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やがて古代魔法を解き明かす天才少女  作者: AteRa
第二章:遠征と研究の二週間
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第二十話 宿がないみたい

「えっ!? この街って一軒も宿がないんですか!?」


 昇降機で上に上がり、お世話になった炭鉱夫たちに宿の場所を尋ねると、宿なんてものはこの街にはないと言われてしまった。


「ああ。そもそもこんな外れの街に寄る旅人もいないからな。たまに物好きが覗きに来るが、彼らも結局は一日で隣の街に行ってしまうんだよ。鉱石を買いに来る連中はそもそも居座らないし、居座るとしてもお得意さんだから自分用の家をここに持っていたりするんだ」


 そう言われてガビーンと肩を落とす。

 どうしようか。

 宿がないとなると隣の街を拠点にすることになるが、ここから乗合馬車で半日はかかる。

 非常に効率が悪くなってしまう。

 悩んでいると、炭鉱夫の一人がこんな提案をしてきてくれた。


「宿はないが、うちに泊めることは出来るぜ? 最近赤ん坊が生まれたばかりだから騒がしいが、それでも良ければだがな」


 私はその提案に思わず食いつく。


「え! 良いんですか!?」

「ああ、もちろんよ。ただお駄賃として家事の手伝いくらいはして貰うがな。うちの女房が育児をしなきゃいけないってのもあって、家事まで熟すのが大変そうだったからな」

「もちろん何だってします! トイレ掃除、お風呂掃除、料理洗濯お片付け、何でもござれですよ! リーチェもそれでいいよね!?」

「もちろん私も異論はありません! メイドとしての力量を発揮するときです!」


 私の問いに力こぶを作ってリーチェが言った。

 流石は戦闘でも家事でも一丁前に熟してしまう万能メイド、リーチェだ。


「それは助かる。それじゃあうちまで案内するからついてこい」


 そう言って炭鉱夫の男は歩き出した。

 私たちはその後に続く。

 背中から、他の炭鉱夫たちの羨ましがる声を聞きながら。


「ちぇっ、リーダーだけズルいなぁ。あんな可愛らしい女の子と美人な女性とお泊まりなんて」

「いや、リーダーは奥さんラブだから一番安全なところで良かっただろ。これが他の奴らになってみろ」

「確かに考えただけで嫌な気持ちになるな」

「だろう? まあ、さっき羨ましがっていたお前が一番怪しいんだがな。後でリーダーに怒られるぞ」

「げっ、それだけは嫌だなぁ……」



   ***



 トロッコに乗って少しばかり移動し、住居地区の入り口から崖の中に入っていく。

 思った通り、崖の中は蟻の巣のように通路が張り巡らされていて、それぞれの家に辿り着けるようになっているらしい。

 中はランタンや松明の明かりしかなく少し薄暗いが、それがまた雰囲気を醸し出していて完全に私たちは飲まれてしまっていた。

 キョロキョロとお上りさんのように辺りを見渡す私たちに視線を向け、炭鉱夫の男はこう話しかけてきた。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はダンダス。一応あの縦穴の炭鉱夫たちのリーダーを勤めている。まあ本当に形だけのリーダーだがな」

「ダンダスさんですね。よろしくお願いします。私はレイラ、そしてこっちのメイドがリーチェです。で、この猫がアルルと言います」

「にゃぁ」


 私の言葉にアルルが主張するように鳴いた。

 リーチェも私の後ろで軽く会釈をする。

 ダンダスさんはそんな二人よりも私の方に感心そうな視線を向けてきた。


「アンタ、メイドを連れているってことは貴族様だろ? やっぱり貴族様ってのは若くしてしっかりしてるんだな。その歳にしてはかなり大人びて見えるぜ」


 そう言ったダンダスさんにリーチェは、とんでもないと言いたげにブンブンと首を横に振って言った。


「いえ、これはレイラ様が特別なだけです! 他の貴族の子息たちはもうちょっと年相応ですね!」


 ちょ、よせやい。

 そんな褒められると照れるじゃないの。

 だがリーチェはその後、やれやれといった風にさらに言葉を続ける。


「レイラ様は常にぼぉっとしていますからねぇ。会話がワンテンポ遅れることで一見深く会話の内容を考えているように見えているのです。しかし! 実際は明後日の方向に思考が飛んでいるだけなので、この大人びた雰囲気は張りぼてなんですよ。初見では案外気づきにくいんですけどね」


 な、なんてことを言うんだ……!

 確かに思考が明後日の方向にいっていることも多々あるが、張りぼてって流石に酷くない!?

 私だって前世の十六年分もかさ増しされてるんだから、ちゃんと大人びてるって!


 しかしそう主張するとかえってダサく見えそうだったので諦めてムスッと黙り込むだけで済ませた。


「……すみません。ちょっと揶揄いすぎました。許してください」

「しょうがないなぁ。ちゃんと謝ったから許す!」


 そんなやり取りを端から聞いていたダンダスさんは一言。


「やっぱりレイラ様はその幼さにしてはかなり大人びてる方だと思うけどな」

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