色つきの煉瓦
もらった薬は著効だった。足が治ったので、そろそろ西へ出発しようと思う。
※
街を出ようとすると、門のところで変わったものを見つけた。白色の煉瓦に交じって一つだけ茶色のものがある。手で触れてみると、微かに振動が伝わって来た。
間違いない。これは【色つきの煉瓦】だ。
(……少し構ってやるか)
色つきの煉瓦は無害な魍魎だ。悪戯好きではあるが、大きな悪さをすることはない。精々、外壁の色を一時的に変えてしまうことくらいで、それも滅多なことではしない。普段はこうして煉瓦に紛れ、自分と遊んでくれる通行人を待つ。
しばしの間、ぼくが表面を撫でていると、くすぐったそうに震えた。手を退けて見てみればいなくなっている。どこかへ移動したのだ。
だが、遠くまでは行っていないはずだ。ぼくは街中を歩き回ることにした。
※
それから二三日、ぼくは色つきの煉瓦と追いかけっこをした。満足してくれたようで、もうどこにも姿は見えない。
(いい加減にぼくも立とうかな)
ぼくが街を出ようとすると、門のところに茶色く伝言が書かれていることに気がついた。
『西は危険。向かうなら東へ』
触れてみると微かに動いている。どうやら、色つきの煉瓦のお返しらしい。
「ありがとう」
そう言いながらぼくが撫でようとすると、もういなくなっていた。
ぼくは進路を東へ変えた。
※
ふと、ぼくは色つきの煉瓦から教えてもらったことをほかの者にも伝えたほうがいいのではないかと思った。しかし、ぼくの言うことを信じてくれるだろうか?
(……いいことを思いついた)
こっそりとぼくは近くの壁に案内を書いた。
『この先、危険』
落書きと勘違いされないように上から秘蔵の聖水を振りかける。この聖水は地獄堂の主人からいただいたものだ。
これでいい。その手の者から見れば曰くつきとわかるはずだ。
(さて、行くか)
ぼくは足を別の場所へ向けた。冒険は、まだつづく。




