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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第二章:遠征と研究の二週間
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第二十二話 魔力についての謎

 アーシャさんは会議があるからと途中で別れ、私は一人研究室に戻ろうとしていた。

 王城の廊下を歩きながら私は思考を巡らせていく。


 何で突然、ミスリルの色が変化したのだろうか?

 タイミング的には、私が赤に変化したら、と思考した瞬間に赤になった気がする。

 私の考えを読み取って赤色に変わったと考えると一応筋は通るのだが、そんな物質を変質させるなんて話聞いたことない。

 少なくとも、この現段階ではその技術は生まれていなかったはずだ。


 う〜ん、やっぱり私の血を混ぜたからバイパスのようなものが通じ、思考が直接読み取られるようになった……?

 そう考えるのが一番妥当な気がする。


 ってことは、魔力は体外に放出されても自分の思考を読み取れる……?

 他の人の思考は読み取れるのだろうか?

 もし読み取れないのだとすれば、血液中に含まれる魔力は()()()()()()()()()()()()()とも考えられた。


 空気中に魔素が含まれているのだと仮定し、そこから魔力を取り込んでいるのだとしよう。

 すると、魔素は体内に取り込まれた瞬間、その人専用の魔力に変質しているということだ。

 空気中の魔素は、間違いなく誰のものでもないだろうから。


 これは魔力測定器どころの騒ぎではなくなった。

 ああ、早く研究室に戻って色々試さないと。

 私がこのミスリルをどこまで変化できるのか。

 そしてアーシャさんに変化できるようになっているかも確かめて貰わないとね。

 アーシャさんが変化できなくて私が変化できるのであれば、先ほどの仮説が真実味を帯びてくる。


 そんな考え事をしながら王城の廊下を急いでいると、角を曲がったところで人とぶつかってしまった。


「うわっ!」


 そう驚き、私は無意識のうちに先ほどのミスリルのインゴットを持っている手を地面に向かって伸ばした。

 杖をつくように。

 すると、手の中にあったミスリルはぐぅんっと伸びて杖のような形になり、私の身体を支えた。


 ……あ。

 やっぱりこの私の血の混ざったミスリル、私の思考を読み取って形を自在に変えるみたいだった。

 いよいよ先ほどの仮説が事実であるとする根拠が現れてきた。

 私の頭は色々な情報がない交ぜになり、パンク寸前まで来ていた。


「だ、大丈夫ですか!? ごめんなさい、気がつかなくて!」

「え、ええ、大丈夫でした。こちらこそすみません。ぼおっとしてました」


 杖になったことに驚いていると、ぶつかった人が謝ってきた。

 私は何とか思考を現実に戻すと、頭を下げて謝った。


 それから私は研究室に戻り、アーシャさんが帰ってくるまでに考えを纏めておくのだった。



   ***



「やっぱり私の思考には反応しないみたいね」


 アーシャさんが会議から戻ってきた。

 私はすぐさまインゴットを渡して、変形するかやってみて貰うことにした。

 結果、アーシャさんではこのミスリルは変化しなかった。


「やっぱりですか……。ってことは、私の仮説が正しいってことが証明されてしまいましたね」

「人の体内を巡る魔力は、個々人によって質が違い、かつミスリルに混ぜると、混ぜられたミスリルともバイパスが生まれ、その人の思考を読み取って変形するようになる、と」


 そう言って、顎に手を当てて考え込んでいたアーシャさんは、足を何度も組み直していた。

 どうやら深く考え込んでいるみたいだ。

 沈黙が訪れ、アーシャさんが喋り出すのを待っていると、しばらくしてポツリポツリと話し始めた。


「そもそも……魔法を使えている時点で、魔力が人の思考を読み取っているのは間違いないものね」

「そうですね。魔力というものが一体なんなのか。どういったものなのか、さっぱり分からなくなってきました」


 最初は気楽な気持ちで魔力測定器を作るつもりだったのが、ここまで入り組んだ問題に発展するとは思わなかった。


「今すぐに出来そうなことと言えば、他の金属でも変形するのか調べることくらいかなぁ」

「私もそれくらいしかないと思います。魔力について調べるには糸口が少なすぎますし……」


 しかし……この変形するミスリルのインゴット。

 かなり色々なところで有効に活用できそうだなと、頭の片隅で思うのだった。

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