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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic24 脅威と便利は裏表

 黒猫と走り出した私だったけど、ひとつすっかり忘れていたことがあった。


(あれ、ここから一番近い街ってどこにあるの?)


 そう、男たちを連れて通報に行くにも、兵士たちのいる場所が分からなければ意味がなかったのだ。


「ごめん、人のいる方向は分かるかしら」


 黒猫に問い掛けると、黙ってこくりと頷いていた。

 私の意図するところは最初から分かっていたようだ。なにせ、しばらくすると街の明かりが見えてきたんだから。


「門のところで止まって。さすがに魔物であるあなたは街の中に入ったら騒ぎになるわ」


「にゃああっ!」


 分かったといわんばかりに大きな声で鳴く。街も近いのに、どうしてそんなに声を上げたのか、この時の私は理解できなかった。

 街の入口に近付くと、すでに兵士が構えていた。

 そう、黒猫は兵士たちを街の入口に集めるために大きな声で鳴いたのだ。


「と、止まれ!」


「街の中に入れないぞ!」


 兵士たちが武器を構える。

 ところが、街の入口までもう少しというところで黒猫は止まる。


「ブラックパンサーが、止まった……?」


(あ、この黒猫の名前、そういうのね。)


 兵士の呟いた言葉に、私は思わず間抜けな反応をしてしまう。魔物の名前までは私は覚えていなかったのだ。

 街の入り口で止まったわけだし、ひとまず私は黒猫の背から降りる。


「安心して下さい。この子は今私の影響下にあります。街は襲いませんので武器をしまって下さい」


「お、女の子?」


 急に現れた私に、兵士たちは驚いている。

 驚いているのは分かるけれど、今は急を要するのでとりあえず私は事情を説明し始める。

 その際に、黒猫の背中に縛り付けておいた悪者を目の前に降ろす。男たちの姿に兵士は驚いている。


「こいつら、指名手配の極悪人どもじゃないか!」


「おい、すぐに他の連中を集めろ!」


 兵士たちが慌ただしく動き始める。

 こうして集められた兵士たちは総勢二十人ほどだった。馬車も四台だ。


「それでは、現場まで案内を願います」


「分かりました。お願い、さっきのところまで連れていって」


 私が声をかけると、黒猫はこくりと頷いて走り出した。

 さすがに馬車に合わせられないけれど、馬たちがついて来れる程度に黒猫は速度を抑えてくれている。

 今はこうやって従ってくれているけれど、これが普通にて期待している魔物だったらと思うと震えてしまう。


「にゃあ」


 私の震えが伝わったのか、黒猫は安心させようと優しく鳴いていた。その姿に、私の恐怖はすっかり和らいでしまった。

 魔物使いを選択してよかった。そう心から思った。


「こちらですね。この奥の檻に子どもたちが捕らえられています。それと、上には仲間と思われる連中がいます。私が先に向かって状況を確認しますので、こちらはよろしくお願いします」


「分かった。お前たち、慎重に進むぞ!」


「はっ!」


 私は入口の警備をさせていた黒猫をどかせると、中の調査を兵士たちにませて上へと戻る。

 上に戻ると、賊の仲間たちは全員がぼろぼろになってうずくまっていた。動いているので、ここにいるウルフたちは私の命令を守って痛めつけるだけで済ませてくれたらしい。

 私は魔法を使ってうずくまる男たちを一人ずつ順番に拘束していく。ウルフたちがいるとはいえ、この状況では何をされるか分かったものじゃないもの。

 順調に男たちを拘束していると、ようやく兵士たちが小屋から姿を見せた。


「こ、これは……」


 目の前に広がる光景に唖然としている。


「こいつらも連行をお願いします。先程街に送り届けた男の仲間でしょうから」


「ああ、分かった。しかし、君は一体……」


 私の言葉に頷きながらも、兵士は私の正体を探ろうとしている。

 しかし、その質問に私が答えられるわけがなかった。


「通りすがりの魔物使いですよ。子どもたちの泣き叫ぶ声を聞いて、助けに来ただけです」


 兵士たちは呆然とした様子で聞いているようだ。


「では、こいつらと子どもたちのことをお願いします。魔法で回復させているとはいえ、完全とは言えませんからね」


「わ、分かった」


 私はそういって兵士たちに背を向ける。


「さあ、お前たちも行きますよ。それでは、これで!」


 私は黒猫にまたがってその場を離れていく。

 ある程度離れたところで、私は黒猫から降りて魔物たちに話し掛ける。


「今回はありがとう。あなたたちもゆっくり休みなさい。寝て起きたら、さっきまでのことは全部忘れる、いいわね?」


 黒猫やウルフたちはこくりと頷いている。

 私が魔法を使うと、魔物たちは一斉にその場に眠りこけてしまう。


「ふぅ、これで無事に解決かしらね。しかし、魔物使いってすごいわね。これだけの数の魔物を一斉に使役できるなんて」


 私は自分の力が少し怖くなった。

 ベルフェルが言うには、これが元々の私の魔力らしいのだから。


「私は、絶対この力の使い方を間違えないわ」


 眠りこける魔物たちの姿を見ながら、私は強く心に誓う。

 魔物たちをその場所に残し、問題が解決したとして私は一気に屋敷まで戻ったのだった。


 ……ただ、魔物使いの姿から戻るのを忘れていたので、戻ったところでベルフェルに大笑いされ、その後もしばらくからかわれたのはいうまでもないことだった。

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