表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜  作者: 八風ゆず
第一章 艦隊結成編
27/34

第二十五話 天日ノ艦隊

独裁国家ヴァグルドフ王国 首都「ヴァグールスタード」


ロシアの首都モスクワの大聖堂を放浪とさせる赤と緑、黄色などで独特な塗装をされた城。

白と黄金で綺麗に装飾された、一人では贅沢すぎる巨大な食堂。

周りには召使いが並んでおり、部屋の中心には長く大きな机が置かれている。

その机の上には、沢山の高級食材が並んでいる。

それを作法よく食べるのは、ヴァグルドフ王国の王「エメラル・ギ・ヴァーナ・ヴァグルドフ」、他国の首相からの呼び名は「エメラル・ヴァグルドフ」だ。

気持ちよくいつもどうり昼食をとっていた時のことだ。

一人の近衛兵が執事長に耳打ちをする。


「国王陛下。野蛮な蛮族が話を聞いてほしいと仰っているのですが、どういたしましょうか」


近衛兵から聞いたことを執事長は報告する。


「フン……。国民の方から私に話しかけてくるとは珍しい。案内しろ」


白い布で口を拭きながら言う。 


「承りました」


しばらくして、小汚い一人の海賊が近衛兵に囲まれながら歩いてくる。

その海賊は、国王の存在に気づいた途端、ひざまずく。


「こ、国王陛下!この度はこんなはしたない格好で面会をお許しいただき、感謝します!こ、この度話したいことは、にわかには信じられないかもしれませんが、どうか……お聞きください」


