちに名乗る名前なんてないわ。強いて言うのなら……」


「ぐはっ!」


 律儀に質問に答えながら、私は刺客たちを斬り伏せていく。

 私は剣を握ったことはないのだけれど、重騎士を選択したことで不思議と体が動いてしまう。

 ひとまず馬車に近距離まで迫った刺客を全部倒すと、私は剣を刺客に向けて突きつける。


「狼藉を働く悪党どもを倒しに来た、正義の女騎士といったところかしらね」


 なんとも恥ずかしいのだけれど、状況的に相手を威嚇しなきゃいけないので頑張ってみた。うん、恥ずかしいわよ、本当に。


「ほざけっ! 野郎ども、こいつもぶっ倒してやるぞ。なかなか上玉だからな、捕らえて売り飛ばすぞ」


「へいっ!」


 残った刺客たちの半分くらいが私の方へと向かってきた。大体七人くらいかしらね。これだけ減らせれば、残りは護衛と一対一以上の状況だから、任せても大丈夫かしらね。


「さあ、来なさい。その鼻っ面をへし折ってあげるわ」


 私は刺客たちをさらに挑発する。

 結果、七対一にして私の圧勝だった。私でも驚くくらいの見事な剣捌きだった。さらにいえば、左手の盾のおかげで三人分くらいの攻撃なら楽勝で防げたのは大きかったわ。

 どうにか刺客をすべて倒し、縛り上げる。

 それにしても、この戦いの間、王子はまったく姿を見せなかったわね。一体どういうことなのかしら。


「殿下、おケガはございませんでしたでしょうか」


 馬車の前で私が跪いて声をかけると、扉が開いて中から人が出てくる。


「ああ、大丈夫だよ。助かった」


 中から出てきたのは金髪の少年だった。本来の私の年齢と同い年くらいだ。

 そう、この少年こそがこのセラフィス王国の第一王子、ミケル・セラフィス王太子殿下なのだ。

 王太子殿下をこんなに間近で見たことは初めてなので、私はつい感動で言葉を失ってしまう。


「死ねえ!」


 殿下が姿を見せたところで響き渡った声で、私はとっさに体と意識が動いてしまう。

 殿下に防御魔法をかけて上で、その前に立ちはだかったのだ。

 騎士の拘束を抜け出した刺客が殿下に襲い掛かったのだ。油断していたわ。


「往生際が悪いですね!」


「ぐはっ!」


 攻撃を盾で受けてそのまま跳ね返す。吹き飛ばされた刺客はそのまま木にぶつかって気を失ってしまった。


「まったく、油断も隙もない。……殿下、大丈夫でしたでしょうか」


「問題ない。素晴らしい動きだったよ」


 殿下に褒められた事で、私は心の中で大喜びする。


「しかし、君は一体何者かな。現れるにしては、タイミングが良すぎる」


「私は……」


 殿下に険しい目を向けられて、私は言葉に詰まってしまう。はてさて、どう答えたものか。

 ここで、魔導書ベルフェルが言っていた言葉を思い出した私は、心苦しいもののそれを利用させてもらうことにした。あと、適当な名前も考えよう。


「答えられないのかい?」


 唸っていると、殿下から更なる追及がなされていた。

 ごめんなさい、すぐ答えますから。

 悩んだ末、名乗る名前を決めた私は、剣と盾を構えて名乗り始める。


「私は正義の味方、ティアローズ。殿下の身に危険が迫っていると感じ取り、今回馳せ参じた次第でございます」


 めちゃくちゃ恥ずかしい……。

 ティアローズの「ローズ」は私の髪の毛が薔薇のような赤色だから。「ティア」は私の本名の家名である「ドロップ」からの連想よ。

 即興で考えたにはいい名前だとは思うんだけど、さすがに「正義の味方」という単語は恥ずかしすぎて、この場を今にでも去りたいところだわ。


「そうか、ティアローズ、覚えておこう」


 殿下がにこりと笑った。


「こ、光栄ですね。では、私はこれにて失礼致します。お気をつけあそばせ」


 いよいよ恥ずかしさに耐えられなくなった私は、その場から颯爽と姿を消したのだった。


 ―――


「けけけっ、これで王子様との運命的な出会いを果たしたってわけだな」


 おいらはアンジェの部屋で、活躍する様子をずっと見させてもらっていた。


「最初の危機はなんとか脱したが、これからもあんたには様々な困難が降ってくる。無事に乗り越えられることを祈っているぜ。けけけけっ」


 アンジェの様子を確認し終えたおいらは、これからのことを考えると楽しくなって笑いが止まらないってもんだ。

 さて、アンジェは魔法を使えないから、このくらいにしておかないとな。

 まっ、これからあんたの活躍を楽しみにさせてもらうぜ。

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