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天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜  作者: 八風ゆず
第二章 第一次異世界大戦編
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第三十話 こちら双巨龍、鳳となりて竜を穿つ(前編)

※どうも、八風ゆずです。最近投稿出来なくてすいません。今年から受験生となるので、投稿頻度は少なくなるかと思います。ですが諦めませんので、待っててください!!お願いします。それと、前話の続きからは脱線して元の世界になるのですが、まぁ色々と意味はあるので、ミスとかそういうのではないです!これからも本作をよろしくお願いします!※





華やかな祭りを行っていた転移者一行と月灯の来賓者達。

その反面、大国連合に動きがあった。


深夜の大国連合首都ヴァグールスタードの中央に位置する王宮。

その内部に設立されている軍最高司令部の作戦部にて、新型軍艦の運用が計画されていた。


ドラゴノイド級一番艦竜母「ドラゴノイド」


手懐け(テイム)した(ドラゴン)を海上で運用する母艦であり、ドラゴンに搭乗した乗組員はドラゴン特有の火炎吐息(ブレス)や、装着した銃、又は爆弾を抱えさせ敵軍艦に痛手を負わせるという、つまり戦艦などの大口径砲を備えた艦が来るまでの援護を行う艦として設計運用が計画されていたが、一人、その運用方法に物申した者がいた。


今、作戦部にて注目を浴びている「ロイ・アクレブン」その人である。



「で、その作戦というのはどのような物なのかねロイ君」


参謀が言う。


「私は、砲撃戦闘だけでなく今後の戦闘に関してはドラゴンによる飛行攻撃も重要視するようになると考えます。まずその利点から話していきますと、ドラゴンの飛行攻撃は、母艦からの遠距離攻撃、つまり大口径の砲弾が届かない場所からでの攻撃が可能で、ドラゴンを迎撃する小銃などは装備(アーマー)を装着することにより、問題を解消できます。最も、12センチ以上の口径を持つ砲などで撃たれればさすがのドラゴンでも致命傷を負いますが、今のところ自国でしか開発していないので、問題ないかと。次に欠点ですが、幾度に何度も出撃可能ではなく、ドラゴンの餌やコンディション、それと天候により精度は偏ります。それに、搭乗員の疲労なども影響してくるというのが欠点です」


航空機に関しても、燃料や機体の整備がなければ動かないし発動機がトラブルを起こす可能性もある。

天候に関しても同じだ。



「今回、私が考案した「咆哮作戦」。この作戦では「攻撃」はニの手です。まず最初に、敵軍の精神を煽るため大編隊を組み接近します。もしそれでも進撃してくるようであれば、攻撃する。私たちはあくまでも鹵獲を目的としているのですからね」


「だがしかし、天候に左右されるというのはいささか気になるものですなぁ」


作戦参謀の一人が言った。


「砲撃に関しても、雨天候なら波も高まり精度が低くなるのはご存じでしょう。同じことと考えていただければ……」


「ふむ……そうか、分かった。一応この作戦を上層部に通してみることにしよう」



上層部を通して、この作戦「咆哮作戦」の許可が下りたが、上層部はあまりこの作戦に期待はしていなかった。


竜を扱うには高度な技術を要する。

それを戦闘に用いろうとしているのだ。

だが、この作戦を漂流者に用いる前に、一度自称独立国へこの作戦を実行した。


なんとその効果は絶大だった!


咆哮作戦の勢いは増し、軍事本部内で騒がれ始めた。


そして今日、太陽暦異世界時間5月8日、輸送船に変装した遠征型偵察艇が月灯沖にて航行する「超大型輸送船」と思われる艦艇を2隻発見した。甲板は長く広く平べったく、甲板上構造物はない。緑色の特殊迷彩が施された実に巨大な艦だ。


どちらとも竜母「ドラゴノイド」に似ていると言われれば似ているが、大きさはドラゴノイドは負けているし、1段しか甲板はない。

そもそも敵が竜を手懐けている確証もない。

つまり、超大型な輸送船だ。


竜母ドラゴノイド自体の形としては空母赤城の2段式甲板時代を思い浮かべさせる艦影だ。

そこから見ると艦中央部はふっくりと太ってきる。その広く大きな艦内には、合計74体のドラゴンが収納されている。


正規空母と同等の数収納されているのだ。


敵は大型輸送船一隻に駆逐艦4隻ときた!

