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天月心理の異世界旅行4

 アリエステルお嬢様に連れられて着いた建物は、

 2階建ての木造建築で入口付近の上の誰もが、目につくところに冒険者ギルドと掲げられた看板と紋章が刻まれていた。

 回りの建物と比べると大きく、そして結構な人が出たり入ったりしていた。

 ちょっといかつい人が多く見受けられるので、小心者の僕様としてはとてもじゃないけども足が進まないのだった。

 しかし、アリエステルお嬢様が、意気揚々と冒険者ギルドに踏み込んで行く。

 いかつい男の人と一瞬目が合った僕様は、なんとしてでも置いて行かれないように付いていった。


「ここが、冒険者ギルドよ」


 冒険者ギルドの中に入ってアリエステルお嬢様が振り返り自慢げに言う。


「へえ」

「反応が薄いわね」

「いや、思ったよりも荒事を主軸に活動している組織とは思えない見た目だからね」

「そうかしら?」


 そう、ギルド内は整っていて人がいる割には静かだ。

 そして、受付の前に冒険者が並んでいる、ということはなかった。

 なので入口からも受付の人が見える。

 何で並んでないかと思っていたら女性の人が声をかけてきた。


「今日はどういったご用件でしょうか?」

「身元引受制度をお願いしに来たわ」

「それでしたらこちらの整理札を持ってあちらの受付へどうぞ」

「ありがとう、行くわよ」

「うん」


 どうやら順番待ちも番号で割り振られているようだ。

 受付までの間は、冒険者たちは、自分の商売道具の手入れをしたり休憩したりと思い思いの行動をとっている。

 非常に効率のいい冒険者ギルドは、何にしろ洗礼されすぎている印象を受けた。


「それじゃあ、早速行きましょうか」


 アリエステルお嬢様に付いて一つの受付に行く。

 他の受付と違い常に空いている受付に着いた。


「ようこそ冒険者ギルドへ」


 受付の女性がこちらに気が付いたと同時に流麗な挨拶をする。


「この方の冒険者ギルド身元引き受けをお願いしに来ました」

「かしこまりました。

 番号札をお預かりいたします。

 書類を用意いたしますので少々お待ちください」


 そう言って受付のお姉さんは、受付の横に備えられているキャビネットから書類を取り出した。


「それでは、こちらにご記入をお願いします」


 そういって渡された紙は、羊皮紙ではなくごく普通のA4サイズの紙だった。

 え?

 なんで?


「どうしたの?

 あ、文字が読めないのかしら?」

「いや、読めるよ」

「じゃあ、書けないとか?」

「大丈夫、問題ない」

「じゃあ、どうしたのよ?」


 読めることもそうだけど、A4サイズとほぼ同じ大きさの紙が出てきたんだ驚くのは仕方がないと思うんだよね。

 しかも、ちゃんとした紙だった。

 日本で普及してるようなやつ。

 でもまあ、取りあえず誤魔化しておく。

 また、どんだけ辺境からうんぬんと言われるのも嫌だしね。


「ほら、このクラスっていう欄に何を書けばいいか分からなくて」

「自分のクラスよ。

 冒険者ギルドに登録するときに自分が得意とするパーティへの貢献方法を職業クラスで表現するの。

 あなたは直接の戦闘は無理だから戦士はではないし、何か得意なことってあるかしら?」

「得意なこと」


 冒険者ギルドって言うぐらいだし当然冒険をするんだろう。

 僕様の記憶を利用すると多少のサバイバル術は出て来るけど、果たしてまともに使えるかどうか。

 他には、


「そうだね。

 気を引くこととか意識を誘導するのは得意だと思うよ」

「それは前衛、つまり戦士の仕事よ。

 そもそもあなたに気を向かせても戦うことできないでしょ?」

「いや、気を引くのは僕の方にだけじゃなくて他の人に向けさせることができるよ」

「そんなことって」

「ほら」


 僕様は、ポケットから銅貨を二枚取り出す。

 路地裏で貰ったやつだ。

 ……これの為に酷い目に遭ったもんだなぁ。

 僕様は銅貨の一枚をポーンと受付のお姉さんに飛ばす。

 アリエステルお嬢様は勿論のこと受付のお姉さんも銅貨に目が行く。

 僕様は、もう一つの手を空けてから上着を脱いだ。


「それが、どうしたって、きゃあ!」


 アリエステルお嬢様は、驚きの声を上げた。

 受付のお姉さんも驚いてる。

 僕様の上着は、アリエステルお嬢様の顔にかかっているため一瞬だけではあるが、アリエステルお嬢様は動けない。

 僕様はアリエステルお嬢様の後ろに回って背中に指をはわせた。


「うにゃぁあ!?」


 かわいい声を出すなぁ。

 僕の上着をどけたアリエステルお嬢様は、僕の方に振り替える。


「何するのよ!」

「上」


 僕が上を見ながら言うとアリエステルお嬢様は、上を見る。

 すると上から銅貨が降ってきてアリエステルお嬢様の額に当たる。


「これが僕様の特技の一つだよ」


 逆に言えばこれくらいしかできないんだけどね。

 受付のお姉さんは、興味深そうに僕様を見て分析する。


「完全なヘイトコントロールができてますね。

 これが戦闘で使えれば確かに有用ですが、活用できるとは断言できませんね」


 アリエステルお嬢様は、自分の顔に当たった銅貨を見つめて思案気に呟いく。


「そうね。

 ただ、これだとクラスを決められないわね」

「いいえ、一応対応するクラスはありますよ」

「え?」


 アリエステルお嬢様は、不思議そうに受付のお姉さんに振り向く。


「話術師と言われるクラスです。

 他にも踊り子と吟遊詩人がありますね」

「無能クラスって言われるクラスね」

「ええ、一部にはとても有能な人物もいますが、大抵の冒険者には無能と認識されていることは否定いたしません。

 ですが、クラスを決めない限りは依頼は受けれませんので」

「分かってますわ。

 わたくしが組みますし問題はないでしょう?」

「ええ、ほとんどのクエストの参加に支障はありません」

「で、どうする?

 どのクラスにする?」


 受付のお姉さんとの相談が済むと僕様の方へアリエステルお嬢様は、振り向いて尋ねてくる。


「うーん、踊り子はパスで話術師って言われるほど口もうまいわけじゃないから吟遊詩人で」

「歌はうまいの?」

「自信はないけど歌は歌えるよ」

「それは……、まあいいでしょう。

 クラスに吟遊詩人と書きましょうね」

「はい」


 言われた通り吟遊詩人と書いておく。

 あ、そう言えば松尾芭蕉って吟遊詩人って言えるかな?

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