第二十九話 陸の覇者(2)
陸用五◯番爆弾を1発抱えた九七式艦攻が34機、二五番を抱えた九七式艦攻が40機、二五番を抱えた九九式艦爆が36機、零戦40機。
総勢150機の大編隊がミッドウェイ島を襲った。
急降下爆撃、水平爆撃、機銃掃射による猛攻は、米軍の飛行場を使用不可まで追い詰めた。
海神艦隊がハワイ諸島へ進出している間、陸軍上陸部隊はミッドウェイ島上陸に成功した。
あいにく空母防衛の為戦艦による艦砲射撃などの援護はなかった。更に、米軍側は、真珠湾攻撃から教訓を経て、日本軍上陸の危険性を見据え戦車や歩兵の人員など、ミッドウェイに輸送していた。
戦車歩兵部隊合わせて中隊は2個、小隊は5個の戦力がミッドウェイに集結していた。
しかし、日本軍の輸送部隊も第一波、第二波を合計すると大して変わらない戦力差なのである。
ミッドウェイ島は、北太平洋の中で端の方だ。
ハワイからは近いだろうが、戦力を運搬するのには効率が悪い。
だが監視拠点としてはとても有効だ。
ここを奪われてしまえば、ハワイへの侵攻が一層早まり、豪州との連絡を絶たれるため、片言隻句だがこの戦力で保ってもらうしかない。
陸上では激しい攻防戦が行われていた。
小規模のものでも、その戦は分かれていた。
戦車による砲撃戦。
歩兵による白兵戦。
銃撃戦。
攻防戦。
突破戦。
始めは、日本軍の方が進撃を進めていたが、突如黄色の熱光の物体が振り始めた。
米海軍の巡洋艦や駆逐艦からの艦砲射撃だった。
鉄の暴雨の如き高速かつ連続の砲弾の雨に、日本軍の進撃は止まった。
何故だろうか、米軍はそう思った。
米軍は、「ヤマトダマシイ」と呼ぶサムライのソウルを心得とする日本人にとって、ここは無謀にも突撃してくる……と、覚悟した自分が馬鹿に思えた。
しかしその答えは思いのほかすぐ現れた。
米軍の防衛部隊が急いで沿岸部に行く。
優勢と劣勢が目まぐるしく変わるこの戦場下で、一際巨大な輸送船が居た。
「ナガトタイプ」の艦艇と引けを取らない輸送船だ。
なんだあの船は……っと、米軍は目を丸くしていた。
その輸送船は、ゆっくりと、重々しく手前に蓋を開けた。
中から見えたのは、細長く黒い巨大な何か。
そして、装甲車六両だった。
装甲車が全両走り始めたかと思ったら、ワイヤーが繋がれており、ワイヤーが張ると一瞬装甲車の動きが止まる。
しかし、その巨大な細長い何かは、ゆっくりと前に倒れだした。
それは…………その細長い巨大の物体の正体は……。
ぐるぐると巻かれ、高くそびえ立っていた線路だった。
米軍は驚愕した。
何故線路などがあるのか、何故それをここに配置しなければならないのか分からないからだ。
しかし一つ分かった事があった。
日本軍が無謀な突撃をしてこなかったのは、この線路を配置するためだったのだと思った。
……いや、分かったのは一つだけではなかった。
何か、もっと巨大な何かが現れた。
そう。
日本軍の実際に計画され製造されたアノ兵器。
満洲の防衛線や満ソ国境に用いられる予定だった兵器。
九◯式二十四センチ列車加農
アジア大陸北部で運用される物だった兵器を、それを今、南太平洋にて運用されているのだ。
米軍は驚いた。
列車砲、列車砲だ。
なぜこんな所に列車砲があるのか理解不明だった。
前方の装甲列車が走り出し、列車砲が動き出す。
そして………。
輸送船から出た瞬間、仰角を一気に上げ、爆風と爆音と共に、砲弾が飛んだ。
なぜ、列車砲を用いたのか。
この世界線の日本軍の精密なる計算、貴方は予想できただろうか。
日本軍はハナから戦艦を空母の護衛に付けさせて置くつもりだった。
艦砲射撃が出来ないことは最初から分かっていた。
しかし、巨大な砲弾による砲撃が最も有効だ。
そこで、弾数に限りはあるが未だに使っておらず温存されている列車砲を引っ張り出し、ミッドウェイに使うと陸海軍は共同し決めたのだ。
あともう2隻、列車砲を乗せた輸送船が第二波輸送船団と共にやってくる。第二波が到着すれば、日本軍の総勢力は現在の米軍戦力を上回る。
だが、列車砲以外に日本軍はもう一つ切り札を残していた……。
超重戦車 「オイ」
1944年に1両だけ試作で製造、その1週間後に解体された幻の戦車。
この世界線は1942年に作り上げ、既に製造が開始されている。
合計3問の砲を備えた巨大戦車。
それに日本軍の強力な、精神による精密射撃。
米歩兵軍はほぼ壊滅状態だった。
米軍側の戦車は慌てて応戦するが、3問一斉射により最後の米軍戦車は一瞬にして葬られた。
第二波が到着し、ミッドウェイ島は日本軍の手中に堕ちた。
次は海軍の番。
狙うはハワイ諸島、軍港の機能停止。
そして………。
敵機動部隊の殲滅である。




