袋小路
街へ着いた。そろそろ路銀がほしい。冒険者の組合へ行こうと思う。
※
掲示板を確認。ぼくは戦闘が得意ではないので、見るのはいつも収集系の依頼だ。
(……あった)
いくつかの珍品については手持ちがある。運よく、要望に応えられそうだ。票を持って受付に行き、品と貨幣とを交換する。事務的な挨拶を交わしたら露店へ。街ごとの商品を見て回るのも、ぼくの楽しみの一つだ。
※
店の前でぼくは立ち止まる。そこでは肉を焼いて売っていた。
「なんの肉ですか?」
「分厚い木だよ」
ぼくが分厚い木を頭に思い浮かべながら「食べられたのか」と怪しんでいると、店主は笑いながら「下拵えが手間だがね」とつけ加えた。ほかの地で見ないのも無理はない。
「道理で」
言われてみれば、この辺りには多くの分厚い木が生育しているように思う。この街では主要な食材の一つになっているのだろう。
ぼくは感心しながら、ふと路地を見た。何かが動いた気がしたからだ。
次の瞬間、路地は灰色の煉瓦で埋めつくされていた。
(しまった……)
買い物を中断し、ぼくはその場から離れた。態度の急変に店主は訝しんでいたが、気にしてはいられない。そうしている間にも、周りにはどんどんと煉瓦が現れ、ついには閉じ込められてしまった。そんなぼくを通行人たちは不思議そうに見ている。【袋小路】は本人にしか見えないのだ。
大人しく、この呪いをかけたものに従うしかない。一方通行の道をぼくは歩きはじめた。
※
ほどなくして、ぼくは宴の場に出た。妖精や霊獣たちによる酒盛りだ。困惑したままのぼくに霊獣が座るように促す。
「なぜ、ぼくは呼ばれたのでしょう?」
「単なる余興だ……。それに来たのは貴様の意思だろう。我らは魔法を使えるものしか呼びはせん」
合点がいった。一般的な魔法を使えるならば、十分に袋小路は抜けだせる。
「生憎と、使えるのは《乱れよ》だけでして」
「ほう、悪いことをしたな。……帰るならば手を貸そう」
「折角ですので、このまま」
「ならば、土産を寄こせ」
分厚い木を買っておくんだったと少し悔やんだ。
「では、小話をいくつか。皆さんも遠い人里のことまでは知らぬでしょうから」
※
そうして酒宴に興じた。その場で飲んだ酒は絶品だった。舌が痺れ、摘みを取る手がやたらと進んだ。
次第に、ぼくの瞼は落ちていった。
※
起きると、ぼくはどこかの路地裏にいた。すぐに、見知った通りに出られた反面、いくらかの貨幣は知らぬ間になくなっていた。
(まあ、いいか)
滅多に混ざれない酒盛りだ。それを考えれば安いもの。
ぼくは足を別の場所へ向けた。冒険は、まだつづく。




