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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第二章:遠征と研究の二週間
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第二十一話 ようやく発見できました

 ダンダスさんの家にお邪魔し、奥さんに大歓迎を受けながら家事を済ませ、みんなが寝静まった夜。

 私は魔導具を作る要領でミスリル専用の探知機を製作していた。


 円形魔法陣を石の棒の先端に刻み、ミスリルを感知すると振動するように作った。

 ミスリルは魔導浸透率が他の金属と比べてかなり高いという特徴があるので、呪文(スペル)の構築がしやすかった。

 棒の先端から魔力を発し、途中で素通りする場所があればそれがミスリルということになるからね。


 ちなみに全ての物質に魔導浸透率というものがあり、この探知機で使用している石材は木材に次いで低い。

 もちろん全物質内で一番高いのはミスリルだ。

 なので探知機を起動するには大量の魔力が必要になるということになり、現状長時間稼働は出来なさそうだが、あるのとないのとじゃ全然違うはずだった。


 ミスリル探知機を作り終えると私は疲れてそのまま眠りについた。

 次の日、再びミスリルを探しに地下に潜った。



   ***



「やっぱりその魔導具、とても便利ですね……。結構集まったんじゃないですか?」


 私の背負っている麻の籠を見てリーチェが言った。

 籠の中にはそこそこの数の精錬前のミスリル鉱石が詰まっていた。

 ミスリル探知機を作ってから相当効率が上がり、楽しくなってしまい、必要分以上も集めてしまったのだ。

 使わない分は、ここを貸してくれた炭鉱夫たちに渡そうと思う。


「それじゃあそろそろ上に戻りますか?」

「うん。もう十分すぎるくらい手に入ったしね」


 そうして昨日と同じように上に上がり、グロッキーになりながらもお世話になった炭鉱夫たちにミスリルを渡した。

 当たり前だろうが、とても喜んでくれて私もホクホク顔だ。

 ついでにミスリル探知機ももう使わないし、使うにしてもいつでも作れるのでこれも炭鉱夫たちに渡した。

 涙して喜んでくれたけど、流石にムキムキマッチョたちが男泣きしている状況はなかなか暑苦しかった。


「さて。帰りましょう。思ったより早く終えられて良かったですね」


 リーチェに言われて私は頷く。

 アルルも同意するようににゃぁっと鳴いた。


 それから私たちは来た道を馬車で四日ほどかけて戻り、ようやく王都へと辿り着くのだった。



   ***



 流石に帰還初日は屋敷で休み、次の日。

 私は再び研究室を訪れていた。

 そこではいつも通りアーシャさんが仕事をしていた。

 彼女は私が入ってきたことに気がつくと顔を上げて、声を掛けてきた。


「あっ、もう帰ったんだ。おかえり」

「ただいまです」

「なかなか早かったね。もう少しかかるものかと思っていたよ」

「ああ、それには理由がありまして……向こうで石の棒を使ってミスリル探知機を作ったので、それで効率が上がったんですよ」


 言うと、アーシャさんは呆れたような表情を浮かべる。


「よくもまあ、そんな次々にアイデアが出てくるもんだね」


 全部前世の知識です、なんてことは言えず、ただ笑って誤魔化した。

 アーシャさんは椅子から立ち上がると私の方に寄ってきてこう言った。


「それじゃあ早速レイラの研究を始める?」

「はい! まずはミスリルを高温で溶かして、そこに自分の血を垂らしてみようと思います!」


 私のその言葉に、アーシャさんは再び呆れたような表情をして首を横に振り、


「何度聞いても聞くたびに思うけどさ、やっぱりいつも不思議なことを思いつくよね、レイラって」



   ***



 私たちは王城の鍛冶場に来ていた。

 そこでは熱気が立ち込め、男たちが真剣な面持ちで鉄を打ったり溶かしたりしている。


「あっ、アライアス王女殿下! どうしたんですかい、こんな朝早くから?」

「いや、今回はそこの子が確かめたいことがあるみたいで」


 アーシャさんの言葉に男の視線が私に向く。

 それから彼ははてと首を傾げて言った。


「子供用の剣でも作られるんですかい?」

「いや、違うよ。彼女はもう私の研究室の一員なんだ。だから普通に研究だよ」


 その言葉に男は目を見開いた。


「へぇ……若いのに凄いですねぇ……。分かりやした。出来ることなら協力いたしましょう」

「ああ、いや、そこまで大層なお願いをするつもりはありません。ちょっとこのミスリル鉱石を溶かしたいだけなんです」


 そう言って背負っていた麻の籠を地面に置く。

 それを見て男はなるほどと頷いた。


「それならお安い御用です。すぐにやってしまいましょう」


 それから炉の方に行き、慣れた手つきで鉱石を入れ始める。

 熱気と蒸気が凄い。

 息苦しく感じるレベルだ。

 それからしばらくするとミスリル鉱石が完全に溶け始め、ドロドロの液体状になった。

 男はそれを慎重に取り出す。

 そして私の方を見て尋ねてきた。


「これからどうしますか? 希望の形があれば整えますが」

「ええと、まずは私の血を数滴そこに垂らしたくて……」


 私の言葉に男は怪訝な顔を浮かべる。


「血、ですかい?」

「はい、血を入れたいんです」

「まあいいですが、それで何が起こるんです?」

「いや、まだそれは分かりません」


 そう言いながら私は熱々に熱されドロドロに溶けているミスリルに近寄って、針で人差し指を刺し血を数滴垂らした。


「……何も変わっていないように見えますが」

「そうですね。見た目に変化はなさそうですね」


 う~ん、この実験は失敗だろうか。

 それとも、ただ見た目に変化がないだけ?

 一旦冷やしてみないと分からないか。


「それじゃあこれで私のやりたいことは出来たので、そのミスリルは普通にインゴットにしてくれると助かります」

「へい、分かりやした。インゴットですね」


 そうしてインゴットの型に入れてもらい、そのまま冷ます。

 しばらく経って完全にインゴットが冷め、私はそれを手に取ってみる。


 ……うん、何も起きない。

 これに触れると色が変わるとか、そういう反応が起こるかなと思っていたのに。

 例えば赤色に変化したら魔力量が多いとか。


「って、あれ?」


 赤色に変化したら――と心の中で思った瞬間、ミスリルの色が赤く染まり始めた。


「おおっ? ミスリルが赤く染まってますぜ? どういうことなんですかい?」

「レイラ、これはどういう意味なの?」


 いや、そう聞かれても困る。

 私も今、突然色が変わって結構困惑しているんだから。

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