彼はエンバリー海賊団の生き残りであり、祖国であるヴァグルドフ王国に、貿易船などを渡り歩きやっとの思いで帰ってきた。

そして、エンバリー海賊団が壊滅したことを、その理由を、あの恐ろしい存在の話を国王に話した。


「ほう……?たった一隻で?漂流物か……クックックッ、実に欲しいなぁ」


「わ、私の話したかったことは以上です」


「あぁ、ありがとう。君のおかげでいい情報を手に入れたよ」


「あ、ありがたき御言葉!」


「だが、その存在を知っていいのは、お前みたいな小汚い蛮族にはもったいない」


「ぇ……」


「連れて行け。今夜の暖の燃料にでもしておけばよい」


「「「ハッ」」」


近衛兵3人が男を掴み連れて行く。


「こ、国王陛下!どうか、どうか御慈悲を……!!御慈悲を!!やだ!!死にたくない!やだぁ!せっかく生き残ったのにぃ!!!だ、誰かぁ!助けてくれぇーーーー!!!」


泣きながら必死に抵抗する男の姿と、懇願する声が遠のいていく。


「クックックッ……おい執事長、今すぐボングレイガーとイヴァーの首相を呼べ」


「かしこまりました」


「異世界の戦艦、実にほしいなぁ……クックックッ」




「こっち頼む!」


「誰か手を貸してくれー!」


あの談話から早3週間。

異世界の大日本帝國は急激に成長することとなった。

未だに大体の建築物は未完成ではあるが、獣人の体力、力は人を超えている。

獣人一人で常人四人半分程度の価値がある。

この調子だと、あと2ヶ月半程度で、海軍工廠、ドッグ、港の整備、泊地場の整備など全ての工事が終了するだろう。


月灯の協力は全面的に極めて友好だった。

恐らく、俺がいるからだろう。


しかし、毎週1回2人きりで出かけるのは少し疲れる。


コユキは、恋人の頼みがあれば直ぐ様対応してくれる。

言い方は悪いが、このことに至ってはコユキが俺を愛してくれていたおかげだな。

しかし条約発表時の月灯の国内情勢は危険だった。

正直、そりゃそうだろう……っという感じだった。


友人や家族の命を奪った相手なんて、信用できるわけがない。

だが、それが戦争だ。


俺が見た正規世界線だと、アメリカに負けた日本は、アメリカに対して批判などをする以前に媚を売っている。

どれだけ相手が大切な人を奪ったとしても、強いものには逆らえない「絶対」がある。


けれど、かろうじて現在は月灯の国内情勢は安定しつつある。

失ったものはもう帰らない……っと、気持ちを切り替えたものもいれば、俺達を恐れて反発行動をやめたものも居る。

でも半端な気持ちのままだ。

でもそれは仕方ない事、俺はそう思うようにした。


「藤野艦長!山本長官がお呼びです」


一人の海兵が海を眺めている俺に呼びかけた。


「あぁ、今行く」


そう言い、俺は本土「三日月島」の東側から、入り江内に向かう。 


入り江がとても巨大で、上空から見ると三日月に見えることからそう名付けられた。

入り江内には空母や特務艦、輸送船で埋め尽くされていて、数隻駆逐艦や巡洋艦が居るくらいだ。


現在大日本帝國が占領している島は、本土三日月島を含め7つだ。


本土三日月島には、軍事司令部、海軍工廠を設置している。

そして三日月島から上、北側にあるのが「鋼山島」だ。

鋼山島にある黒い石の山には、まだ発掘作業には取り掛かっていないが探索の結果多くの鉄が発見された。


本土から南側にあるのが、縦に並ぶ「四島列島」だ。

四島列島は、飛鳥島、滝島、大山島、最南島で構成されていて、飛鳥島は豊でほぼ平地の島。

滝島はその名の通り滝が多くあり、水が豊富だ。

大山島もその名の通り、巨大な富士山ほどの山がある。

そのため滝島と同じく水が豊富なだけでなく、農作などにも長けている。


この三つの島は主に貿易用の港と、宿屋など市街地を置く場所として運用されてることとなっている。


そして最南島。

最南島は一番南にある小さな島で、おもに南方面の監視場として運用されることとなった泊地場所だ。


西側にあるのが天川島。

月の光に当たると、山から流れる水が反射し、天の川のように美しいことから名付けられた。


東側には花咲島。

その名の通り、花が豊な島だ。



花咲島、天川島、最南島は、これからの運用として泊地として指定されることとなった。

貿易港は、四島列島の三つ、飛鳥、大山、滝島に指定された。

軍港は三日月島と鋼山島に配置される。

因みに、三日月島の中心部、軍事司令部の区域には「天菊(てんぎく)」っと名付けなれることになった。


そして、記念すべき初の建築物が……。



「おお!素晴らしいな……」

俺は思わず言葉をこぼした。


「だろう。外見だけでなく、内装まで立派だぞ」

山本長官が俺の言葉を肯定した。


そう、記念すべき建物、それは……「軍事最高司令部『大本営』」と、大本営に埋めこれているように作られた、大本営から右に「海軍省」、左に「陸軍省」だ。

形やら内装などは、中を見たことある者たちで思い出しながら設計した。


「いやぁ惚れ惚れしますね」


「あぁ。祖国を思い出す」


「そうねですね……あ、そういえば、転移してきた飛行基地の探索結果ですが、全機日本の海軍機、陸軍機で間違いないとのことです。設計図が司令部に置いてありまして、あの巨大な爆撃機は「富嶽」というようです」


