第三十四話 メイド長の行方
すみません!
コロナでダウンしてて、投稿遅れてしまいました!
「なるほど……。なかなか面白い発想をしますね」
エレイア王子は足を組み直して、考え込むようにそう言った。
それから彼は、でも……と話を続ける。
「でも、それをどう生かせば良いのか、現状では判断が付かないかな。魔族にされてしまった人を生け捕りにして元に戻すことを考えるより、殺してしまった方が安全で、かつ手っ取り早いからね。いや、レイラさんの言いたいことも分かるよ、もちろん。魔族にされてしまった人も被害者なのだということも。でも、それで油断して余計に犠牲者を増やすわけにはいかないからね」
理路整然とエレイア王子はそう述べた。
そうだよね……彼の言い分が正しいことは理解している。
しかし私の感情が納得できないのだ。
魔族にされてしまった人を殺してしまうというのは、なかなかどうして鬼畜じゃないかと。
それは私が日本生まれで平和ボケしているせいなのだろうか?
エレイア王子は私が納得いっていないことを見て取ったのか、苦笑いを浮かべて言った。
「まあ、僕は王子としてそう判断せざるを得ないけど、レイラさんの判断はレイラさんの責任だから。もしその魔族から元に戻す方法を確立できたのなら、私から正式に依頼をしよう」
私は想わず顔を上げてエレイア王子の方を見た。
「良いんですか?」
「それだけの価値があると示せれば、ですけどね」
そう言ってエレイア王子は微笑むのだった。
***
それから次の日。
雨は余計に激しくなっていた。
「完全に足止めを食らってしまったな……。これでは長旅も厳しいだろうし……」
窓から外を眺めてエレイア王子は言う。
「以前も話しましたが、魔族も足止めを食らっているのは同じだと思われますので、今は焦らず堅実に行くのがいいかと」
そんな焦る様子のエレイア王子に父は言った。
その言葉に彼は頷く。
「そうだな。焦って事をし損じるのが一番宜しくない。流石はアルシュバイン伯爵だ」
ん?
エレイア王子の言い方に少し引っかかりを覚えた。
「もしかしてエレイア王子は父のことを知っているのですか?」
「知っているも何も、有名な方だよ。イージスのアルシュバインと言えば、光魔法や闇魔法の魔導具の使い勝手を大幅にアップさせ、遂には一般化までさせたことで有名だからね」
私は驚いて父の方を見た。
父は少し照れたように視線を逸らして、眼鏡を人差し指で押し上げた。
「昔の話だよ、昔の」
「以前までは魔導具と言えば使い勝手の悪いものだった。常に人間が触れて魔力を補給しないといけなかったからね」
「そうだったんですね」
「ああ。それを変えたのが君の父だ。魔力を溜めておける魔力タンクというものを発明したんだ」
そうだったんだ!
父もなかなかやるなぁ〜。
更に尊敬レベルがアップだ。
そんな会話をしていると、部屋にリーチェが入ってきてこう尋ねてきた。
「あのぉ……メイド長のイザベラを知りませんか?」
「イザベラ? いや、知らないけど」
リーチェの問いに父が不思議そうに答える。
「昨日からずっと見当たらないのです。屋敷を探し回ったんですが、何処にもいなくて……」
その言葉にエレイア王子が眉を顰めた。
「それは本当か?」
「はい。何度か部屋まで探しに行ったんですが、昨日のままずっと変化がなくて」
「それは……怪しいな。手分けして探した方が良いかもしれない」
険しい表情のエレイア王子に父が尋ねる。
「怪しいというのは?」
「いや、万が一、魔族が近くに潜んでいたとすれば、もしかしたら……と思っただけだ。そこの君、メイド長がどのような人物だったか教えてくれないか?」
エレイア王子に尋ねられ、レイラは話していく。
ちょっと短気なことや、鬱屈とした感情を抱えていたことまで、全てだ。
「なるほど……ますます怪しいな。先日のレイラの言葉が正しければ、魔力が負の感情に感化されて魔族になるということになる。彼女のその負の感情を増幅させる術が魔族にはあるのかもしれない。早く探しに行こう」
そうして手分けしてみんなで屋敷内を探し回るが、どこにも見当たらなかった。
こうして大雨の二日目が終わった。
私はその日の夜、魔石を使って負の魔力を正の魔力に変質出来ないか探ってみるが、結局分からず仕舞いなのだった。
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