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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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Magic21 公爵令嬢

 公爵令嬢アリエル・セイクリード。

 今回私をお茶会に誘ってきた人物の名前よ。

 王家に次ぐ権力を持つ公爵家の中でも、セイクリード公爵家は最大。第二王子とはいえ、王族との婚約を結んでいるため、アリエルの権力もまた増大している。

 そんな方から誘われたのだから、弱小男爵令嬢である私が断れるわけもなかった。


「ここが、セイクリード公爵家」


『聞いたことねえ家名だな。ってことは、歴史は二百年にも満たない新興貴族か』


 どうやらベルフェルでも認知していないらしい。魔導書とはいえ、興味のないことは覚える気がないみたいね。

 目の前にあるのは、私の家とは比べ物にならない立派な門と塀だった。馬車二台が余裕ですれ違えるなんて、どれだけ大きいのかしら。

 門のところで止められたので、私はお茶会の招待状を見せる。先触れもあったので、すんなりと屋敷の中へ入ることができた。

 何かあっては困ると一緒に連れてきた護衛のマリアンヌと侍女のサリーも無事に入ることができた。これで一応身の安全は確保できそうね。


『くけけけ。危険があったらおいらも守ってやるぜ。罰則以外で死なれるのは、魔導書の名折れだからよ』


 言い方こそ気分はよくないが、それでも今なら頼れる相手だわよ。

 屋敷の前で馬車を降り、そこからはセイクリード公爵家の使用人によってお茶会の会場まで案内されることになった。


 そうやってやって来たのは、屋敷の中庭。天気がいいということもあって、屋外で開放的なお茶会がしたいとのご希望のようだった。

 しかし、お茶会をする庭園には隠れる場所がたくさんある。私は思わず警戒に身構えてしまった。


「ようこそおいで下さいましたわね」


 庭園までやって来た私たちに、声が掛けられる。

 お茶会をする会場には、一人の令嬢が立って待っていた。

 って、あれ。今回ご一緒するのは私だけ?

 周りを見てみても、誰一人として令嬢はいない。いるのは使用人の服をまとった人物ばかりだった。どういうことなの?


「こ、これはアリエル様。本日お招きいただきありがとうございます。アンジェ・ドロップと申します」


「ええ、同じクラスですもの、よく存じておりますわ」


 そう、このアリエル・セイクリードは、私と同い年で、同じ最上位クラスの所属。ここまでの学園五日間でもしっかり顔を合わせていた。

 でも、こうやってお言葉を交わすのは、これが初めてだったりする。


「さあ、こちらに来てお掛けになって下さいな。警戒をなさるのは分かりますが、今日はただの交流。気楽になさって」


「は、はあ。では、お言葉に甘えさせて頂きます」


 アリエルの言葉におとなしく従うことにする。


『こいつは嘘は言っていないな。本当に話がしたいだけのようだ。まっ、変な探りを入れられないように気をつけな』


 ベルフェルが珍しく気にかけてくれている。そのせいで、アリエルよりもこっちの方が怖くなってしまった。


「それでは、失礼致します」


 セイクリード公爵家の使用人が私の世話をしてくれている。魔力なしだからと雑な扱いを受けるかと思ったけど、下手なことをすればセイクリード公爵家の名に傷をつけると理解しているのだろう。私だけではなく、サリーとマリアンヌがいるから抑止になっている可能性はあるわね。

 お茶もお菓子も実においしそう。でも、私はひとまずじっと手を出さずに耐える。こういう時は主催側の許可がいるはずだと思ったからだ。


「ずいぶんと気を遣われていますわね。わたくしのことは気にせず、存分に召し上がって下さいませ」


「は、はい。では、お言葉に甘えて」


 アリエルの許可が下りたことで、私はお菓子をひとつ口に放り込む。

 あっ、すごくおいしい。


「本日は、座学トップであるあなたに、いろいろとお話を伺いたくてお呼びしましたの。あなたは魔力なしですから、他の方がいらっしゃると気まずくなると思いまして、それで誰も招いておりませんのよ」


「そ、それはお気遣い、とても嬉しく思います」


「それと、ミケル殿下もとても気にかけていらっしゃるでしょうからね。個人的に興味がありますのよ」


「んぐっ!」


 ミケル殿下の話題に触れられて、私は思わずのどにお菓子を詰まらせそうになってしまう。慌ててお茶を流し込む。


「ふはー……。急に驚かせないで下さい」


「うふふ、それは御免あそばせ」


 アリエルは笑ってはいるけれど、ちゃんと謝罪してくれた。

 警戒はしてしまったけど、こうして話しているとお優しい方のように思えてくる。

 とはいえ、ベルフェルの忠告もあったので、私は最後まで油断しなかったわ。こういう時ばかりは感謝しなきゃね。


「今日はお話ありがとうございましたわ。ミケル殿下のことは同情致しますけれど、あまり邪険にはなさらないで下さいませ。なにせ王族ですから」


「はい、ご忠告ありがとうございます」


 有意義な時間を過ごさせて頂いた上に、こうもご心配をして頂けるとは。さすが公爵令嬢、格が違います。


「それと、今日まで無視をして申し訳ありませんでした。周りの雰囲気のせいでお声をかけづらかったですのでね」


「あ、いえ。お気になさらないで下さい。そ、それでは、私はこれで」


「ええ、また学園でお会い致しましょう」


 私はきちんと挨拶をして、公爵家を後にする。

 しかし、私は知る由もなかった。すでにこの時点でアリエルの手のひらに乗せられていたことを……。

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