「富嶽……日本の富士山の名か」


「はい。航続距離は二万キロに及ぶそうです。どうぞ」


俺は富嶽の設計図の複製を渡す。

山本長官はそれを黙って見てていた。

その時。


「あ・な・た・さ・ま〜〜〜〜!!」


後ろから大声が聞こえてくる。

うぐ……。

俺は少しうざったるい感覚を覚える。


「お弁当作りましたの〜!一緒にどうです〜?」


走りながら此方に向かってくるコユキ。

その後ろには召使いの「ヨゾラ ハナユキ」が残りの弁当を持って後ろをついてくる。

高々と重ねられている弁当。


「そんなに食えねぇよ!す、すいません長官……」


「いや、君は行ってきていい。私はしばらくコレを見ておくよ」


「す、すいません……」


俺はお辞儀をしてコユキの方に向かった。


「これは……」


山本五十六は、富嶽の設計図をじっくりと見ていた。





風に揺られる木の葉。

日が木を照らす。

その元で、俺は……。


「貴方様、はい「あーん」」


コユキに「あーん」を責められていた。


「いや……遠慮しとく」


「なんでですか!?」


「いや普通に恥ずかしいというかなんというか……」


「なんでですの!?ムッ……ハナユキ、翔様を拘束しなさい」


「了解しました」


ハナユキは、冷静沈着、白髮に狼耳だ。

そして、何より戦闘能力に長けている。

獣人族自体結構な戦闘能力を持ち合わせているのだが、ハナユキはズバ抜けている。

もちろん女帝であるコユキのほうが戦闘能力は一番高いのだが、その次に並ぶほど凄い戦闘能力の高さだ。


なので、俺が逃げ藻掻く隙もなく、俺を後ろから拘束する。


「は、HA・NA・SE!」


ハナユキが俺の顎を掴む。


「あが!」


「はい、「あーん」」


「あぁ……あぁ……ああああああ!……あむ」


コユキの「あーん」が終わり、俺はひたすらに水を呑んでいた。


「ぷはぁ……はぁ、はぁ、おい!他にもやり方あったろ!美味かったけど」


「だって、貴方様が抵抗するから〜」

「するから〜」


ハナユキがコユキのマネをする。


「クッソが……」


その煽りに俺はひたすらぶん殴りたい感情に支配された。

いつかぶん殴ってやる……。


「あ、そうそう。貴方様、これからどうするのですか?」


「ん?どうするってなにがだ」


「この先の話です。この国は自然資源や食料の自国栽培が厳しい。なので我が国と貿易しているのですが……もし、他国に月灯と漂流者の国が貿易していることが気づかれると、厄介なことになります。特に、あの三カ国は同盟を結んでいます。少しでも目立った行動をすると気づかれる可能性は大いにあります」


「厄介なこと……?」


「はい。実のところ、月灯はそうでもないのですが、漂流者というのはヴァグルドフ王国やイヴァー連邦などの国々でひどく差別されているのです。もし他国がこの国の存在に気づいた場合、月灯側も貿易の継続が危うくなるかもしれません。条約に反してしまうとなると、此方も困ってしまいます。なので、これからどうするかお聞きしたいのです」


「どうするか……か。まだ分からないな。決めるのは俺じゃないし……」


「そこに関してはしっかりと私達もお話に関与させていただきたいかと。それに、月灯は元々武力で成り上がった独立国なんです。なので他国からは差別的な扱いを受けています。例をいえば獣人を奴隷として売ったり使ったり……なので貿易もほとんど他国と行いません。我々が独立できたのは、あまりの生命力、あまりの戦闘能力、あまりの知性です。獣人は「神の最高傑作」なんて言われたりもしました」


なるほど、だから王位継承が一番強い獣人の家柄なのか。


「これ以上他国から軽蔑されるのは我々は避けたいのです。なので、国の外には我々が協力していることは内密にしておいてほしいです」


「それを俺に言われてもな。まぁでも、そろそろ大本営で第一回帝國議会が行われる予定だから、月灯の方々にも参加してもらうよう頼んでおく。まぁ、最終的にこの話コユキにいくから、その時はよろしくな」