こんなチャンスは他にない!と判断した軍令部はドラゴノイドと二番艦「ドラグーン」、多数の駆逐艦に緊急出航させたのだった。





──信濃艦内──


一機の紫電の機体を一生懸命に拭いている青年が居た。

そこにふと、声が轟く。


「おい!柳沢、そこで何をしている!」


柳沢と呼ばれた男はビクッ!っと体を跳ねらせる。


「ひ、飛行隊長!すいませ……っておい。矢木、また貴様か」


矢木と呼ばれた、飛行隊長の声真似をしていた男はニコッ!っと笑う。


この柳沢と矢木は、兵学校からの大親友である。

配属される部隊も同じで、血肉分けたる仲ではないが、何故か気が合ってしまう。


「お前のそういうところ、いい加減うんざりしてきた」


「まぁそう言うなって、ほら、換えの雑巾と水筒」


「おう」


柳沢は雑巾と水筒を手に取る。

水筒の蓋をあけ、ぐびっと一気飲みする。


「ぷはぁ!いやしかし、転移先に水源があってよかったよなー」


「まったくだ。おかげさまで、上官だけじゃなくて俺達にもまんべんなく配給されるようになったからな」


「風呂も週に3、4回は入れるし」


「そうだな。にしても、この前の祭り楽しかったなぁ」


「だよな?あんな美味いもん初めて食った!イカ焼き……だっけか、酒がすすむわすすむわ、おっそろし〜」


二人は「ははははは!」っと笑い合った。


「あ、そういや、月灯からの貿易物資ってどこにしまってるんだ?」


「そっか、お前は陸上運用係か。あっちの密閉式格納庫にしまってる。あの白い袋だ」


柳沢が指さした方向には少し大きな白い塊があった。


「よく入ったな」


矢木は呟いた。

航空機に合わせてアレだけの物資を入れられたなと思ったからだ。


「いや、少し艦攻と彩雲の数は減らしてあるらしい」


「まぁそりゃそうか」


その時、警報音とともにエレベーターが下がってきた。


「おい矢木、柳沢!はやく甲板にあがって発艦準備しとけ!」


飛行隊長陽斗が言った。


「ど、どうしたんすか!?」


矢木が叫ぶ。


「敵だ。しかも「神」相手だそうだぞ?」


陽斗は半ば笑いながらそういった。


「神?」

柳沢がすっとんきょな声で言った。


「あぁ、龍だと」


「龍神殺しですか?罰当たりますよ」

矢木が飛行帽をかぶりながら言う。


「いや、敵と言っても威嚇で追っ払うだけだ。ほら、さっさと階段登っていけ。飛行機を上に送るのに邪魔だ」


「「ハッ!」」


二人がバシッ!っと敬礼した。

そうして二人は階段を駆けていった。



甲板上では多くの紫電の発動機が回っており、羽虫のような音を立てていた。


「なんだ?大鳳からも発艦すんのか。時代遅れの零戦だと少し心細いぜ」


柳沢が呟く。


「そう言うな。噂じゃウチの飛行隊長は大鳳の飛行隊長に負けたそうだぞ?」


「嘘だろ!?あの飛行隊長が?」


「しかも相手は女らしい」


「ほぉー……飛行隊長でも一目惚れってすんだなぁ」


「バカ。違うだろ流石に」


そんな会話をしていると、拡声器から「直チニ戦闘機搭乗員ハ発艦セヨ」っと繰り返される。


矢木機と柳沢機が一番、二番に発艦した。

甲板から脚が離れた瞬間ズンッっと一瞬機体が沈むが、すぐに高度を取る。


指定された南東の方向に向かう。

総勢戦闘機は何機か分からないが、かなりの数だ。

窓越しからはプロペラが風を切る爆音が聞こえる。


集り合った薄い雲を抜けた先には……。

