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天月心理の異世界旅行3

 晩餐は、部屋のど真ん中にドデカいテーブルが置かれた部屋で行われた。

 勿論、ドデカいテーブルが置かれた部屋自体もかなり広く今部屋にいる人数を5倍にしても事足りる大きさだ。

 と言っても僕様を含めて五人しか居ないんだけどね。

 そもそも、この大きいテーブルがどうやってここに置かれたのか、そして、反対側に行くのに回り込むのかなどとどうでもいいことを考えていると隣からアリエステルお嬢様が話し掛けてきた。


「流石にテーブルマナーまで出来るとは思わないからここで教えるわね」

「そうね。

 私も手伝うわ。

 この家に住む以上は、覚えて貰わないといけないですし」


 左側からアリエステルお嬢様が話し掛けてきたかと思うと、右側からもお姉様が話し掛けてきた。

 どうやら美人二人に挟まれてテーブルマナーを教えて貰えるらしい。

 面倒くさい事この上ない。

 そんな僕様の考えなど知る由も無い上座に座る女性。

 歳は、四十代ぐらいの女性がノリノリの二人を注意する。


「フリージア、アリエステル其処までにしておきなさい。

 作法を教えるのは、執事の仕事ですわよ」

「「はい、お母様」」


 少し残念そうにしかし、お母様の言うことは絶対であるかのように二人は応えた。

 その二人の様子を見た後、お母様は後ろに控えている従者の一人に伝える。


「アルフレート」

「はい、奥様」

「その子に従者として基本的な事から教えてあげなさい」

「畏まりました」


 野郎から教えられるよりお嬢様に教えられた方が良いなと思いつつもしかし、言うわけにはいかないので取り敢えずテーブルの上に広げられたナイフとフォークとスプーンを見る。

 一つでいいじゃんと思いながらテーブルの上にあるナイフとフォークとスプーンの数を確認するとナイフとフォークがそれぞれ三つずつスプーンが一つあった。

 食器洗うの大変そうだな。


「それでは、わたくしアルフレートが、テーブルマナーについてお教え致します」

「よろしく」


 と、まあ、テーブルマナーの事について色々教えられたのだった。

 細けぇこたぁいいんだよ。

 ただ、僕様が知っているテーブルマナーとは違ったのだけはここに言っておく。

 執事のアルフレート君にテーブルマナーを教えられて、可愛いメイド達が食事を運んできて、食事の前のお祈りをお母様が始める。


「天におわします我らが神に、今日の糧を与え給う事を感謝致します。

 それでは、祈りを捧げましょう。

 ルーメン」

「「ルーメン」」

「ルーメン、いただきます」


 僕様が勝手に追加したお祈りに注目が集まる。

 アリエステルお嬢様が僕様に尋ねる。


「そのいただきますと言うのは何ですの?」

「僕様の故郷の食事前の祈りだよ」

「そうでしたか。

 随分短いですわね」

「そりゃそうだよ。

 感謝するもの全てを言っていたらいつまで経っても食事が取れないよ」


 僕様の答えに僕様以外の皆が瞠目する。

 お母様が、一息ついて口を開く。


「全てに感謝ですか。

 確かにこの食事は、使用人が作ったものですわね。

 その使用人にも感謝を?」

「勿論」

「それは必要かしら?

 彼には対価をしっかり払っていますわよ?」

「でも感謝されると嬉しいよね」

「……ええ、そうね」

「だからやるんだよ」

「そうね。

 それは、とてもいいことだわ。

 私も見習いましょう。

 いただきます」

「「いただきます」」


 なんか変な空気になったけど食事は恙無く終わった。

 テーブルマナーは、まあ、及第点だったようだ。

 この後、ご馳走様したときも注目されたよ。

 「何度感謝するの?」だってさ。



----------



「明日、私に付いてきて欲しいのですわ」


 食事の後、アリエステルお嬢様にそう頼まれた。

 僕様としては、断る道理はないし断る由縁もない。

 当然のごとく一も二もなく受け入れた。


「で、何処に行くの?」

「冒険者ギルドよ」


 その言葉を聞いて僕様のテンションが上がる。

 しかし、それを悟られるのも何だか恥ずかしいので、知らない振りをする。


「冒険者ギルド?」

「あら?

 ご存知ないですか?

 冒険者ギルドと言うのは、身元が無い人間の身元引き受けをしている所よ。

 変な人が多いですし、血の気が多い人も多いけど信頼出来る組織よ」


 身元引き受け組織と聞いて少しテンションが下がる。

 現実を突き付けられたような気分だ。

 勿論、表情には出さないけどね。


「何してる人達?」

「主に魔物退治よ。

 他にも護衛や探し物も請け負っているわね」

「何でも屋?」

「そう言われることもあるわ。

 でもそれは冒険者の前では口にしてはいけないわよ」

「禁句?」

「ええ、その通りよ

 彼等にもプライドがあるの。

 場合によってはギルドそのものを敵に回すことになるから不用意に口にしない事ね」


 生唾を飲み込む。

 何それおも……じゃなくて、それは気を付けないとね。


「他に禁句ってある?」

「そうね。

 根無し、烏、猟犬とかね。

 大体どういった事を言ってはいけないのか分かったかしら?」

大凡おおよそはね。

 出身、仕事内容の揶揄、あたりが気を付けた方がいいって事だね」

「その通りよ」

「分かった気を付けるよ」


 うずうずするけど働き先が無くなるのは避けたいからね。


「それで、何の話をしていたかしら?」

「冒険者ギルドに行くって話」

「そうそう、貴方が質問攻めしてくるから話がって、まあ、いいわ。

 それで、この後冒険者ギルドに行きます」

「そこで、僕様の身元引き受けを頼むの?」

「ええ、それと貴方の仕事を探すのよ」


 ……まあ、働かざる者食うべからずってことかな?


「さっきの説明だと荒事が多いみたいだけど」

「大丈夫よ」

「荒事は苦手なんだけど……」

「心配しないで行きましょう。

 何事もやってみるのが肝要よ」


 アリエステルお嬢様に言いくるめられて渋々冒険者ギルドに向かうこととなった。

 わくわく。

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