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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第三章:生まれの土地
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第二十九話 メイド長の嫉妬

「何なんですか、あの小娘は……! 何故、何故……あんなにも怠惰で、ぼうっとしていて、何も出来ない愚鈍なのに、何故みんなから愛されるんですかッ! 許されない、許されることじゃありませんッ!」


 メイド長――イザベラは自分用に宛がわれた屋敷の部屋の中でベッドを殴りながらそう叫んだ。


 悔しい、恨めしい。

 そんな感情が彼女の内面に渦巻く。

 嫉妬だ。

 醜い嫉妬心だった。


 イザベラはまだ十歳のレイラに嫉妬しているのだ。


「王女殿下や筆頭宮廷魔法使いの男も! みんなあの悪魔に騙されているのです! ……そうよ、そうだわ、間違いない。みんな、あの小娘に騙されて誑かされているだけなんだわ。私が助け出さなきゃ。私が騙されているみんなをあの悪魔のような小娘から救い出さなきゃ。そうすればあの立場はいずれ私のものに……」


 彼女は夢見ていた。

 幼い頃に見た夢だ。

 貴族の若い美青年に見初められ、愛を囁かれるという夢を。

 父が捕まったことで、その夢が叶えられないことを悟った。

 イザベラは……その夢が叶えられないのが父のせいだと思い込んでいたのだ。

 決して、自分のせいではないと、そう思い込んでいたのだ。


「そもそも、私を拾ったこのアルシュバイン伯爵家がパッとしないと思っていたところなのよね。こんなところにずっといたら私の輝きが鈍っていくわ。早くあの小悪魔を退治して、こんなところからおさらばしないと」


 ブツブツと暗い笑みを浮かべ、ガシガシと親指の爪を噛みながらそう呟くイザベラ。

 彼女は頭の中でカレイシアに見初められ、アライアス王女殿下に認められ、順風満帆な生活を送っている自分を思い浮かべていた。


「ふふふっ、どうやって引きずり落としてやろうかしら……。待っていなさい、小悪魔ぁ……」



   ***



 そんな光景を窓ガラス越しに眺めている人が居た。

 ……いや、人と呼んでいいのかも分からない。

 それ(・・)はコウモリのような顔をした人間のようななにかだった。


 木の枝にぶら下がり、くちゃくちゃと何かを食べている。

 生肉だ。

 もう原型は留めておらず、どんな形だったのかも分からなくなっていた。

 彼はゆっくりとその生肉を噛み締めた後、ペッと地面に吐き捨てた。


「アイツァ、なかなかいい悪意を持ってるなァ。なァ、お前もそう思うだろ?」


 そう尋ねると、突如としてその木の下にネズミ顔の男が現れた。


「ああ。素晴らしい逸材だ。あれなら魔力をこちら側に(・・・・・)変質させるにはもってこいだろう」


 スッと、背の伸びたネズミ男は低い声で冷静にそう言った。

 それを聞いたコウモリ男は甲高い声でケタケタと笑う。


「やっぱりおめェは喋り方がかてェなァ! もっと楽に喋れよ」

「お前に指図される筋合いはない」

「そォかよ。まァいい。それじゃあ計画通り、アイツを使って実験をするんだなァ?」

「そうだ。人を魔族に変質出来るのか。我々はそれを試す必要がある」


 そして続けてネズミ男は、そうしなければ魔族の存続は危ぶまれるだろう、と言った。


「んな、存続とかオレァどうでもいいけどよォ。ただ面白くて、良い感じの絶叫、絶望が聞ければ良いんだよなァ」

「貴方はなかなか魔力に脳を犯されてしまっているみたいですね」


 呆れたようにそう言うネズミ男。

 コウモリ男はそれを聞いてもケタケタ笑い続けるだけなのだった。

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