無数の青い物体がいた。


「うぉ!マジで龍か……しかもこんな数」


矢木は独り言を漏らした。


そこにはおとぎ話でしか聞いたことがない「龍」の姿があった。

しかもその龍は「人間」によって操られているようにも見える。


「龍神を無理やり操るか、罰当たりになるぞ」


そう呟くと。


『矢木、こりゃすげぇ編隊だな!龍が飛行機みたいに陣形組んでるぜ!?』


無線機から声が響いた。

柳沢の声だ。

しかも、柳沢機は矢木機の真隣と言ってもいいほど近くに、それはもう近くに居た。


「あぁ、だが、俺達は追っ払うだけだ。今回は戦闘じゃない」


『追っ払うつっても威嚇射撃だろ?面白くねぇ仕事だな』


「そう言うな。さっさと終わらせて、酒でも飲もうぜ?」


『そうだな』


二人は小さく笑い合う。

何気ない会話だ。




───その時。



『我が編隊真上空、太陽の方向!敵機襲来!!!!』




全機に伝わるように設定された無線機から、そう聞こえた時には……。



隣に、あれだけ近くに居た柳沢の機体は、そこには無かった。

いやそうじゃない。



矢木は見た。



真っ赤な龍が、鱶が呑気に泳いでいる獲物を喰らうが如く、自分たちより高い高度から急降下し、柳沢の機体を喰ったのだ。



「………………は?」



矢木は思考が停止した。

世界が遅く感じられた。

ゆっくりとプロペラの動きが分かる。

バラバラになった柳沢の機体の残骸が空中に残る。


…………は?

柳沢?は?え?

いや、嘘だろ?幻覚だ。夢だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ!


さっきまで、帰ったら酒を飲もうと話していた。

ほんの数秒前だ。

あり得ない。

こんな……こんな……。


矢木に悲しみと怒りが押し寄せてくる。

ふと目線を龍の方向に向けると、時の流れは元通りになった。

上空からは赤い龍に続き青い龍が降下してくるのが目に映る。

奴らは太陽を隠れ蓑に奇襲攻撃を仕掛けてきたのだ。


他の戦闘機達は回避行動を取る。

だが、矢木の機体は全く動かない。

真っ直ぐ、直線に飛んでいる。


だが、不運か幸運か、龍は矢木に振らなかった。



「テメェら……」


矢木は操縦桿をギュッと握りしめる。

無線機から何か聞こえるが、矢木には聞こえていない。


「絶対にブチ殺す!」


涙に濡れ、怒りで赤くなったまさにその鬼の顔は、龍を睨みつけた。


回避行動をとっている他の機体とは異なり、矢木機は馬が暴れるような動作で直上態勢に移行し、降り注ぐ龍に背くように天へ飛ぶ。


この瞬間、彼一人が初めて、龍に立ち向かった。

目の前に青い龍がものすごい勢いで飛んでくる。


柳沢を喰らった時のように、龍は口を開く。


「殺す……殺す……殺す!」


矢木は大声で叫んだ後、機銃の発射装置を力強く押した。


ダダダダダダダダダダダッ!!!!


無限に続くと思われるほどの連射。

その弾は、青い龍に何発も、何十発もあたり、血を吹き、力尽いたように空中でよろめきながら「降下」ではなく「落下」していった。


この時、この瞬間。


矢木が行った行動で、初めて異世界人が成したことがあった。


それは……。



ドラゴン討伐ならぬ。





「神殺し」である。

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