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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第三章:生まれの土地
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第三十話 どうして反発しあうの?

「ふむ……魔力というものがそもそも画一的なものではなく、属性のように種類があるのではないか、とレイラは言いたいわけだな?」


 カレイシアさんの確認するような言葉に、私は頷いた。

 現在、私たちは中庭のパラソルの下のテーブルで魔法会議をしていた。

 今回の議題は魔力についてだ。

 いや、実家に帰ってきてから三日間、ずっとその話ばかりだった。


「そうですね。この魔物の魔石と私の腕輪が反発し合うってことは、磁石のように表裏一体の属性があってもおかしくないと思うのです」

「……一理ある。今までその考え方をする人はいなかったが、レイラが初めてのアイデアを持ち込むのはこれだけでもないしな」


 そう言ってから、カレイシアさんは考えるように人差し指を顎に当てた。

 長い足を組んで考え込む様子は、一枚の絵画のようにも見える。

 背景が白い壁面の中世風の屋敷だからってのもあるけど。

 しばらく考え込んでいたカレイシアさんだったが、紅茶の湯気が薄くなってきた頃にポツリポツリと考えを話し始めた。


「もし……魔力に属性があったとして、その属性分けがどのような属性なのか、そしてその属性分けが成されていることを知って、我々魔法使いはそれをどう生かせるのか……そこまで考えたいところだな」


 カレイシアさんの言葉に私は同意するように頷く。


「それはもちろんそうですね。しかし、属性分けには一つ私なりの仮説があって、このミスリルをアーシャさんに渡して変形できないか試してもらった時に、アーシャさんの魔力と反発し合う様子が見受けられなかったんです。しかしこの魔物の魔石とは反発し合う。要するに人の持つ魔力と魔物の持つ魔力は根本から違うものである、と考えられます」


 私の仮説を黙って聞いていたカレイシアさんは、私が言い終わると足を組み直して腕を組んだ。


「なるほどな。それはかなりいい線を行ってそうだ。……しかし、アライアスの魔力ではそのミスリルは変形できなかったんだろう? だとすれば、魔力の元となる物質……レイラが言うところの魔素というのは、かなり自在に変質するものだと考えて良さそうだな」


 そこまで話し合って、再び沈黙に移る。

 お互いに考え込む時間帯だ。

 完全に湯気が立たなくなった紅茶を飲み、口内を潤わせて考えを纏めていく。

 そしてカップ内の紅茶を飲み干した頃、私は再び口を開いた。


「魔力は人の思考を、イメージを読み取ることによって、魔法となり具現化します。つまり、魔力というのは人の思考を読み取る能力があると言うことになり、もしかすると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということになります。魔力自身に人相応の思考力がないと、人の思考を読み取ることも出来ませんからね」


 言うと、カレイシアさんは目を見開いた。


「確かに……言われてみればそうだ。魔力というものは、水や火と同じく意思を持たないものだと考えていた。魔力という言葉によって固定観念に囚われていたのかもしれない。しかし魔力に思考力があると考えれば、今までの現象に辻褄が合う……気がする。まだ検証は必要だろうが、その発想はなかった」


 そう持ち上げてくる彼に私は慌てて両手を振って訂正した。


「あ、いえ! これはまだ仮説というか、妄想の域すら出ていない考えなので! そこまで褒められると違ったときに恥ずかしいので勘弁してください!」

「あ、ああ……すまん。斬新なアイデアにちょっと驚きすぎてしまった」


 私の言葉にシュンとなるカレイシアさん。

 しかし……これをどうやって事実かそうじゃないかの判別をするかが難しいところだ。

 物事を肯定するのには、否定するよりも数倍のエネルギーが必要だからね。

 しかし完全に(・・・)否定するのであれば、肯定することよりも数百倍のエネルギーが必要なのだが。


 例えば、宇宙人の話をしよう。

 宇宙人がいないと思う、と主張するのは簡単だ。

 しかし宇宙人がいることを証明するのは、極小の可能性であれど、地球にたまたま来ていた宇宙人に遭遇するだけで出来てしまう。

 つまり運があれば証明できてしまうわけだ。

 しかし宇宙人の存在を完全に否定するには、全ての星を回って宇宙の隅々まで調べ上げて、ようやくそこで証明となる。

 このように、肯定と否定は同等とは言えない、と私は思う。


 つまり何が言いたいかというと、魔力に意思があるかないかを調べるときに、ないという前提で調べるべきではなく、あるという前提で調べる方が何かと楽、ということだった。


 そんなわけで、私たちは魔力に意思があるという前提で色々と試してみることにするのだった。

 しかし結局……実家に帰ってきてもやってること何も変わらないじゃんと、少しそう思ってしまうのだった。

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