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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第三章:生まれの土地
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第三十五話 古代魔法を応用しました

「憎い、憎い憎い憎い憎い」


 イザベラは魔族たちのせいで負の魔力を増幅させられ、魔族と化していた。

 キツネのような顔に変質していて、元の顔の原型は留めていない。


「それでいい。お前の原動力は憎しみだ。憎悪だ。親のせいで落ちぶれてしまった世界への憎悪だ」


 ネズミ男は囁くように言う。

 イザベラはそれを聞き、憎い憎いと呟き続けていた。


「さあ。お前のその憎しみを解き放つときが来た。殺戮だ。思う存分、人を殺せ」

「ぐがぁあああああああああああああああああああああああぁあ!」


 大雨の中。

 イザベラはネズミ男の言葉に呼応し、雄叫びを上げる。

 そして憎しみの相手、自分をないがしろにしたくせに順調に人生を歩む少女の元に迫るのだった。



   ***



「う~ん、もう少しだと思うんだけどなぁ……」


 そう呟くと同時に、手の中の魔石がバチッという音とともに弾け飛んだ。

 魔石の中の負の魔力を取り除こうと頑張っているものの、さっぱり分からずじまいだ。

 いけそうな予感はあるものの、結局うまくいかない。


 そんなことをやっていたら、突然パリンと窓ガラスが割れる音が聞こえた。

 何事かと立ち上がって音のしたほうに向かうと――


「……メイド長」


 そこにはキツネのような顔に変質してしまったメイド長イザベラがいた。

 私は立ち竦んで対面する。

 もう……手遅れだったみたいだ。

 ……いや、私が頑張って魔族から元に戻す方法を探れれば。

 まだ可能性はあった。


「……レイラ、レイラ、レイラァアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 イザベラは私の名前を大声で叫ぶ。

 それを聞きつけたエレイア様やカレイシアさんが駆けつけてきた。


「大丈夫か!?」

「無事か!?」


 そんな心配する声に私は応える。


「大丈夫です!」

「そうか、それなら良かった! 下がってろ、ここからは俺たちが相手する!」


 そう言って果敢にもエレイア様が剣を構えて一歩前に出た。

 どうやら彼も戦えるらしい。

 それから遅れて護衛の男も来て、三対一だ。

 流石にイザベラもこれには持ちこたえられないだろうと思ったが。


「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」


 エレイア様が叫びながらイザベラに斬りかかる。

 しかしイザベラは簡単にそれを避けた。

 そのままイザベラは魔法で炎を出現させ、エレイア様に放つ。

 護衛の男がそれを剣で切り裂き、何とか事なきを得た。

 その隙にカレイシアさんもイザベラに斬りかかるが、それも簡単に避けられてしまった。


「さすが……魔族ともなると強いな……」


 カレイシアさんがポツリと呟く。

 これはなかなか厳しい戦いになりそうだ。

 私に出来ることは何かないか。

 そう思考して、ポケットから先ほどの魔石を取り出した。


 これを使って負の魔力を正の魔力に変換できれば……。

 そう思い私は試行錯誤を再び開始する。

 そもそも負の魔力とは何か。

 正の魔力とは何か。

 それはポジティブとネガティブだ。

 ……そして、古代魔法とは希望であり、人の願いだ。


 もしかして。

 単純に正の魔力に変換しようとするのは無理で、古代魔法の要領で願いを込める必要があるのだろうか。


「……これだ」


 私は心を決める。

 試行錯誤している間に、エレイア様たちはかなり押されていた。

 護衛の男は膝をついているし、カレイシアさんは倒れ込んでしまっていた。

 エレイア様だけがかろうじて立っているが、それでもかろうじてだ。

 戦える状態ではなかった。


 そんな中、私はイザベラに近づいた。


「なっ……!? れ、レイラ……!」


 そんな私を見てカレイシアさんが叫ぶ。


「大丈夫です。きっと、大丈夫」


 そんなカレイシアさんを安心させるように私は言った。

 そしてイザベラに近づく。

 魔法を使って私を殺そうとしてくるイザベラに私は触れて、そして――


 白色の光が溢れた。


 戻ってほしいと。

 元のイザベラに戻ってほしいと願いを込めて魔力を変質させた。


「わ……私は……」


 イザベラは元に戻っていた。

 彼女は周囲を見渡して、震える声を出した。


「私はなんてことを……」

「すみません、イザベラさん」


 膝から崩れ落ちたイザベラに私は謝った。

 すると彼女は顔を上げてこちらを見る。


「……どうして謝るのですか。謝るのは私の方です」

「いえ、謝るのは当然です。私が貴女の授業をないがしろにしてしまったから、こんなことになったのですよね?」


 そう言うと、彼女は気まずそうに視線を逸らした。

 だから私はもう一度謝った。


「ごめんなさい、メイド長。これからは私にもっと厳しく礼儀作法を教えてください」

「……分かりました。もう手加減はしませんよ?」


 そう言うイザベラに私は笑いかけた。

 彼女も私にイタズラそうな笑みを浮かべた。



   +++



 それから大雨は止み、逃げ出した魔族たちは王都から派遣された騎士や宮廷魔法使いたちに処分された。

 私は現在、イザベラに厳しく礼儀作法を学んでいる。

 ちょっと今までの私は研究研究で周りが見えてなかったと反省。


 しかし研究の方も着実に進み、古代魔法を完全に再現できるようになった。

 そのおかげで、私は正式に宮廷魔法使いに任命された。

 昼まではイザベラの礼儀作法の授業を受け、それから夕方までは王城の研究室で研究の日々だ。


 改めて、私は転生して良かったと思う。

 転生しなかったら、こんな楽しい日常も待ってなかったし、成長も出来ずに終わってたからね。


 これから人生どうなるか分からないけど、やっぱりずっと楽しみ続けたいよね。

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― 新着の感想 ―
おもしろかった〜けど、なんかチョット物足りなかったです。 終わりが淡白というか…… でも一気に読んてしまいました。 続編的なものができたら嬉しいです。
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