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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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202/240

Magic202 グリーデの部屋を探れ

 あれだけ散々と避けてきたはずのグリーデという側室だった女性の部屋。

 私はラルヴァの案内でその部屋の前に立っている。


「アンジェ様、いろいろと裏で画策していた奴の部屋ですからね。あたいは無事でしたが、アンジェ様もそうとは限りませんですからね。気を付けて行ってくだせえ」


「ありがとう、ラルヴァ。あなたはミケル殿下たちについていてあげて。特にガブリエラ。彼女は幼いし、ちょっと訳ありなものだからね」


「へい、畏まりやした。では、どうかご無事で」


 ラルヴァはあっという間に私の前から姿を消す。

 目の前にある見るからに派手な扉の中が、セラフィス王国の脅威となるグリーデ・エンヴィが過ごしていた部屋。

 ベルフェルとの誓約で死なない体になっているとはいっても、私は慎重に扉に手をかける。

 さすがにいきなり血まみれになんかになりたくないしねぇ……。


『アンジェ、気にすんな。おいらが守ってやるからよ』


 扉の取っ手に手をかけようとした時、ベルフェルがようやく話し掛けてきた。


(ちょっと、ベルフェル。今までどうして黙ってたのよ)


 私は文句をぶつけてやる。


『しょうがねえだろ。タクティクとは相性が悪いんだよ。おいらがからかおうとしても、すぐにあいつは看破してきやがるからな』


(ってことは、からかう気満々だったわけ? この真剣な場で?)


『っといけねえ……』


 思わず口を滑らせたからか、ベルフェルは再び黙り込んでしまった。まったく、この魔導書ってば油断も隙もないんだから……。

 とりあえずベルフェルのことは放っておいて、私はグリーデの部屋に入っていく。

 ラルヴァが言っていた通り、扉には鍵がかかっていなかった。特定の人物以外は、ドアノブに手をかけた時点で魔法で弾かれるらしい。この手の魔法を無視できる私の体質って、喜んでいいのかどうだか分からないわね……。

 まあ、体質のおかげで中に入っていけるんだから、今のところはよしとしましょう。


 早速中へと入っていくと、さすがは側室の部屋。正室たる王妃様の部屋と比べると確かにちょっと地味かも知れないけれど、男爵令嬢の私からすれば十分派手だわ。

 それにしても部屋が広い。

 私の部屋の倍以上あるじゃないの。しかも、部屋の中にも扉で別室もあるみたいだし。

 なるほど、この広さだからラルヴァの調査も時間掛かってたのか。納得だわね。

 ほとんどはラルヴァが調べてミケル殿下に報告がいっているはずなので、私はラルヴァから聞いた調べられなかった場所を調べていく。

 年末の逃走劇はお粗末な方だったけど、それも残した罠をごまかすための陽動だった可能性はあるわ。表向きは側室としての派閥でしか警戒を与えてこなかった女だもの、そのくらいは十分にあり得る話だわ。

 部屋の中をあちこちと見て回っている私だったけれど、ベルフェルが再び沈黙を破って話しかけてきた。


『アンジェ、あそこの引き出しを調べろ』


「はあ? あそこってどこよ」


 目的語が足りない。あそこって言われても分からないわよ。指差してるわけじゃないんだから。


『いちいちうるせえよ。あそこって言ったらあそこだ』


「だからどこよ、物の名前を言いなさいってば。それか方向!」


 ひたすらあそこっていうせいで、どこかまったく分からない。変なところでポンコツね、この魔導書は。


『ああ、じれってええ。あれ名前なんて言うんだよ!』


 どうやら名前が分からないらしい。魔導書のくせに大丈夫かしら。


『うるせえ。正面の三段の引き出しがあるやつだ』


 私が正面にある三段の引き出しのついたものを探す。そこにあったのは三面鏡だった。


「なんだ、お化粧台じゃないの。三枚の鏡がついているから、三面鏡っていうのよ」


『そいつだ。そこを調べろ。ああ、鏡は半分程度起こして開いてくれ』


 三面鏡が分からなかったくせに、やたらと注文の多いベルフェルだわね。

 とはいえ、魔導書が感じたことだから、何かあるのは間違いなさそう。

 ただ、半分程度起こして開けってどういうことなのかしら。ひとまず三面鏡を調べてみることにする。

 半分程度起こしてっていうから、まずは垂直まで開かない状態で鏡を開く。


『違う。そうだな、言い方が悪すぎたな。開き切った状態からその角度で鏡を起こしてくれ』


「はじめからそう言いなさいよ」


 とりあえず三面鏡の鏡の角度が分かったので、私はその状態に鏡をセットする。


『そうだ。それでいい。次は真ん中の引き出しを開けてくれ』


「はいはい、真ん中ね」


 三面鏡は座る場所の両側に、開き戸と三段の引き出しがついている。

 私はベルフェルの言った通り、三段の中央にある引き出しをゆっくりと引き出していく。

 半分ほど開いたところで、「カタン」と小さな音が聞こえた気がした。


「うん? なんの音よ」


 次の瞬間、信じられないことが起きる。

 部屋の中にあった本棚が突然、音も立てずに動き出したのよ。


「なっ、なによ、扉?!」


 本棚がずれた後ろからは、なんと扉が出現した。


『隠し部屋ってやつだな。城の中にこんなものを仕掛けるたあ、驚きだぜ』


 ベルフェルが話しているものの、私は驚きのあまり言葉が出なかった。


『さっ、調べようぜ』


「え、ええ。そうね……」


 私は消えたグリーデの秘密を探るべく、現れた隠し部屋の中へと入っていくのだった。

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