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抱かれたい匂い

作者: 黒楓

今朝はいきなり寒くて……思い付きました。

いきなりの寒さにやられて……上掛けの中で丸くなったまま目が覚めた。


つるべ落としの夜はまだ明けやらず、垣間見える窓は冷気の磨りガラス。


寒い!


体ごと握り締めていた空気はもんやりとしていて……

私は自分の“女”に辟易とする。


けれども“上掛けの殻”から抜け出すことが出来ない“カタツムリ”な私は

みっともなさを引き摺りながらドレッサーの引き出しを開け

手で奥を弄って(まさぐって)

“ALL◇RE HOMME”の角ばったボトルを探り当て

円筒の蓋を引き抜き

スウェットの更に下へと潜り込ませ

素肌へ思う存分吐息を吐かる。


全身を愛撫されたこの香りに想い出なんか無い。


遠い昔に、得意先のチョットいいなって感じた大人の男が……スカして付けていただけだ。


だからこそ……


こんなポッカリ空いた様な寒さに


オトコの体温を感じさせてくれる妄想の鍵となれる。


きっと、こんな感じ方、男はしないのだろう

いや……するかな?


まあ、異性の事は分からない。


私の体は温められ……いつしか殻を脱ぎ捨てて

フレグランスの這跡を残すナメクジとなる。


最も

真に私の体を温めたのは

ガッチリ着込んだババシャツなのだろうけどね。


カテゴリー分けを悩んだのですが

エッセイにいたしました。



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― 新着の感想 ―
 なんかサッパリしてて面白かったです。  香りは人の記憶を強烈に呼び起こしますからねえ。     最近寒くなってきた、と思っていた私にはピッタリのお話でした。  かたつむり→ナメクジのとこが特に好きで…
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