「当たり前です!貴方様が望むなら、どんな願いでも……たとえ火の中水の中でも、この体をささげますわ!ねぇ貴方様、どうです?今ここで……♡」


コユキが服をいやらしく脱ぎだす。


「いやいやいや!やめろ!また誤解されるだろ!!」


「フフフ、貴方様のそう言う所、可愛くて大好きですよ」


「…………」


俺は……少し照れてるみたいだ。

案外、コユキって可愛いというかなんというか、普通に好意を持ってる……かもしれんな、俺は。


「コユキ様、お時間です。お姉様との会談が待っています」


「そうね。それでは貴方様〜、寂しくなりますが、またお会いしましょう。これにて失礼します」


「あぁ」


こうして、コユキは去っていった。

俺は、入り江前に停泊する大和と、そのよこの武蔵を眺める。

空は暁色に変わっていく。

零戦が2機空を舞う。

黄金の空。


風が優しく吹く。


「綺麗な空だな。まるで俺達を歓迎してるみたいだ」


俺はその光景を、じっと見ていた。



コンコンコンっと、3回ノックがなる。

「入ってよいぞ」っと、大人びたお姉さん声が響く。

コユキが中に入る。


「お姉様、お呼びでしょうか」


「うむ。かの漂流者達のことについてじゃが……私が前に出るほどでもないようじゃな」


「しかしお姉様、今度議会が漂流者達の国にて開かれるとのことです。変装してでも出ていただきたいのですが……」


「それは何故じゃ?お主はこの国の女帝には変わりないではないか。私は只の国の「神体」じゃ。お主と同じ権限など持っていても、私は行使することはないからの。この「龍室(りゅうしつ)」に引きこもりっぱなしじゃし」


「けれども、私は「高位帝王」の名誉がありますが、お姉様は「最高位帝王」の名誉があります。決して表には出てはいけない「神秘」の持ち主なのは分かっていますが、今回は別です。この一件で、世界は大きく動く。行くところまで行った場合……「世界大戦」になりかねません」


「ふむ。そうか……それでは、もうこんなことはやめるとするかの。変装せずとも、な」


「ッ……!?も、もしかして……」


「うむ。私は国民の前に、世界の前に現れようぞ」


「ほ、本当によろしいのですか!?外にでろと言ったのは私ですが、変装なしだと、その力、その命が狙われかねません」


「もういいじゃろ。我々の先祖は約20万年もの間、月灯の裏の支配者として君臨していた「龍人族」。もういい加減世に出るべきじゃ」


「で、でもお姉様……もし世にでれば、絶対に調べる者たちが現れます!その調査の結果、もしかすると辿り着くかもしれません!!龍人族というのは、血が途絶えた筈の空狐家当主である……なんて事を知られてしまっては、国民が混乱してしまいます!せめて変装だけでも……」


「国民が混乱するのはアレじゃが、妾は別に、命が狙われようが良いぞ。この姿も所詮「狐之変化」で誤魔化しているだけなのじゃからな」


布の向こうから現れたのは、「クウコ キョクヤ」だ。

コユキに似てる綺麗な顔。

美しい体の曲線。

龍のような尻尾に角。

そしてコユキより少し大きい女性のたわわ。


「……死んではなりません!!絶対に……!もし、人前に出るというのなら、変化のこと、空狐家当主のことは一切口にしてはなりません。わかりましたか?」


「うむ。分かった。なのでそんなに怒るでない。あ!それとコユキ、そなたが惚れたという男を水晶から見てみたのだが、なんというか……かっこかわいい顔をしているのぉ〜!性格も妾好みじゃ!どうじゃ?妾にも半分、いや全部分けてくれぬかの!」


さっきまで心配やキョクヤの発言に怒っていたコユキだが、別の怒りが押し寄せていた。


「お姉様?それは禁忌ですわよ?いくらお姉様といえど、容赦はしませんわ!」


「ちょ、ちょっとコユキ!?わ、妾最近運動不足なのじゃ!どうか勘弁しておくれぇーー!いやぁ〜ん♡」






偵察機の零戦が2機、黄金に光る太陽に向かって進む。

巨大な艦隊は、金色(こんじき)色の空に照らされながら、海風に当たる。





大和の旭日旗が黄金の太陽と重なった。





「使命」だったのか。


「宿命」だったのか。


それは誰も知り得ない。


天が導く、旭日が黄金に輝く時。


それは天日(てんじつ)となりて世界の運命さえもかえよう……。


そう。


天日から導かれる者達は、これから先も現れる。


それもまた「運命」である。


陸、海、空。

天日に導かれる人々の名は……。








          天日ノ艦隊           




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