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魔法令嬢ティアローズ  作者: 未羊


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176/240

Magic176 王都に戻ってまず一波乱

 王都に戻ってくれば、ひと月もしないうちに年末の建国祭を迎えることになる。

 この建国祭をもって年が明け、セラフィス王国は新年となる。

 収穫祭を含めて、この年末の間はお祭りの連続なので、国民はなんとも浮かれまくっている。

 そんな裏ではとんでもない事件が起きていたなんて、当事者たち以外は誰も知らないんでしょうね。


 王都は今日も今日とて平和である。

 私はというと、今日はベリル様主催のお茶会に呼ばれていた。

 私が王都に戻ってきたという話は、ブレイズ伯爵様を通じて伝わっていたみたい。それで、慌ててお茶会の招待状を出してきたというわけだった。


(ティアローズのお手伝いで抜け出ていたことにはしているけど、ガブリエラには見抜かれているのよね。ボルヌとマイトの二冊が付き添っていたんだもの)


 嘘をついているというのは心苦しいけれど、本当のことも言えないから困ったものだわ。

 ガブリエラが適当に話を合わせてくれるでしょうけれど、十歳の彼女にどこまで期待していいのか分からないわね。

 そんなわけで、今日のところはサリーにだけ付き添ってもらって、私は王都のブレイズ伯爵邸へとやって来ていた。

 以前にも来たことはあるけれど、やっぱり伯爵家っていい家に住んでいうものだわね。

 ……うちの男爵家の方が立派なのが不思議だけど。


 私が伯爵家に到着した時には、ベリル様が門に立って待ち構えていた。


「よく来られましたわ、アンジェ様」


 ベリル様は普段と変わりがない様子だった。

 しかし、今現在、家には夫人が不在になっている状況だ。それを考えるとベリル様は気丈に振る舞っているだけかもしれない。

 私はベリル様の様子に気を付けながら、対応することにする。


「本日はお招きいただき、まことにありがとうございます」


「アンジェ様にはいろいろとお伺いしたいことがございますので、本日のお茶会は部屋で行いますわ。よろしいかしら」


「承知致しました」


 断る理由もないので、私は部屋でのお茶会に快く応じることにした。


 お茶会の会場となるベリル様の部屋には、すでにガブリエラが待っていた。

 ガブリエラの様子を見てみると、どことなく緊張したようにも見える。落ち着きなく、私の方にちらちらと視線を送っているようだった。


「ガブリエラ様、緊張なさってらっしゃるのですか?」


「ひゃ、ひゃい!」


 ベリル様に声をかけられると、舌をかみそうな勢いで返事をしていた。本当に緊張しているようだった。

 なんとなく理由は分かるんだけどね。

 性格的に見ても、この子も嘘をつけるようなタイプじゃないから、正直今日のお茶会は心配だわ。

 不安を覚えつつも、私もお茶会の席に着いたのだった。


 最初こそ純粋にお茶やお菓子を楽しむ、静かなお茶会だった。

 だけど、そう思っていたのも最初のうちだけ。

 ベリル様が口火を切ります。


「アンジェ様、ガブリエラ様、大変なことが分かりましたの」


「どうなさったのですか、ベリル様」


 ベリル様の言葉に、ガブリエラが詳細を聞き出そうとしている。


「お母様が、悪人だということが分かったのです」


「まあ、あの優しそうな伯爵夫人がですか?!」


 一応ボルヌとマイトを通じて話しは言っているとは思ったのですが、ガブリエラがかなり驚いているわね。

 でも、耳を疑いたくなるくらいに、ブレイズ伯爵夫人は優しく人当たりがよかったものね。ガブリエラの反応はよく分かるというものだわ。

 だけど、ブレイズ伯爵夫人、ルクスリアの本性を見たのはおそらく私だけ。

 伯爵様たちが集まっていたあの現場でも、まだ普通に振る舞っていたもの。

 私は当日のことを思い出してみる。

 ……うん、知らない間に逃げ出していたわね。

 その後を私が追いかけて追い詰めたのはいいけれど、力の差をまざまざと見せつけられて、結局取り逃がしてしまった。それが事件の顛末だった。


「ええ、詳細は分かりませんが、領地で不正なことをしていたようなのです。今はお父様は再び領地に向かわれました。今はミケル殿下の指揮の下、領地で調査が行われていますわ」


「そんな……」


 さすがにガブリエラはショックが隠しきれずに、黙り込んでしまったようだった。

 心配そうに見つめる私だったけれど、すぐにベリル様の矛先が私に向く。


「それはそうと、アンジェ様は一体どこで何をしてましたのよ。結局現れませんでしたし、そしたら王都に戻ってきたと知らされましたし……。心配したこちらの身にもなって下さいませんこと?!」


 ベリル様は目に涙を浮かべながら、私を怒鳴りつけてきた。

 どう見ても私を心配してのことだとよく分かる。

 私はティアローズの手伝いをしていたとだけ伝えておく。詳しいことは言えないもの。


「どうしても教えてくださいませんの?」


「ええ、犯人を追い詰めるためには、外部に漏らすわけにはいかないですからね」


「うぬぬぬぬ……。これではわたくしだけが除け者みたいではありませんか」


 ベリル様の言葉に、私はこてんと首を傾げる。

 除け者にした覚えにはないのだけど、どうしてそうなるのかしら。


「ガブリエラ様も何か知ってそうな顔をしてますもの。教えて下さってもよろしいではありませんか!」


 ああ、ガブリエラってば……。

 この子は本当に隠し事はまだまだ下手なようね。


「そのうち、すべてを話せる時がきますから、今は我慢下さい。私とて隠し事はあまりしたくないのですが、相手が相手ゆえに……ね」


「……分かりましたわ。約束ですからね」


「はい、約束です」


 とりあえず、ベリル様を説得することはできたかしらね。

 さすがにすっきりとはいかなかったけれど、最終的にはいつもの和やかな雰囲気になったので、まあ成功と見ていいのかしらね。

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