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袋小路

 街へ着いた。そろそろ路銀がほしい。冒険者の組合(ギルド)へ行こうと思う。





 掲示板を確認。ぼくは戦闘が得意ではないので、見るのはいつも収集系の依頼だ。


(……あった)


 いくつかの珍品については手持ちがある。運よく、要望に応えられそうだ。票を持って受付に行き、品と貨幣とを交換する。事務的な挨拶を交わしたら露店へ。街ごとの商品を見て回るのも、ぼくの楽しみの一つだ。





 店の前でぼくは立ち止まる。そこでは肉を焼いて売っていた。

「なんの肉ですか?」

「分厚い木だよ」

 ぼくが分厚い木を頭に思い浮かべながら「食べられたのか」と怪しんでいると、店主は笑いながら「下拵えが手間だがね」とつけ加えた。ほかの地で見ないのも無理はない。

「道理で」

 言われてみれば、この辺りには多くの分厚い木が生育しているように思う。この街では主要な食材の一つになっているのだろう。

 ぼくは感心しながら、ふと路地を見た。何かが動いた気がしたからだ。

 次の瞬間、路地は灰色の煉瓦で埋めつくされていた。


(しまった……)


 買い物を中断し、ぼくはその場から離れた。態度の急変に店主は訝しんでいたが、気にしてはいられない。そうしている間にも、周りにはどんどんと煉瓦が現れ、ついには閉じ込められてしまった。そんなぼくを通行人たちは不思議そうに見ている。【袋小路】は本人にしか見えないのだ。

 大人しく、この呪いをかけたものに従うしかない。一方通行の道をぼくは歩きはじめた。





 ほどなくして、ぼくは宴の場に出た。妖精や霊獣たちによる酒盛りだ。困惑したままのぼくに霊獣が座るように促す。

「なぜ、ぼくは呼ばれたのでしょう?」

「単なる余興だ……。それに来たのは貴様の意思だろう。我らは魔法を使えるものしか呼びはせん」

 合点がいった。一般的な魔法を使えるならば、十分に袋小路は抜けだせる。

「生憎と、使えるのは《乱れよ(パネクラ)》だけでして」

「ほう、悪いことをしたな。……帰るならば手を貸そう」

「折角ですので、このまま」

「ならば、土産を寄こせ」

 分厚い木を買っておくんだったと少し悔やんだ。

「では、小話をいくつか。皆さんも遠い人里のことまでは知らぬでしょうから」





 そうして酒宴に興じた。その場で飲んだ酒は絶品だった。舌が痺れ、摘みを取る手がやたらと進んだ。

 次第に、ぼくの瞼は落ちていった。





 起きると、ぼくはどこかの路地裏にいた。すぐに、見知った通りに出られた反面、いくらかの貨幣は知らぬ間になくなっていた。


(まあ、いいか)


 滅多に混ざれない酒盛りだ。それを考えれば安いもの。

 ぼくは足を別の場所へ向けた。冒険は、まだつづく。

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